兄登場5
お兄ちゃんの正体は結局わかりませんでした。
そもそも精霊なのは分かり切っているんだけど、この世界ではきちんとした人間の肉体をお持ちだそうで。つまり、精神は精霊なんだけれど肉体はれっきとした人間だそうで自分の身体があるっていうのは新鮮で楽しいものだなとにこやかに笑っておられた。
次いでに何んの精霊かを聞いたんだけど、それは言うと面白くないから言わないとか言って教えてもらえなかったんだよね…。
何、その面白くないからという理由は。
私も私で思い出そうとはしているんだけれど、呼び出した精霊がどれだったのか、ぶっちゃけ分からないのよ。
必死だったから、呼び出す精霊の名前沢山書いた気もするし。
一番強い方で頼みます!みたいな感じの魔法使った気がするし。
とりあえず、深く考えないことにした私です。
だって、私、お兄ちゃんに構っている場合じゃないんだもの!
目指せ!恋愛成就!
そして初の学園生活!!
ウキウキです。
前世では、学校になんて通う事のなかった私。私が大人になってから国立の魔術学校も騎士学校も創立されたもんだから、学校に通うなんて初めての経験なんですよ!
わーい。
これ、大衆小説でいうところの学園ラブもあるってことですよね!
楽しみー!
と、思っていた時期が私にもありました。
いや、お兄ちゃん。どう考えても年上ですやん?
お父さんもお母さんもお兄ちゃんは寮に住んでいるって言ってましたやん?
なのに、なぜに私と同学年なんですかね?
お兄ちゃんっていうからには年上なんですよね?
「あれ?言ってなかったっけ?」
「何をですか」
「僕たち、双子設定だよー」
「は?」
驚きすぎて眉間にしわよったわ。
「いや、だから双子」
「いや、ありえないでしょ。どう見たって似てないですよね?」
「んー。でも双子だよって言ってしまえば双子になるんじゃない?」
いや、ならないよ。
びっくりだよねー。双子だったんだねーとかって納得している両親は置いておいて。
私は奇跡で現れた設定は了解したけれど、お兄ちゃんはすでにいたわけですよね?
って思っていたら、いや、お兄ちゃんもついこの間出来たのよーなんて両親が驚愕の事実を宣っていた。
嘘でしょ、お父さんお母さん。
もう少し、驚いてもいいんじゃないかな。
この人、人じゃないんだよ?
いや、肉体は人か。
っていうか、その前に
「寮に住んでいるって」
「うん。僕の方が特待生として入学が決まっていたからさ、早い段階で寮に入っていたんだよね。ケイトの部屋は因みに僕の隣だよ!」
だよ!じゃなくて!
羊皮紙!!
全ての善行と悪行を記されるはずの!羊皮紙!この人じゃないモノの正体、ちゃんと暴いてよー!
なんで入学許可しちゃったかなー?
「あ、そうそう。羊皮紙といえば」
「お兄ちゃん、私の考え勝手に読むの止めてもらえませんか」
「うん、羊皮紙といえば」
「お兄ちゃん、話しを無視するの止めてもらえませんか」
「僕の羊皮紙は問題ないけどケイトの羊皮紙、大問題になってたね」
は?
何それ、大問題ってなんですか。
お兄ちゃんがとまらなーい。




