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入学式前(家)3

 「200年前、大精霊たちが姿を消したって事は理解は出来たんですけど…それで何故、精霊魔法から魔石工魔術へと学問が移行していったのかがちょっと分からないんですけど」

 「ん?」

 「いや、大精霊たちが姿を消しても精霊たちはいたわけですよね?だとしたら、大きな精霊魔法は使えなくとも小さな精霊魔法は使えたわけですよねぇ?」

 徹夜明けのぼけっとした頭で肉体労働を終えた我々は早々に着替え、乗り合い馬車に乗るためのどかな道を横並びに歩く。

 昨日、完徹して教えてもらった魔石工魔術の知識があふれそうにはなっているが、それよりも昨日、というか日をまたいで今日、両親がいる手前聞けなかった疑問をお兄ちゃんにぶつけてみる。普通に隣にいらっしゃるが、元は精霊だし、200年後の世界に連れてきてくれたお兄ちゃんだ。何か知っているに違いない。

 「んー…精霊の世界はなー…個々で成立していそうではあるのだが…まぁ繋がってもいてな…だから…まぁ…大精霊たちが姿を消せば、そのほかの精霊も姿を消すと思うぞ」

 「え…ってことは、私がいなくなったあとの時代って、結構長い間、精霊姿けしてたの?」

 「そうなるな」

 のどかな風景に爽やかな笑顔で驚きの事実を平然と言わないでほしいんですけど。

 「…それはぁ…確かに…精霊魔法が廃れるわけですね…」

 なんと残念な。

 生きていた時代以降、精霊魔法は途絶えていたという衝撃の事実。どびっくりです。

 「あれ?…でも、今、いますよね?精霊、沢山」

 「いるな」

 ここにもいるしなと、ついでのように自分を指さすお兄ちゃんだが、いや、お兄ちゃんはもう外側人間だしね。複雑だけど人間だしね?と、思ったがスルーする。

 「…えーと、で。精霊沢山いる現代なのに、何故精霊魔法の学問が復活していないの?」

 精霊が沢山いるからここに転生してからの祝福魔法も大々的に出来たわけで。

 「…さぁ?…200年もたてば精霊魔法を読解できる奴もいなくなっているわけだからなんじゃないか?」

 なるほど!

 それだ!

 確かに!

 大きく頷き返す。

 確かにそうだ。200年前から来た私にとって現代の世界の常識である魔石工魔術の術式が読解出来ないように、一度廃れてしまった古代の精霊魔法も文献はあるのかもしれないが、それを読解し実践出来る人がいなくなってしまったに違いない。

 魔石は200年前もあったけれど他国の文化という事、そして自国の精霊魔法に比べ威力も効果も長続きしない欠点があってこの国では普及してはいなかったけれど、装飾品及び、消耗品として使用はされてきていた。

 それが、魔石が主軸となった魔法陣がここまで生活に根付くとは…人生何が起こるか分からないものだ。

 ふむふむと一人で納得しながら歩いていると、寄り合い馬車の停留所に付いた。

 寄り合い馬車の人が作ってくれたのか、木でできた簡単なベンチが二つ並んでいる。お兄ちゃんと仲良く隣に座るとほっと一息ついた。

 「はぁぁぁ、昨日から寝てないからちょっと疲れちゃいましたねー」

 足と腕を伸ばす。

 徹夜明けに加え労働もしたから身体が軋む。

 若くても徹夜は身体に少しはくるなと思いながら思いっきり伸びる。

 「人は寝ないと死ぬらしいから、お前は馬車の中で寝ていくがいい。僕が付いたら起こしてあげよう」

 「わぁ、それは助かりますー」

 なんせ、油断をしたら瞼がくっつきそうなくらい、今まさに睡魔が襲ってきているから。

 いったん椅子に腰かけてしまったが故なのか、ここから動きたくないと思うほどにはどっと疲れが身体に来る。

 「…お兄ちゃんは疲れないの?」

 中身は精霊だけど身体は人間なはずだ。

 「…よく、わからないのだが、逆に元気になっている気がする」

 …あ、それ、ダメなやつじゃないのかな…

 徹夜明けのハイテンションが続いているだけじゃないのかなー…

 「お、来たぞ」

 大丈夫なのかなという不安は乗り合い馬車に乗ったところで夢の世界にすぐさま旅立った私は、頭の中から一瞬で不安という文字を消し去ったのだった。

 寝るぜー寝るぜー俺は寝るぜー。

 私の中の細胞たちが自己主張をし始め、馬車の心地よい揺れと共に深い眠りについたのだった。



パソコンがね、固まって動かなくなる事がしばしばあるんですわ。ええ。

本気でパソコン買わなきゃかもしれないんだけど、先立つものがねーないねー。そうねー。

世知辛い。


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