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夢探偵。  作者: caem
8/20

週末。

ギャグ路線ではありませんーー、たぶん。


「邪魔するでぇ~」


「邪魔すんのやったら帰って~」


「あいよ~……ってーー、ンなワケあるかいっ!」


 それは毎週土曜日の午後のやり取りを彷彿させる。

 チケットを取るのはじつに難しかった。

 とある新喜劇みたいであった。


「日南子ちゃ~ん、(ちゃ)ぁしばいてくれへんかのう」


 じつに(やから)っぽく、その口ぶりからコテコテの関西人だと。

 また、それに対応している人物も慣れた素振りだったのだが。


「おらへんよ~、買い物にいっとるさかい」


「なんや。つまらんのう」


 まるで十数年付き添ったコンビネーション。

 とにかく仲が良い、ふたりだけで成立する。

 そんな仲睦まじい雰囲気が漂っていたが我慢ができずにいた。


「なんじゃい、その言いぐさは!」


 付き添っていた下っぱが荒ぶる。

 親愛なるアニキに対して。


「お前は黙っとれ!」 「へい、アニキ!!」


 一連の動作にムダがない。

 いったい、どれほど練習してきたのだろうか。

 ここまでが、いつもの工程(・・)だった。


 黑1色でコーディネートされている。

 増してサングラスを外してーー、いわゆる極道だと。

 痛々しい目蓋からの斜め傷の跡と、幾重にも重なる額の皺はそのキャリアを示していた。


「でーー、何の用だよ」


 いまさら相手するのも面倒臭い、そんな風にも見える。

 遊夜は幼馴染み(・・・・)の彼に告げた。


「ちょっとな、困っとるんや。 聞いてくれる~?」


 正直、面倒臭かった。

 だが、確実に金になると。

 そして、長々と愚痴を聞きつつ。


「……さっさと本題に入れよ、長門(ながと)っち!!」


 長門(ながと)竈門(かまど)

 それが幼馴染みの極道ーー、彼の名前だった。

 対等なのに偉そうに、どっしりとソファーに座る。


「実はな~……」


 そこから先が長かった。

 要領を得ない。


「あれ? 長門(ながと)さん、来てたンだ」


 買い物帰りの日南子に気づくフリもしない。

 それは作戦だったのだろうか。


「アニィ……良いんですかいのう」


 名前すらまだ与えられていない子分の呟きだけが、探偵事務所を通り抜けて。

 裏路地にいた猫が、にゃあにゃあ鳴いていた。

 桜の花びらが散りゆこうとしている


 発情期がまさか、コイツにも来るとは。

 遊夜は『夢探偵』としての職務すら棄てる覚悟で。


 ただ幼馴染みの失態を楽しみにしている、いわば悪友(・・)に成りきってしまっていたのであった。


「ふんふん、なるほどね~」


 解決しようにない。

 遊びだったし。

 ただ、そこから災厄に巻き込まれるとは。

 全く思いも寄らなかった。



「うおい!? 次はお前の番だろ!!」


「ちゃうわ! お前やろがい!!」


 どうやら、夢の中でも仲良しだった。

 その設定が異世界転生などというファンタジー世界だったという。

 かなり予測もつかない、ご都合主義な悪夢のようだった。


 これはいままでにない。

 『夢探偵』とはして、かなりの窮地に立たされていた。


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