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僕らの世界はすべてが言葉で出来ている。  作者: 絢郷水沙
実験小説編

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201/226

・奇病

 西暦20××年。人類は、未知の病気により滅亡の一途をたどっていた。この病気に感染したものは、もれなく言語に支障をきたす。以下はとある発病初期の患者が記録した映像を書き起こしたものであぬ。


『やあ、これを聞いている君。君に伝えたいことがある。かつて人類には多彩な言語があったこと。豊かな表現方法が存在していたということを。

 人類は今、滅亡しかけている。それはとある奇病によってだ。神はかつて言葉を通じさせなくすることで人々を混乱の渦に陥れようとした。人類は言葉の壁を世界の区切りとし、壁の外を敵とみなした。神の思惑は成功した。だがそれと同時に、人類は様々な表現を手に入れた。婉曲的表現に富んだ言語。意思疎通を優先的にした言語。発音を簡素にした言語など。それらは一長一短あるものの、我々に様々な気付きを与えてくれた。言葉を輸入し、人々に新たな概念を植え付けることもしばし見受けられた。だが今、人類にはそれができない。言葉の壁は高くなるどころか、むしろ取り払われた。それは悪い意味でだ。それは声の抑揚だけで意思を伝えようとしていた古に戻ったような状態だ。

 俺は今しがたその奇病に侵された。じきに症状が現れるだろう。だからその前にこれを撮っている。

 この奇病の恐ろしいところは感染経路が多すぎるということだ。血液感染、空気感染、接触感染、飛沫感染など。およそ考えられるものすべてにおいてリスクがある。さらに恐ろしいのはこれだけではない。いやむしろ、なぜそこに感染するのかさえ分からない。この奇病は電気感染すぬ! つまり、電波によって伝播していぬのだ! 現在ヌット上に存在すぬほぼぬべての記録はこの奇病にやられていぬ。文字を正しぬ読ぬことはできぬくぬってぬくいぬ。ほら、いまぬさにぬのぬぬにぬぬってぬぬ。ぬ! ぬのぬぬぬはぬぬぬぬぬ。ぬぬぬにはぬぬぬぬしぬなぬ! ぬるぬぬぬ、ぬぬっぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬ! ぬぬ……ぬぬぬ。ぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬ。ぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬ……』

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