引っ越し
その昔、世の中には精霊がいて世界を巻き込むほどの大魔法を使うとき、彼らは我々に大いなる力を手助けしていたという。
だが200年ほど前のある日、突如として世界から精霊という精霊が消え大いなる魔法は一切使えなくなったといわれている。
子供の頃から代々伝わっている『悪い魔女と王子様』のお話はここからきている。
「そもそも、精霊なんて本当にいたのかな」
大きな荷物を抱えたローレンスが隣に並ぶ。
「さぁな。だが小さな精霊を見ることの出来る者はいる」
「あぁ、魔術総長とか見えるっていってたね。いや、感じる?だったかな」
「威力のある魔術を使用するときに感じるらしいな」
大きな荷物で前が見えないのではないかと思うがローレンスは器用に障害物をよけながら階段を上る。
因みに俺の荷物は手の中に納まるくらい少ない。
「で、どの部屋だっけ?」
4階まで上がって先に廊下を歩いていたローレンスが振り返る。
「一番奥の部屋が俺で、その手前がニコラスだから、お前の部屋はその手前の部屋だ」
「えー、僕、奥の部屋がよかったー」
「贅沢言うな」
「へいへい」
我々は騎士総長エドワードの命令で今季から王立騎士学校の寮に住むことになったのだ。
事の発端は、あの日の大魔法にある。
我々が騎士総長に今年から通う少女の羊皮紙を届けたあの日、突如夜空に大魔法が打ち上げられた。
夜空に打ち上げられた光は2、3発続き、光の粒が城全体どころかこの国の首都であるフローレンス一帯を包み込むほどの威力だったことが分かり騒然となったのだ。
フローレンスの市民は、これらの魔法を今年の城の庭園を飾り立てた王立魔術学校の粋なサプライズだと思ったようだが、実態は不明。
それどころか、首都を包み込むほどの大魔法だ。
自慢じゃないが生きていてこの方見たことはない。そればかりか、長年魔術に携わっており生き字引ともいわれている魔術の長老方すらも、この世界に存在しない魔法に度肝を抜かれたのだ。
一瞬、平和条約を破り大砲が砲撃されたのかとも思われたのだが、すぐに魔術の総長であるエドウィンがこれは祝福魔法の一種だと宣言し、緊急体制をとろうとしたエドワードを制しベルグマント及び王にも報告が行き、事なきを得た。
でなければ、誤って緊急体制がとられるところだった。
何せすべての家や屋敷、城でさえも部屋という部屋の天井が部屋の大きさや高さに関係なく一瞬で夜空に代わりすべての者に祝福を与え、尚且つ幻想的な光景を見せるという事を3度連続で行われたのだから。
祝福の魔法はその時の幻想的な光景だけに納まらず、光を浴びた住民はみな、どのような者であれ祝福を受けるかたちとなった。
ある者は病気が治り、ある者は動かなかった足が動くように。
ある者は失った手が生えるなど、尋常ではない数の奇跡の報告が城に寄せられ現在魔術騎士団はその処理に追われている。
それで何故、我々が王立騎士学校に派遣されることになったのかというと。
そう。
同じ時期に現れた白銀の獅子の紋章が浮かび上がった少女。
キャサリン・ヴィルフリートを監視するためだ。
騎士総長エドワード及び、魔術総長エドウィンの命令により、俺、ハロルドを含むローレンス、ネイサン、ニコラスの四名がここに派遣されたというわけである。
勿論、あの夜の魔法を行ったのが彼女だという証拠はないが、あまりにも偶然とは思えない事からこのような事態となった。
少女を王宮へ呼びつける案も出されたが、その案はベルグマントにより却下されている。
懐かしいこの寮にまた今度は指導者となって入居するとは思いもしなかった。
考えに耽っているとローレンスが荷物を片付けたら一緒に食事に行こうといいながら部屋に入っていく姿がみえた。
奴は何故か楽しそうだ。
分からないでもないかと、自分もこれから住む事になる部屋の扉を開けたのだった。
冷やし中華、美味しかったー。
明日、何食べようかな。っていうか、なかなか進まない。
やっぱりワード欲しいなー。保存しないで一気に入力して一気に投稿するのってかなり無茶だと思うのだけど、他の方はどうされているんだろう。
皆、凄いなー。




