獅子の紋章3
本来、王立騎士団学校入学の際に提出される羊皮紙には何も突起すべき事が記載されていない真っ新な物がほとんどだ。
入学年齢を鑑みれば、当たり前である。
その年齢で国家レベルの善行と悪行を行っているやつなんぞ、この方見たことがない。
黒士団や白士団、魔術省など、それぞれの重要な部署に所属される際にはちらほらといたりはする。
だが、それも善行ではなく大抵が犯罪行為の悪行が記載されている。
腕っぷしの強い奴の過去は、色々あるというわけである。
その際、その羊皮紙には勿論、どのような行為がそれに該当するのかが古代文字でばっちり記載されている。
されているはずなのだが。
何故、このキャサリン・ヴィルフリートなる少女の羊皮紙にだけは記載の文字がなく獅子の紋章だけが名前の横に存在しているのか。という事が大問題なのである。
第二次試験会場での彼女の小動物的可愛さに、普段小さくて可愛いものに見慣れていない騎士団はこぞって心を揺さぶられていたようではあるが。
かくいう、私も危なかった。
女性に慣れていない。というわけでは決してない。
特に白士団長であるローレンスは女性慣れしすぎている。
だが、なぜか。
キャサリン・ヴィルフリートのあの小動物的可愛さに対する耐性がこぞって欠如していたのである。
ついうっかり、ほほを赤らめたローレンスが
「あ、ごめんね?もう虐めたりしないから、大丈夫だよ~」
と、瞬時に席を立ち、怖いことされたねー、怖かったねーとか言いながら
「うん、合格だから。大丈夫!気を付けてお家に帰るんだよー」
とまるで小さな子に諭すように言うもんだから、なんとなくその場にいた騎士団全員が微笑みを浮かべて怖くないよー怖くないよーと頷いて彼女を扉の外に誘導するのをつい、そのまま眺めてしまった。
いつもは止めるであろう、ローレンスの側近ネイサンですらだ。
なんだ、あの子は。
何かの魔力を放っているのか。
とりあえず、この羊皮紙をベルグマントに報告し、持ち帰る事になったのだった。
合格は合格なのだが、彼女の通う学科の問題をこれから決める事になると思う。
黒士団よりの魔獣学科になるにしろ、白士団よりの護衛学科になるにしろ。
まぁ本人の希望に沿うなら、魔獣学科になる事になるのだが。
一体彼女は何者なのだ。
今日、配達してくれるっていう荷物を午前中から待っているが。
現在8時を過ぎている。
えー。配達の最終時間て何時でしたっけー。
お風呂、入りたいんですけどー。




