馬の上で叫ぶ
私が元住んでいた国の名は、ロイゼンハイムという。
当時の世界では最大の王国で。
代々、奇跡の力を持つ子孫が国を治めるが国王と共にある獅子の称号を持つ『ベルグマント』という集団が治世を担っていた。
もちろん、大魔法使いである私も獅子の称号を持ち、自慢ではないが知性の神として名を連ねていた。
ベルグマントになるには、様々な功績が求められるが一代のみの称号で獅子の称号と共に、子孫に受け継がれることはなく公正な組織だと尊まれてもいた。
ベルグマントは王家の定められた法に則り、古代の定められた羊皮紙に名を連ねられ、少しでも古の法から逸れた行動をすると何故か即座に羊皮紙から名が削られ、永遠にその名が残ることはないとされており、その後、適切な者の名が新たに綴られているという古代魔法が元になっている。
職務中は名が羊皮紙に連ねられるが、職務を去ると宣言しても羊皮紙からは名が削られる。
私はかの人知を超えた者を召喚する前に、勿論ベルグマントから降りる旨を正式に提出し名前は消えているはずだ。
その代わり、獅子の称号を持つ名鑑には名が刻まれている。
そんな私の故郷、ロイゼンハイムは常に魔物の脅威にさらされていたばかりか、海を挟んだ隣国とも海峡の利権争いが絶えず平和とは言い難い国であった。
国には各州が点在しその州を我々魔法省が作った魔法壁により災害や魔獣からの脅威から守っているのが現状だった。
私は緑豊かで魔物の脅威にも怯えず、隣国のいざこざからも守られ、一人ひとりの尊厳が守られる様なそんな世界を目指して日々精進していた。
そんな、懐かしのロイゼンハイム。
が、今、ここに…ここに?!
「そうだよ~。この国はロイゼンハイムといってね。結構な大国だと思うよ」
…いや、まさか同じ国に転生なんて、そんな野暮なことしませんよね?
「でね、国を治めているのは王様だけど方針を決めているのはベルグマントっていう集団なの」
馬に乗りながらお父さんから転生先の、今いる国についての説明を受けている私。
「あ、ベルグマントっていのは古来からの法律に則って古代魔法で任命された人たちの集団で、それはそれは凄い人たちなんだよ~」
…知ってる…
ちょっと待ってお父さん。それ、知ってる。
滅茶苦茶、同じ国の話されているみたいなんですけど。
まさか…同じ国なんてことはないわよね。
ただのデジャヴですよね?
ところで今、どの治世なのかしら。
因みに私がいた前世はパトリック様が治めていらした。その前が賢王ニコラス。
「…お父様、因みに『賢王ニコラス』様の治世は何年前の話しかしら」
「え!ニコラス様の事知ってるの?賢いねぇ。んーと、大体200年前くらいかな?」
!!200年!!
おおおおお。
ってことは、色々鑑みて。
私が転生したのは200年後の同じ国ってことか!!
なんてことー分かりやすいけど!分かりやすいけど!
でも、それってもはや転生じゃなくて!
死去して生まれ変わったっていっても同じじゃないかしら!
いや、本当に!
それ、私が知っている転生と何か違うんじゃないかしら!
いや、確かに転生だけど!
転生だけどおおお!!私がやってほしかったのは、それじゃないっていうか!
もー!!!!
人知を超えた者!!!
ざつ!
雑だから!転生、雑だからー!!!
私は天に向かってさらに罵詈雑言を心に中で叫んだのだった。
なかなか試験会場にたどり着かない。