・我が娘よ。
【パングラム】
椚拾い、「似てる」と、娘は笑う。
冬の明けへ。山越え、霜降りた。
細さ、地を鳴かせ。
熱よ、未練。
【解説】
くぬきひろい、「にてる」と、むすめはわらう。
ふゆのあけへ。やまこえ、しもおりた。
ほそさ、ちをなかせ。
ねつよ、みれん。
◇◆◇
秋に実をつける椚。
落ちていたそのどんぐりを見つけ、家に持ち帰った父親。
まだ幼い娘に見せると、彼女は「お父さんに似ているね」と柔らかく微笑んだ。
ずんぐりとした姿が似ていておかしかったようだ。
娘は病弱で、いつも床に臥していた。
笑う娘とは対照的に、その痩せた細い体を見て父親は内心、悲哀に暮れる。
もうすぐ、厳しい冬がやってくる。
山を越えてやってきた寒風が、大地に霜を降ろす。
やがて春が訪れるが、寒さはいまだに残っていた。
かつて温かさを持っていたものは、もうそこにはいない。
細い霜を踏むと、大地はぱりぱりと音を鳴らした。
【パングラム】
椚拾い、「似てる」と、娘は笑う。
冬の明けへ。病越え、死もおりた。
(遺体の)細さ(が)、父を泣かせ。
熱よ、見れん。