彼女は。
通り過ぎる人たちが皆ーー、二度見するぐらい。
突出した美貌があったし、自覚はしていた。
美人というのは、決して良いこと尽くしではない。
寧ろ、高嶺の花として奉られるほどだった。
「どうして誰も……」
それはまだ、ユニーク過ぎる異能力に目覚める前。
会社帰りの商店で彼と出逢ったことが切っ掛けだった。
OLとしての役目を果たして、ようやくタイムセールに見出だす。
そこにはただの貧乏性ーー、独り暮らしという名の切実な現実があった。
1パックだけでは足りない。
いたって小市民だったと、そう思っていた。
「あ、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫ですよ~」
思い切りガツンとぶつかってしまった。
なのに優しかった。 文句などひとつも無かったし。
ただ素敵な殿方だと思ってしまっていたのだった。
……そんな些細な出来事によって彼女の人生の歯車は大きく狂うことになる。
☞ ☞
「これであなたは救われます」
と、銅像を売る。
だが胡散臭い宗教などではない。
ただ確実に呪う。
それが彼女に託された異能力だった。
助手にはマリア様と呼ばれているーー美女。
津久島・ミリア。
彼女はOLを経て、ラスボスとなった。
誰も彼女に逆らえないだろう。
まず彼を虜にするためには邪魔者を廃除するしかない。
夢探偵として活躍している遊夜を取り込むために。
他人を悪夢に貶めるというスキルを活かしていた。
ーーもうすぐ逢えるだろう。
その情熱はまるで燃え盛る業火のようだった。
性欲をもて余すーー、ミリアはただ待ちきれなかった。
「さぁ、おいでなさい」
その一方で、三者面談をしている彼らにはまだその結果などまるで予想もつかなかったことだろう。
ただ遊夜はーー、やがて訪れる最後を犇々と感じ取っていた。
ぷるぷるっ。
鳥肌が止まらない。
春先だというのに。
「どうしたんですか?」
「いや。何でもないよ?」
日南子の心配はもうすぐ現実となる。
それだけは避けたかった。
終わりは近いとーー、確実に勘違いなどではない。
遊夜は覚悟を決めた。




