おしまい。
「アッハハハハハハハ! もっと頂戴♪」
「いや、気持ち悪いしかないから!」
相性が悪いとかしか思えなかった。
悪夢を癒すのが彼の全てなら、彼女の異能は相反する。
ただ、納得できなかった。
「ほぅら、従いなさいな!!」
依頼主の夢のなかに訪れた。
漆黒のボンテージを身に纏う女王様はムチムチな美貌と、限りない色艶をさらけ出していた。
刺のついた鞭を振るう様は妙に板についている。
遊夜はただーー、その激しく打ち付ける威力に酔いしれつつ。
入り雑じった複雑な感情に答えを見出だせずにいる。
宿敵ーー、女王様の執拗な暴行にただ、快楽だけが増してゆく。
「ありがとうございますぅぅぅ!!」
あくまでも夢の中でのひとこまである。
そこに、助手である日南子は関われない。
依頼主である紅葉はまだ、遊夜の寝室兼ーー。
ソファーでまだ安らかに吐息を吐いているぐらいだった。
「さぁ、決着をつけましょうよ~」
隙間から見える。
太ももや、二の腕など。
況してや……、ふくよかなふたつの塊は夢の中であるとしても、燻らされるを否めやしない。
だが、これで終わりにしよう。
遊夜は奥の手を出した。
「往生、せいやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、火柱が迸った。
☞ ☞
「うん、美味しいよ」
珈琲を嗜むのは日常だった。
「エヘヘ~、そうですか?」
助手による毎朝の、いつものやり取り。
レタスとハムによる、絶妙なバランス。
とある伯爵の功績を称えるしかなかった。
サンドイッチは朝食としてじつに相応しかった。
「ずず~う」
少し擽るぐらいで良い。
夥しい活字は眺めるぐらいで良い。
新聞を片手にして遊夜は。
ありふれた日常と異世界の。
その狭間で楽しむ。
しゃきしゃきとした食感がこれまた嬉しかった。
「レタス、ちょっと多めにしてみました……」
決して彼の機嫌を損なわないように。
日南子は遊夜の返答にドキドキを隠せなかった。
「うん、美味しいよ♪」
諄いぐらいが丁度良い。
そんなーー、日常染みた景色にタンポポの綿毛がふわふわと。
暑苦しい、向日葵が咲き誇る。
「邪魔すんで~」
「邪魔すんのやったら帰って~」
また、始まる。
喧しい日常が。
これはーー、心理カウンセラーに成り損ねたカフェイン中毒の探偵による短い物語りだった。
「あ、来てますよ~」
「お、どれどれ~♪」
ポストから取り出して、また新たに紡がれる。
それはまるで、いつものように。
夢探偵ーー、遊夜の1日はまた始まる。
終わることなどは決して、有り得やしなかった。
ほんのちょっとした作品でした。
お付き合いくださり、ありがとうございます。




