幕開け。
「おい、サブぅ……」
「すんません、アニキぃ……」
たどり着いた結果ーー、原因は身内にあった。
長門が寝静まる頃を見計らって、ピコピコ鳴らす。
サブはかなり重度なゲーマーらしかった。
ふだんはずいぶん我慢していたせいなのかーー、責務から解放されるや否やコントローラーを手にするほど。
とにかくーー、はしゃいでいた。
「イヤホンはなんか、性に合わないんですよねー」
などと後日談では、やたらと偉そうにしていた。
長門が悪夢を見続けていたのは、重度な中毒症。
サブのゲーム依存性によるモノであった。
「お前が毎日ピッピコピッピコ鳴らしてからやんけ!?」
「ほんま、すんまへん!!」
「…………それに捲き込まれた、自分って何なの?」
「あ、遊夜さん。 これ見積りです」
これはあくまでも仕事だ。 遊びじゃあない。
たとえ幼馴染みであったとしてもだ。
助手の日南子から手渡され、遊夜はその金額に納得する。
長門からしてみればまだ余裕だが、じつに微妙な設定金額だった。
高級クラブで楽しみにしていたーー、確保していたボトルが確実に全部失くなってしまうほど痛い。
これはもしかしたら……
「あ~ら、お久しぶりじゃあない♪」
脱毛処理などしていない。
同性とのお遊びでさえ、足を運ぶことは難しくなるだろう。
「おのれ~~~~………………」
「いや、誤魔化されないからな?」
こうして、また1日無駄に過ごした気分ではあったが懐は確実に豊かになっている。
「諭吉さんが一枚、二枚、三枚、四枚……」
「あ、遊夜さん。また届きましたよ~」
「お、どれどれ~♪」
朝、咥えていた歯ブラシを思わず落とした。
冒頭から、それはもうあまりにも地獄だったのである。
これはいままでには無いーー、真剣な依頼であった。




