惰眠。
いわゆる客観的に見るのが得意だーー、ただ、だからといって。
何もかも感情や、思いやりすら簡単に棄てる。
そんな完璧な非情には、まだ成れずにいたのが唯一の救いだろう。
この特殊な職業に就いてから、失敗したことは数知れない。
だからこそ遊夜は、いつも他人の夢に飛び込むのを躊躇っていた。
生きてゆくためには必要不可欠であったとしても。
金が全てではないーー、生命あってのモノだなと。
事実、自分の身軽さに驚異を覚えていたし。
まず見た目がイケメンだったし、アイドルになればメディアを牛耳ることも容易いだろう。
それほどまでにーー、恵まれていた。
ただ今は、その日暮らしで精一杯になっている。
生活の掛かった助手も食べさせてゆかねばならない。
心配そうに見続けている日南子に、賃金を払わなければ。
拾ったからには、重大な責任が伴ってゆく。
依頼主の夢に飛び込んだ遊夜は。
ひとつずつ、ひとつずつ。
解決する手段を潰していった。
あくまでも他人であるが……じつに色濃い。
依頼主、水城氏の人生に。
その思い出に、深く関わらないように。
…………そして、ようやく辿り着いた。
ひどく五月蝿く鳴り響く教会のもと観客席に混じる。
決してヒロインを奪うような素振りなどは見せずに。
ただ。
如何にして要因を取り除けるのだろうか。
いつも助手から愚痴っぽく言われ続けていた。
あんなにも可愛らしかった表情が一変、鬼となる。
「適当過ぎるんですよッ!!」
仕方ないじゃあないか。
その場しのぎだったのだから。
ごめんなさい、許してください。
どうか、食べないでくださいませんか。
いや、真面目に取り組んではいたのです。
雇用主なのに、平身低頭でいた。
「ううん……どうして、あなたは…………」
いまにも目を覚まそうとしている依頼主の悪夢のなかで。
遊夜はまだ決断を見出だせずにいた。
さっさと片付けようとはしない。
それほど繊細な、特殊な状況であった。
「歪だなぁ…………」
面倒臭くて、ため息しか出ない。
ただ、やらなきゃならない。
これはいつものことだとはいえ、悪夢の元凶に立ち向かう。
それはまるでーー、魔王に立ち向かう勇者のように。
「もう…………、やっちゃって良いかなァ」
正直、面倒臭くなり、やさぐれてしまう。
どうして、こんな道を選んでしまったのかと。
名は体を表すとはいうが、最たる。
夜しか遊べないというのは、ちょっとどうなのよ。
「まだ始まったばかりですよ!!」
たぶん、最後まで付き添ってくれるだろう助手の切なる本気だけが頼りだったのかもしれなかった。
やがて、本気をだす。
自分は『夢探偵』だ。
ーーならば。
「ありがとうございます」
目が覚めたその時には、僅かばかりの報酬を手にしていた。
果たして、それに見合った働きをしていたのかは、まだ定かではない。
不眠症の事件は果たして解決されたのか。
やがて、それは助手や依頼主からの後日談で明らかとなっていった。
夢は、ある程度繰り返します。
そして、続きも見ます。