夢・転生。
今回は、悪のりしています。
自分は極道だーー、分かりきっていた。
若頭に辿り着くまで。
淡々と地獄の日々を渡り歩いてきた。
「往生せいやーーーッ!!」
出刃包丁を抱えて突っ込んできた鉄砲玉は数知らず。
じつに何度もその命を奪われてきたたことだろう。
その都度つらい。
ただ、幼馴染みの彼の笑顔だけがこびりついていた。
「なぁ、遊夜ーー、これ、どういう状況やと思う?」
「いや、分かんないけどーー、長門っちは?」
お互いに擦り付けあう。
窮地の擦り付けあいだった。
本気だったーー、まだ友人だから許せる。
いままで『夢探偵』として、わりと単純に解決してきた。
今回もまた、単純に解決されるモノだろうと。
ただ、まさかーーこんな状況に陥るなどとは思ってやいやしなかった。
遊夜はかなり後悔している。
軽い気持ちで依頼を受けてしまったことに。
標準装備はまるでレベル1の革製品。
武器は、ひのきのぼうだった。
ふたりが闘っていたのは、いわゆるラスボスらしい。
「これーー、勝てンのか?」
ちょっとキツイ、どころではない。
ふたりは何度も繰り返し、また定番の台詞を聞くこととなる。
「おぉ、死んでしまうとは何事ぢゃ」
自分達は勇者さまなどではない。
ましてや、冒険者などでもーー。
直ぐにでも、その玉座を粉砕したくなってしまう。
その気持ちはわかるだろう。
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「……姉さん、起こしたほうが良いっスか?」
「いやぁ~、やめといたほうが良いンじゃあない?」
良い年した男同士がソファーで抱き合っていた、くんずほずれず。
かなり見苦しかったのだろう。
いわば、それはおっさんずラブ。
BLのその遥か上をゆくのだろう。
「う~わ! これはちょっと……ヤバくないっすか!?」
「気にしないほうが良いよ、サブ」
まざまざと見せつけられてゆく。
悪夢にハマってしまったーー、その光景を。
「はわわわわ…………」
いたって冷静だった日南子は、始終スマホで録画していたのであった。
「売れるね、これは……」
心底アニキを心配している。
サブの気持ちなど知るよしもなかった。