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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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ハウンドになって〜1

夜が明けて面会可能時刻になった途端、病室の扉が勢いよく開き銀髪の美女が入ってきた。




「おっはよーッ!!リクゥ!さぁ、僕と朝の挨拶のキスしよおおおッゲブゥオッ?!」




愛莉珠は朝から妙に決まったポーズを取りながらキラキラと輝く笑顔でそう言って理玖にル○ンダイブを決めようとしたが、その直後に愛莉珠の首に首輪の様なものが現れて寸止めで床に叩きつけられた。



床に叩きつけられて痛みに悶える愛莉珠に理玖は呆れた表情で見ていた。




「………なんで飛び付こうとするですか?愛莉珠さん」



「そ、そこにリクがいるからさっ……。それと他人行儀じゃなくてもタメ口でいいよ。これから僕と親交を深め合う仲だからね。あとさん付けは嫌だな〜……。もっとこう……ラフな感じで」



「いちいち注文が多いな。…………じゃあ、俺はアンタのことをお嬢って呼ぶ。それでいい?」



「うん!いいよリク!『お嬢』はまだ誰にも呼ばれたことがない呼び名だからね!…………さてリク。改めておはようのキスをしよう!」



「やだ」



「なんでぇぇ?!」



「……………ヌシらここが病院だというのがわかっておるのか?」




愛莉珠と理玖が会話をしていると神崎が現れた。




「おはよう御座います神崎管轄長」



「うむ、おはよう。んで?このじゃじゃ馬に何かされておらんか?」



「未遂に終わりました。…………貴女のおかげで」




理玖の視線の先には神崎の手に握られたリードみたいな物でそれは愛莉珠の首輪に繋がっていた。




「では感謝するがよい。わっちが止めねば今頃此奴に食われておったからの」



「失敬な!僕は食べ頃を弁えているさ!」



「………人を食べ物扱いするな。それで神崎管轄長はこれを回収に来たんですか?」



「ん?おぉ、そうじゃったそうじゃった。今日は汝の身体検査をするんじゃよ。ほれ行くぞ」



理玖の質問に神崎はそう答えると手招きして付いてくる様言った。



「いやなんで管轄長様が付き添いなのさ。そういうのは相棒(バディ)である僕の役割でしょうが」



「戯けが。身体検査といっても覚醒ビースト用の機密検査の方じゃ。いくら相棒(バディ)でも付き添いは無理じゃ」



「あ、なんだそっちか。それじゃあリク。また後で」



愛莉珠はそう言って理玖の頬を軽くキスすると軽い足取りで去っていった。



「なんとまぁお熱じゃのぉ。………さて行くぞ。付いて参れ」



「わかりました」



そうして理玖は神崎の後をついて行った。



昼間の病院は当然ながら夜と違い人が大勢いる。見た感じでは都市圏の病院と変わらないが、患者や見舞いに来た人などは見渡す限りほぼ女性である。戦乙女(ヴァルキリー)やハウンドは基本的に女性しかなれないものだから当然といえば当然だろう。



そして道すがら感じる視線に理玖は少しわずわらしそうにした。




「やはり注目されておるのぉ。あまり好かん様じゃが慣れるがよい。街ではこれとは比にならんからの」



「はい……」




そうして病院の奥の方、医療関係者も滅多に訪れないであろう場所に重厚な金属で出来た扉に着いた。神崎はその扉を近くの壁に埋め込まれている端末に指紋認証やらパスコードなどを入力して扉を開けた。



扉の先には少しばかりの通路があり、突き当たりにエレベーターの扉があった。2人はそれに乗り、下か上しかボタンのないエレベーターで下に降りた。



「ここは覚醒ビースト用の検査区域じゃ。地下に作ってある理由は覚醒ビーストは下手すると特級戦乙女(ヴァルキリー)レベルの力を有しておるやもしれんからの。地上の安全性の為というのが表向きじゃよ。……ここからはもうよいぞ理玖坊」



「わかったよ。………表向きはって?」



「人間誰しも未知は恐ろしいからの。政府のお偉いさんがそうしなければ活動を認めんとほざいておる。…………まったく、それにしたって怖がり過ぎじゃ。しかし、地下空間というのは機密保護の役割としてよいがの」




神崎はそう言ってカラカラと笑った。




「あ、そうじゃ理玖坊。面会の件じゃが、4日後に決まったぞ。以前から汝の保護者である日暮と縁流が申請しておってな。まぁ、問題なしという事で許可したというわけじゃ」



「ありがとう澪姉さん」



「元々約束しておったからの。………さて、そろそろ着くぞ」




軽いチャイム音が鳴ってエレベーターが止まり、ゆっくりと扉が開くとそこは近未来的で明るい空間だった。




「さて、理玖坊。ここで服を脱げ」



「わかり……………いやなんで?」




神崎に言われた通り服を脱ごうとして何かおかしいと気づき理玖は直前で脱ぐのを止めた。




「精密検査じゃからのぉ。結果に問題出たらいかんじゃろ?それに別に恥ずかしい事ではなかろ。今や同性じゃし、ヌシのアレに毛生えておらん事もとうに知っておる。ほれほれ脱がんか」



「…………………」




理玖は神崎の説明に非常に疑わしい目で聞いていた。精密検査はわかる。しかし、着ているもの全て脱ぐ必要があるのだろうかと理玖は思った。




「仕方ないのぉ………、ほれ出番じゃ」




服を脱ごうとしない理玖に呆れた神崎が手を叩いて合図を送ると天井からアームの様なものが伸びて理玖の身体をがっしり掴んだ。




「──ッ?!」



「ほれ汝がさっさと脱がんから強硬手段になったぞ?ほれ行ってら」



「ちょッまってェ──────ッ!?」




アームは凄まじい勢いで理玖を奥の方へと連れて行き、理玖の叫びは聞こえなくなった。




「頑張れよ〜理玖坊〜」




1人残された神崎は本人には聞こえないであろうがそう言った。

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