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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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面会

理玖が目を覚ましてから5日後、つまり面会の日まで理玖は病院で過ごしていた。



その間、日暮から女性としての暮らし方を教わり………下着についての話になった時に何を嗅ぎつけたのか愛莉珠が乱入して一悶着あったり、夜に神崎が現れたかと思うとアブノーマルな『夜のアレコレ』を吹き込んで怖い顔をした夜奈に首根っこ掴まれて連行されたり、愛莉珠が離れてから1日で我慢の限界に達して襲い掛かり、それに抵抗するも愛莉珠の馬鹿力に負けて魔力補給兼自らの欲望補給で吸い尽くされたりと色々あった。




「───それでは今から理玖はご友人と面会をしますから、貴女はしばらく席を外してくださいね?何があっても乱入してこないこと。いいですね?」



「わかってるわかってる。そう何度も言わないでよ……。耳たこになっちゃうよまったく」




と縁流が愛莉珠に向かってそう何度も言い、愛莉珠はそれにうんざりしていた。この4日間で愛莉珠は仕事の合間に何度も乱入している為、縁流も念には念をといった感じで言っているのだ。



それと愛莉珠に念を押す理由はもう一つある。それは理玖が愛莉珠のハウンドになったということを知られない為である。



愛莉珠は世間的に超有名な戦乙女(ヴァルキリー)である。テルゼウスの広告塔はもちろん、化粧品やらファッション誌のモデルやら、果てには映画など多種多様な媒体で活動している。そして今の理玖はハウンドとしてまだ不安定な状態である。そんな状態でメディアに割れれば何が起こるか分かりきっている。理玖の状態を考え、少しでも情報流出を防ぐ為に今の理玖は『無名の戦乙女(ヴァルキリー)のハウンド』という役を演じることとなっている。




「さて………伽耶子から連絡でそろそろ来るみたいです」



「お、そうか。リク、また後でね」




愛莉珠はそう言って理玖の頭を撫でて足速に出て行った。



愛莉珠が退室してしばらくすると複数の足音が部屋の前で止まり、先に日暮が入ってきた。




「理玖くん、皆さんが来ましたよ。一応、理玖くんの事情は説明してありますからね」




日暮がひと言断りを入れてから理玖の面会の相手である隆二、詩織、美桜を招き入れた。そして案の定といったところか。最初に入った隆二は理玖を見るなりビシリッと固まった。




「ちょっと隆二。入り口で止まら……な……い………」



「2人ともどうし………」




続く美桜と詩織も隆二と同じく理玖の今の姿を見て固まった。事前に話を聞いていてもやはり実際に見なければわからないものである。




「「「…………」」」



「………なんか言ったら?」




無言で凝視する3人に腕を組みジト目でそう言う理玖。そして最初に復活したのは切り替えの良さが売りの美桜だった。




「………ほ、ほんとに女の子になっちゃったの?出るとこは出て引っ込むとこは引っ込むって……えぇ〜〜………」



「別に背とかは変わってないだろ」



「いやそうだけど。顔とかまるっきり元のまんまだよね?というか幸子叔母さんそっくりだね。……………………ほらいつまで固まってんのふたりとも」




未だ固まっている2人に美桜は軽く叩いて戻した。




「へっ?!あ、えっと、その………ちょっと失礼します」



詩織はそう言ってツカツカと理玖へ近づき………思いっきり理玖の胸元に顔を突っ込んだ。そして大きく息を吸って吐いてを何度か繰り返して少し顔を離した。




「うん。理玖くんだ。理玖くんの匂いがする」



「え…………そ、そりゃあ、そうだろ。俺なんだし」




そのまま抱きついて安心する詩織に対して理玖は若干引いていた。何故ならその行動があの変態銀髪残念美人(愛莉珠)と同じだったからである。




***



……一方で愛莉珠はというと……



「僕のリクの匂いを嗅ぐ泥棒猫の気配がッフ?!」



何やら気配を察知して現場へ突入(乱入)しようとし、それを近くで監視していた神崎に止められていたのであった………



***




「というかほんと心配したんだぜ理玖。あれからまったく連絡寄越さなかったからな。探しても見つからねえし、テルゼウスの人に聞いても知らないって言われるし」



「おかげで詩織なんてここ数日放心状態だったんだから。真っ白になって見るに堪えなくて……」




と理玖は隆二と美桜に理玖がここにきてからの9日間のことの説明を受けていた。ちなみに詩織はというと前から抱きついてそのままである。



最初こそ驚きはしたが、同性になったことで積極的になったのだ。




「連絡については悪かった。俺が起きたのが4日後だし、そのあとも色々と立て込んでて………」



「………やっぱり、そんな危険な状態だったの?瀕死の重体だって聞いたから」




理玖の回答に抱きついている詩織は心配そうに聞いた。印象重視という事で理玖はあの日、瓦礫に埋もれ瀕死状態となり、それを愛莉珠が契約して助けたということになっている。



愛莉珠が衝動的に契約したとか、契約した後に理玖がボイドをバリボリ貪ったとかそういった事は省いてある。




「……………まぁな。そんで起きたらこんなになってたというわけだ」



「なるほどな。………というか理玖。お前、ずっと詩織に抱きつかれてるがなんともねぇのか?前までなら顔真っ赤にしてただろ」



「慣れた」



「慣れたのかなるほ………いやなんで?」



「だから慣れたって言ってんだろ。……………色々あったんだよ。察してくれ」




「「「あぁ………なるほどね」」」




理玖の遠い目をした答えに3人は納得した。




「ビーストになってわかったが、鼻は効きすぎてキツいし耳もキンキンするし尻尾も寝るのに邪魔。それとこのデカい脂肪どうにかしたい」



「それはまだ身体が慣れてないからでしょ?理玖くんの場合は狼系?だから鼻がいい筈。こればっかりは時間で調整するしかないよ」



「理玖の尻尾はまだフサフサだからいいけど、詩織みたいに先まで芯の入ったのだと横じゃなきゃ寝られないよ。胸は…………」




美桜はそこで言葉を切ると理玖に近寄って、理玖の豊かな胸を両手で鷲掴みした。




「─ッ?!ちょっ急に何するんだ美桜!」



「………Dカップくらい?思ったより大きいんだね?しかもブラ要らずでこの形……ちょっと隆二触ってみなよ!すんごいよこれ。マシュマロメロンだよ!」



「いや触らねえよ」




そんなこんなで4人は久しぶりの会話に花を咲かせた。そして面会時間も終わりを告げ、3人が帰った後……………




「さぁリク僕にも君の香りを存分に味あわせてくれぇ!!」



「いやだからなんで知って………おいその手をワキワキさせながら来るな。やめろ。マジでやめろ!」



「うるさい!僕は限界なんだよッ!!大人しく………吸われて揉まれろッ!!」



「い・や・だッ!!」




夕日が差し込む病室にて手四つでそんな攻防を繰り広げる2人であった。

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