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入学式1


 可憐なアイリス。僕の可愛い、アイリス。せめてお前だけでも生きてくれ。


 まだ薄暗い、これから日が昇る澄み切った空を見上げる。最近、また始めた朝の訓練に行くために簡単な服装に着替える。

 運動に行く前に新鮮な果物のジュースを一杯飲む。昔は二人で飲んでいた習慣も今は一人だ。でも…と、アイリスは自分の右足を眺める。そして、手をぎゅっと握り締めた。

 …この幸運を無駄にはしない…。

 毎朝、言わずとも新鮮な果物のジュースを冷やしてくれる両親に感謝をしてそっと家のドアを開けて外にでた。

 商業施設が立ち並ぶこの界隈で、今の時間に外に出ている者は少ない。

 いたとしてもアイリスと同様、訓練のための走り込みか、犬の散歩をしている人ぐらいだ。アイリスの両親はケーキなどをメインとした喫茶店を営んでいる。中でも季節ごとに代わる新鮮な果物や野菜を使用したフレッシュジュースは喫茶店の営業時間よりも早くに見せを開けて販売していて朝から働く者の喉を潤している。

 きっともう少ししたら両親も起きだして本日販売するケーキの制作に取り掛かるだろう。運動したらいつも通り手伝わなくっちゃと思い、いや、今日は入学式だったと再び思い出す。

 そうだ。

 今日は王立騎士学校の入学式。

 アイリスは再び、右足を眺め、己の幸運を噛みしめた。お兄ちゃんの分まで…そうつぶやくと再び走り込みを始めた。


 「お父さん、お母さん、じゃあ行ってきます!」

 群青色の制服に身を包み、両親に挨拶をする。もう、感極まって何も言えなくなった二人が涙を流しながら無言でアイリスを抱きしめてきた。

 アイリスの目にも涙があふれたがぐっと我慢し笑顔で離れる。再度、頷きあうとアイリスは外へとドアを開けたのだった。

 —長かった。そして突然やってきたこの上ない幸運を思い出し、またあふれそうになる涙をこらえる。

 後悔はしない。兄の分まで生きる。そう再び誓い、足を踏みしめた。


 いつもの均等のとれた石畳を歩いていると、乗り合い馬車の停留所で自分と同様の群青色の制服に身を包んだ二人組の姿が見えた。

 制服の刺繍が黒色である事から、彼らも新入生だとわかる。

 王立学校の生徒の制服の色は群青色で制服の刺繍の色で学年が識別出来るようになっている。黒が新入生。白が二学年。最終学年は銀で、金糸の刺繍は学生でありながら獅子の紋章を得たりと特別に優秀な学生のみ使用される色だ。

 同じ新入生か…でもこんなところでどうしたのだろうかと近づいてみる。


 「わーどうしよう、ここどこだか全然わからない。まさかの二人で寝過ごしとか!のーう!」

 「…行き過ぎたのだから戻ればつくんじゃないか?」

 「確かに…。歩いて戻ってまにあうかな…」

 「早めに出てはきたが…走るか?」

 「!!そうだね!お兄ちゃん!走ろう!」

 「いや、まて。ケイト。落ち着け。…そもそもなんだが…入学式、出なくてもいいんじゃないか?」

 「え…お兄ちゃん…走るのが面倒くさくなったとかっていう理由ですよね…」

 「そうだ」

 「いや、堂々と頷かない!」

  小柄でショートカットの子がほら、走りますよ!ともう一人の長身の男を奮起させている。

 アイリスは近づくと声をかけた。

 「あのぅ…もしかして騎士学校の入学式に行かれる方ですか?」

 声をかけてみたものの、振り返ったその顔を見て硬直する。

 わぁ・・・見たことないくらいの美形…。

 小柄な少女の方も整っているが、長身の男性の顔面が尋常ではないくらいに整い過ぎている。

 男性の顔面に硬直していると、横から小柄な少女がアイリスの手をガシッと掴んできた。

 「え!あの!その制服!ってことは、あなたも王立騎士学校へ行かれる方ですか!?」

 期待を込めたそのまんまるな目にアイリスは同様しながらも頷く。

 「あのっ!ここどこですか?入学式、間に合いますかー?」

 半分泣きべそをかきながら少女がアイリスに迫ってきた。

 …か…可愛い…。

 小さなころに飼っていた犬のベスを思い浮かべてふっと表情がほころぶ。

 「大丈夫ですよ。一緒に行きましょう。私もこれから入学式に行くところですから」

 アイリスはそういうと二人に笑顔を見せたのだった。




僕の私のアイリスちゃん登場ー。って誰だよ。

ええ。

アイリスちゃん…アイリス…アイス…アイス…食べたい。

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