マリア。
「うふふふふ……」
それは変質者というしかなかった。
ただ、とびっきりの美女でもあった。
漆黒の黒髪は腰まで届く、上から下まで……。
豊満な胸と、括れたウェスト。
見事な果実の如く、まるで桃みたいな臀部から爪先に至るまで。
まさしく現代に甦ったーー、マグダラのマリアみたいに。
それは『罪深い魔女』が水晶球を眺めていた。
「さてどうしましょうか、師匠」
「焦らないのよ? まだじっくり……観察しましょう」
夢探偵という職業があるならば、対する職業もあった。
それはむしろーー、その存在があったからこそ成立していたのではないだろうか。
表向きは疲れきったサラリーマンの憩いの場である。
昼は喫茶店、夜にはbarを営んでいた。
歌舞伎町では有名だったーー『胡蝶』という看板は。
「ママさん、今日もきたよ~♪」
「ねぇ、このあと✕✕しない?」
「ものすごく似合ってるーー、だからさぁ」
賑わっていたその場は、彼女にとってただの食事会でしかなかった。
歌舞伎町の女王蜂が、それらすべてを平らげてゆく。
やがて…………
「あのひとはワタシだけのモノなんだからぁ」
「…………なんか、寒くない?」
「? 暑いぐらいですけど??」
もうすぐやってくるだろう正念場に。
遊夜と日南子は互いの趣味に費やしていた。




