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天才魔法使いの憂鬱

作者: 七丘燐太



 私の名前はエリサ。


 世間からは天才魔法使いって呼ばれている。

 

 でも私自身は自分のことを天才だなんて思ったことは一度もない。


 16歳の私は、アタラシア王国に存在する大陸屈指の国立ランデリオ魔法学院の二年に所属している。

そして、確かに私はそこに在籍している学生人たちよりも多くの、そして強力な魔法を使うことが出来る。


 それは小さな山を吹き飛ばしたり、湖を蒸発させたり、雲一つない空をたちまち雨雲で覆い尽くして激しく雨をふらせたり、自分の知っている場所ならこの世界のどこでも転移出来たり。


 周りはこれらをすごいと褒め称え、大人も手放しで称賛する。


 だけど、私にとっては「この程度」しか出来ない、と思ってしまう。

大陸を消滅させたりなんて出来ない。海を丸ごと干上がらせるなんて出来ない。そのあと再び海を作るなんて出来ない。異世界や別次元に転移なんて出来ない。


 でも、そんなことが涼しい顔で出来る人を知っている。


 その人の名前はライナー。私の魔法の師匠で、幼馴染。周りから天才と呼ばれる私が本当に天才だと思う人。


 だけど彼の世間からの評価は落ちこぼれ。もしくは私の腰巾着。そんな悪評をものともせず学園に居続ける気味の悪い奴。


 だけどライナーはそんな評価をまるで気にせず過ごしている。マイペースここに極まれりって感じ。

そんなライナーが校舎裏の授業などで使われたりしている魔獣を管理している施設の中で複数の人に絡まれていた。絡んでいるのはこの国の高位貴族で生徒会長のアルなんとかって人とその取り巻き。


 何故名前もまともに覚えてないのに顔を知っているかというと彼らは私にも絡んでくるからだ。生徒会に入って欲しいという理由だが裏に下心が透けて見えているので全く相手にしていないが。


 そしてライナーには私に付き纏うな、とか落ちこぼれはさっさと退学しろ、とか大きな声で喚いているのがこちらにも聞こえてくる。もちろんライナーはどこ吹く風で話を聞き流し、飼育係の務めである小さな魔獣の世話をしている。


 そんなライナーの態度にとうとう我慢できなくなったのか詰め寄ろうとしたところで私は慌てて介入する。


 彼らは知らないのだ。


 ライナーがこの世界にいるどんな魔法使いよりも隔絶した力を持った魔法使いであるということを。


 ライナーが彼の本当の実力を知る王族から頭を下げられてこの学園に身を置いているということを。


 ライナーを本気で怒らせると下手をしたら天変地異が引き起こされてしまうことを。


 だから私は彼らのためにも仲裁に入る。万が一を引き起こさないために。


 そんな私の心持ちを少しも斟酌することなく、生徒会の面々は私におべっかを、ライナーには侮蔑を放つ。


 私がそろそろ彼らを物理的に黙らそうかとどの魔法を使うか思案しようとしたところで急に生徒会長であるアルなんとかが決め顔のつもりらしいツラを作って口説き始めてきた。美辞麗句を並べ立て、如何に自分の女になれば素晴らしいことがあるかを語りかけてくる。


 あまつさえ、ライナーの平凡顔を引き合いに出し、自分の顔がどれだけかっこいいかを自慢してくる。

聞くに堪えない言葉ばかりで辟易してくる。そもそもライナーがわたしに釣り合っていない、という文句自体が間違っている。正確には逆だ。


 私はライナーに片思いをしている。異性として好きだ。物心つく前から同じ孤児院でいっしょに過ごし、両手で足りないくらいには命やピンチを救ってもらっていて惚れない方がおかしい。


 だけど恋敵が強力過ぎる。この大陸の双玉と呼ばれているアタラシア王国第一王女に、もう片割れと言われている隣国のグラドエイド帝国の若き女帝。さらには自称この世界の神の一柱である美の女神(見た目は本当に美の化身と言われても違和感ない)。


 確かに私は美人というカテゴライズに入るだろう。しかしライナーを巡る恋のバトルでは何らアドバンテージになっていないのだ。なんなら一番劣っているまである。私の持っている長所はライナーとの誰よりも長く一緒に過ごした時間だけだ。


 まあほかのライバルたちに会えば滅茶苦茶うらやましがられるポイントなので少しだけ優越感には浸れるけど。それもこの戦いに勝てなければ虚しいだけだ。


 ともかく、私が知っているだけでも7度は世界を救っているライナーに張り合いたければ、一度くらい世界を救ってからにしてほしい。親の権力を笠にきているようじゃあ土台無理だろうけど。


 自分の容姿を褒められるというコンプレックスを刺激され続け少しオーバー気味に生徒会の連中を鎮圧してしまったが、まあ少しだけ気が晴れたので良しとしよう。


 のした彼らを施設の外の空いている場所に転移の魔法で追い出したところで後ろからありがとうとのほほんとした顔でのたまうライナー。


 全く、私の気も知らないで。


 そんなライナーに私はジト目になりながらデコピンをお見舞いする。


 痛いなぁと額をさするライナーに心の中でため息をつく。この朴念仁め。


 私のこの憂鬱は晴れる日が来るんだろうか。


お読み下さりありがとうございました。

双玉の二人の政治という名の恋のさや当てバトルとかも考えてましたが僕に政治の話を書く能力がないので断念しましたorz

もしまた別の作品でお目通りが叶いましたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] むずかしいところもありましたが、エリサちゃんがライナーくんを想いやっているところが良かったです。 いつかライナーくんの実力が認められ、エリサちゃんと幸せに暮らせるといいですね。
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