表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
16/181

これから始まる同棲生活〜1

面会の翌日、理玖はこの10日お世話になった病衣から縁流が用意した服に着替えていた。



………そう、今日は退院の日である。



理玖の身体検査はあらかた終了して、戸籍関係の手続きやらなんやらも終わったところだ。普通なら月単位でかかるものだったが、そこは夜奈がゴリ押しでなんとかなった。



今の理玖の服装はTシャツにジーパンとラフな物。初めはスカートだったのだが、理玖が嫌がった為ジーパンとなった。



お世話になった人に挨拶を済ませ、出入り口に向かうとそこには理玖と同じ様な格好の愛莉珠が小さな黒い車の側で待っていた。




「やっほーリク!荷物は既に車に載せてあるからね。それじゃあ、レッツゴーッ!!」



「……ん、よろしく」




戦乙女(ヴァルキリー)達が住まうユグドラシルはかなり広い。直線距離で端から端まで車で半日ほどかかる程だ。



その為、基本ユグドラシル内での移動は車になる。




「お嬢は休み?」



「そうだよ。いくら超人といわれている戦乙女でも人間には変わりないからね。まぁ、僕らは基本的に訓練とかボイド討伐やメディア関係とかやってるから休みは不定期だけどね」



「そうなんだ」




緩やかなスピードでそんな他愛もない会話をしながら移動していく2人。そうしてマンションが立ち並ぶ住宅地へと着き、そのマンション群で一際目立つ高い高層マンションへと車は向かっていった。




「…………お嬢って金持ち?」



「特級になれば基本的にみんな金持ちさ。ただ、僕の場合あんまり使わないからね。だからこういったところで使わないと色々言われるんだよ。…………ただでさえ広い部屋に一人暮らしだったし」




そうして2人はマンションに入り、エレベーターで最上階まで上がっていき、突き当たりの扉へと向かって愛莉珠は鍵を開けた。




「それじゃあ、歓迎するよリク。今日からここが君の住む場所だ。もちろん僕もだ」



「わかった。………これからよろしくお嬢」



「よろしくリク」





***




新たな住まいに来たのならまずは案内からである。



〜リビング〜



「まずはリビングだよ。あ、荷物はそこら辺に置いといてね」



「広いな。…………まぁ、普通な感じだ」



「いや普通って……ソファと机とテレビがあるくらいだし……。というかリクの家はどうだったの?」



「畳四畳くらいでちゃぶ台1つ」



「それ狭すぎじゃ……あ、でも一人暮らしなら充分か」




〜キッチン〜




「一応最先端でガスとIH両方付きだよ。調理器具はそこの棚にあって食器類は向こうの棚」



「………キッチンにほとんど使われた痕跡がないんだけど?」



「だって僕料理できないもん。使うのはたまに来る友人くらいだし」



「今までどう言う食生活をしてきたんだよ………」



「基本的に本部の食堂で済ませて、他はコンビニ弁当。あ、そうだ。リク料理得意って言っていたよね?なら──」



「作るよ。こんな豪華なキッチン使わないなんて勿体無いし」



「おー!やった!」




〜浴室〜




「なんで無駄に広いんだ?」



「これは元からだよ。ほらこれ足伸ばしてゆったりできるから好きなんだよね。ただ問題点は掃除が面倒」



「だろうな」



「………ねぇ、リク」



「絶対一緒に入らないからな?何されるかわかったもんじゃない」



「…………ケチだなぁ」




〜寝室〜




「さぁ!ここが寝室だよ!」



「…………なぁ?なんでキングサイズのベッドなんだ?」



「一緒に寝る為!」



「…………ソファで寝る」



「なんでぇ?!せっかく買って来たのに!」





***




「明日は食材の買い出ししないと料理ができない」



「僕は食材の良し悪しとかわからないからリク頼みだよ。よろしくね」




部屋の見回りがいち段落した後、2人は夕食を取ることにした。



ちなみに理玖が料理でもしようかと思い、冷蔵庫を見たが中身は缶ビールとつまみと冷凍食品しかなかった為、今日は冷凍食品オンリーである。




「というかお嬢って料理できなかったんだな。見た感じなんでもできるって感じだったけど」



「まぁね。ほんとなんでかなぁ?昔、野外訓練の時にご飯作る事になってさ。その時、飯盒(はんごう)を爆散させちゃって、それ以来料理をするなって言われちゃったんだよ」



「………それはもはや才能だな」



そうして2人は夕食を食べ終え、ひと息ついていると風呂が沸いたというチャイムが鳴り響いた。



「お先どうぞリク」



「わかった」



理玖は愛莉珠に何も考えずに進められるがまま、寝衣用のジャージを持って浴室へと向かった。



理玖は脱衣所で手早く服を脱ぎ、浴室のドアを開ける。手で湯加減を確かめてから椅子に座って目の前の鏡を見た。



顔はあまり変わっていない。ただ、腰まで伸びた白のメッシュがかかった茶髪で頭の上には狼耳が少し垂れ気味に生えている。



理玖はこの10日間、あまり鏡を見ない様にしてきた。それは変わってしまった自分自身を見ているとなんだか打ちのめされそうになる為である。



小柄ながらも女性らしい体付きは母親譲りで髪や目の色などは父親譲り。こうもはっきりとするものなのかと時々思う理玖である。



そして、理玖が一旦髪を濡らそうと目の前のコックを捻ろうとしたその時──




「僕が、来たァッ!!さぁ!洗いっこしようじゃないかリクッ!!」




そんな叫び声と同時にスパンッ!と浴室のドアが開いた。理玖が驚いて振り返るとそこにはまるでモデルの様な身体を恥ずかしげも無く晒して仁王立ちする愛莉珠だった。




「なんで入ってきたぁ!?ちょッまずは隠せよ!」



「今や僕と君は同性同士、今更裸晒しても恥ずかしがる意味など無い!!故に隠す必要無しッ!!──そして!古くから裸の付き合いという素晴らしい文化があるじゃないか。それを実行に移すのみさ!」




顔を真っ赤にして手で視界を隠す理玖に愛莉珠は堂々とそう言い切るとそのまま近づき、理玖の手を取り顔から外した。そうなれば理玖の視界には愛莉珠のシミ一つない白い素肌が余す事なく見れてしまうというわけで……




「なんだいリク〜?僕の裸に興奮しちゃったのかなぁ?ねぇ〜?」




愛莉珠はそうニンマリと笑い、理玖を煽る様に密着してきた。自分より少しだけ冷たく感じる柔らかい感触に加えて何時ぞや嗅いだあの妙に甘ったるい香りに理玖の頭はオーバーヒートしそうであった。




「…………さて、揶揄うのはこの辺できちんと洗おうか。リクは女の子としてまだ日が浅いからね。折角綺麗な髪の毛なんだから、これから僕がお風呂の入り方を教える事にした。直接洗ってあげるから覚えるようにね」




愛莉珠は理玖から離れて、いつの間にか泡まみれのスポンジを手にしてそう言った。理玖はその愛莉珠の提案を飲むことしか出来ず、ただ顔を赤くして頷くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 愛莉珠の洗ってあげるは教える1:触れ合う9ぐらいの割合で言ってそうですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ