兄登場4
時が止まったのは数分でした。
そう。覚醒。
「お兄ちゃん?!」
「そうだ、私・・・いや、僕が君のお兄ちゃんだ」
旨を張りながら目の前の『お兄ちゃん』が言う。
いやいや、まてまて~。そうじゃないだろう~。
お兄ちゃんって。
さっきは極度の混乱で思考回路がショートしてたからあれだったんだけど、よくよく考えてみたらおかしいことこの上ないよねぇ?
「いいですか、えーと、お名前なんでしたっけ」
頭に手を当てながら私が召喚した精霊の名前を思い出す。
時?いや、全能のほう?私、何の精霊の名前呼び出すときに書いてたっけ?
全部書いた気がするわ。
え、そのうちのどれよ。この精霊。
えーとと名前を思い出そうとしていたら目の前のモノが「お兄ちゃん」と呼べと強制してきた。
「僕は『お兄ちゃん』だ」
「…」
「ほら、『お兄ちゃん』と呼ばぬか」
「・・・お兄ちゃんは何でここにいるんですか」
ジト目になった事は許していただきたい。
「お兄ちゃんはな、転生するお前が心配で心配で。ふとな」
「ふと?」
「そうだ、心配ならついて行っちゃえばいいんじゃないかとな」
「ついていっちゃえば・・・」
「そうなのだ。滅多に人間に呼び出される事がないこの私が、何千年かに呼び出されたのだぞ?」
「で?」
「だから、せっかくなら転生した後にも私がついていってあげようかとな」
呼び出した精霊と一緒に転生するってどうなのこれ。
「でも、お兄ちゃん。明らかにお父さんとお母さんと髪の色も違えば顔の作りも違うんですけど大丈夫なんですか」
お兄ちゃんの顔は人知を超え過ぎていると私は思うんです。
「そうか?」
「そうです。お兄ちゃんがそれなら、どうして私もその顔にしてくれなかったんですか!」
「この顔がよかったのか?」
「ええ!顔だけは眩しいくらいにイケメンなの何とかなりませんかねぇ」
ふにっと頬をつままれる。
「いひゃいんですけど」
「お兄ちゃんは今、なぜかお前に嫌味を言われた気がしたのだ」
正解だ。
そっと両手を離させる。
何度つまむ気だ。私の大切なもちもち頬を。
「兄弟って思えなくないですか?」
「そうか?まぁ兄弟じゃないからな」
ん?
「いや、お兄ちゃんなんですよね?」
「そうだな。生物学上は兄弟ではないが、呼び名はお兄ちゃんだな」
どうしよう。言葉がよくわからない。
何?精霊の常識なの?
「まぁ何とかなるものなんじゃないか?お兄ちゃんと呼んでおけば、僕はお前のお兄ちゃんになるだろうし。他人からはどう思われようが、問題はない」
そうなのだろうか?
まぁいいのか?
「という事で、よろしく頼む。妹よ!」
「・・・はぁ・・・」
こうしてよく分からないながらも精霊と兄弟になり今生での生活が幕を開けたのだった。
兄登場は1から4まるっと一緒でよかったとは思うのですが
文章の保存方法がぶっちゃけまだ分からないのでこんなこんなです。
お兄ちゃんは精霊時代の私という一人称が少し抜けませんねぇ。
僕、と呼ばせたいんですけれどねぇ。→じゃぁ最初から僕で統一しとけって話。




