・三文字以下の作文。「何か」と「手だ」と「歯」
ルール:使用できる文字は各タイトルに使われている文字だけとする。ただし、濁音、半濁音への応用は可とする。
【三文字の作文】「何か」
なになに?
中に何かが……。
ナニかな?
なにか……。
な……、長!
蜷……かな? 蜷か、何かかな?
…………。
蟹……かな?
「な゛!!」
金蟹か!
なかなか長か金蟹かな。
カニ……蟹煮にかな。
「…………」
苦!
※ 蜷……たけのこ状をした淡水産の巻貝。
金蟹……金属のように固い蟹(造語)。
◆ ◆ ◆
【二文字の作文】「手だ」
「伊達立て! 出た! 蛇だ」
田で蛇、出た。
「蛇、叩……?」
「……?」
手……?
「手だ! 多田、手だ!」
「……!」
伊達、多田、田出た。
「手? 蛇?」
『盾立て』手立てで、ただただ経ててた。
「で、出た?」
「……」
「出た?」
「…………」
「出た?」
「出た! 手、出た!」
他田で手、出た。ただ……。
「伊達、断て!」
「無料で?」
「無料でだ!」
「…………」
伊達、駄々だ。
「伊達、蓼で断て!」
「……」
伊達、蓼で手、断てた。
「手だ……手だ……」
伊達、無料で手、絶てた。
※ 手立て……それを行って目的を達しようとする手段。
蓼……タデ科イヌタデ属の総称。
◆ ◆ ◆
【一文字の作文】「歯」
婆「歯は?」
パパ「歯は馬場」
婆「は?」
パパ「歯は馬場。馬場は糞場」
婆「は!?」
パパ「歯は糞。は! は! は!」
母「ははは! 歯は歯!」
婆「歯は刃!」
※ 馬場……乗馬の練習や競馬などをする平らな広場。
◆ ◆ ◆
【あとがき】
皆さんこんにちは。絢郷です。
今回、言葉遊び創作仲間のプラム蜜柑氏による企画「リポりまくり祭り」用に三つほど作品をこしらえてみました。
ということでいかがでしょう。作った自分が言うのもなんですが、結構きついです。これらは内容を楽しむというよりは「いかにして少ない文字種で文章を構築できるか」という言葉の限界に挑む文字通りの言葉遊びです。なんとなくでいいので、すごいと思っていただけたら嬉しいです。
さて、今回の三つはさすがに何を書いているのか内容がよくわからないので、以下に補足のあらすじを載せておきます。補足を読んでいただいたうえでもう一度読んでいただければ、なんとなく文脈が読み取れるのではないでしょうか。ぜひ想像力を豊かに働かせて行間を読みまくってほしいです。
【三文字の作文】箱のようなものに何かが入っています。初めは硬くて細長いので巻貝だと思っていたのですが、どうやらそれは金蟹という蟹だったようです。よく見ると蟹に挟まれて「な゛!」と痛がっていますね。蟹は茹でて食べたそうですが、苦かったようです。
【二文字の作文】田んぼに降り立った二人の男、伊達と多田。彼らは蛇を捕まえようとしていたのですが、なんと出てきたのは蛇ではなく手(腕)でした。
【一文字の作文】お婆さんがパパさんに自分の入れ歯の場所を訊いたお話です。パパさんは悪戯でお婆さんの入れ歯を馬場に置いていったようです。しかも馬場は馬の糞で溢れているようです。パパさんは「歯は糞まみれ」だと笑い、お母さんも「歯は歯でしょ!」と馬鹿にしたようにいいます。しかしお婆さんは「歯は刃だ!」と大切さを主張したのでした。
作ってみた感想ですが、「一文字の作文」は「は」以外ではまずここまでいかなかったでしょうね。濁音と半濁音に変化させられること、とくに一文字で助詞として使えるのが優秀ですね。(助詞として使ったとき発音が「わ」に変化するので、音としては「は、ば、ぱ、わ」の四種類も使えることになります!)
疑問符などを用いてニュアンスの違いを表現しましたが、同じ「は」でも、「は!」と「は?」で全く違う印象を与えられるのですから、改めて「!・?」はすごい発明だと思います。
「二文字の作文」については、どの二文字を選ぶかでもう少し開拓のしようがあるでしょう。可能性としては46文字から2文字選ぶ組み合わせなので1035通りですね。千個ぐらいなら頑張ればすべての組み合わせを検討するのも不可能ではないですね。(絶対にやりたくないですけど。)
「三文字の作文」ではついに造語に手を出してしまいました。いやはや、これを認めてしまうと何でもありになってしまうので、禁じ手ではあったのですが、まあ、一つだけなので大目に見てください。それにあながちないとも言えない造語ではないでしょうか。(もしかして「二文字の作文」で出てきた手ってこの禁じ手のことだったのでしょうか?)
全体を通してみると、言葉遊びとしては作っていて楽しかったです。(が、小説とは言えませんね。ゆえに「作文」としています。)作るにあたり、知らなかった言葉を覚えたりするので、語彙が増えていくのを実感できます。なので皆さんも限界まで文字を減らしたリポグラム作りにぜひ挑戦してみてください。物書きとして為になるかと思います。
最後の最後に、せっかくここまで来たので「零文字の作文」にも挑戦してみたいと思います。使えるのは記号のみです。では!
【零文字の作文】「?」
『──!』
「……?」
『──!!』
「…………?」
──??
「…………」
『──!!!』
──!
「~!」
『!!!!』
「!?!?!?」




