コワモテ高校生な俺がモテるわけない(仮)
短編です。みなさんの反応がよければ連載するかもしれないです。
俺はどこにでもいる普通の高校2年生だ。
趣味はゲームをしたりライトノベルを読むことと。そんなありふれた俺には、ちょっとだけ、ほんとに数ミリくらい人と違うところがある。
ーーそれは、父親譲りのコワモテフェイスと母親譲りの綺麗な金髪だ。
そんなこんなで入学式から不良だヤクザだの大騒ぎ。俺自身は何もしてないがクラスでは……浮いている。
金髪を黒色に染めたり、みんなに積極的に話しかけていれば、良かったかもしれない。
ただ、そんなことはしたくないしできないのだ。
小中とこんな扱いを受け、コミュニケーション能力は皆無。友達なんて指で数えるほどしかいない。
そんな俺浅黄太陽は、そんな寂しい青春を過ごしているのだ。
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「太陽?どうした 考え事か?」
「いや、なんでもない」
「ボーとして通学するなよ?車の通りが少ない朝だからといってこない訳じゃないからな」
「すまん」
こいつは幼馴染の小早川優一。顔よし、人よし、スポーツよしの完璧超人だ。彼は誰に対しても親切で、クラスで人気者だ。ただ面倒見がいい反面、過保護な所もあったりする。
そんな俺と真逆みたいな人間が、俺に話しかけてくれるのは彼自身が親切なこともあるが、腐れ縁であることもあるだろう。
小中高とずっとクラスが一緒というとんでもない確率を引き続けている。
一体、どんな確率だよ…
まあなんにせよ彼のおかげで毎年話し相手がいなくて困るなんてことはなかった。
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「それでさ〜 ○○がさ〜」
「昨日のアレ見たか?」
「今日の朝ね? 散歩してるときに…」
ガシャ
ガヤガヤと騒がしい教室。その中に優一と俺が入っていく。
「ほ、放課後詳しく話そうかなっ」
「おい、浅黄くんが…」
「じゃ、じゃあそろそろ教室戻るねっ」
コソコソ話しあい、次第に静まり返る教室。みんな俺のことを恐れて喋らなくなる。
今は新学期ということもあってその反応はかなり露骨だった。ただ限度の差はあれど毎年こんなような扱いだ。そんななか優一だけは色眼鏡なく俺と会話をしてくれる。彼は少し困ったような顔で俺にほほ笑みかけるのであった。
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「おーい、みんな今日は転校生を紹介するぞ〜」
やや気だるそうにホームルームを始めるのが山下先生。あと5、6年で定年になるベテラン先生だ。悪い先生ではないのだが、めんどくさがり屋で生徒によく雑用を押し付けている。どうなんだ…それは。
ガラガラッ
クラスに転校生の少女が入ってくる。吸い込まれそうな青い瞳に長いまつ毛。肩までスラリと伸びた銀色の髪がどこか幻想的で浮世離れている。スタイルもとてもいい。どこか著名な彫刻や絵画のような美人だ。
「白河麗香です。趣味は音楽を演奏することで楽器全般できます。 みなさんとは仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
ニコッと笑う少女、白河さんはとても可憐で男女問わず魅了する美しさがあった。
「本来なら席替えで決めるべきなんだろうが、転校生ということもあって席が割り振られてない。何ヶ所か席が空いてるから好きなところに座ってくれ」
田舎な学校であるせいか、クラスいっぱいに生徒がいるわけではない。席にはあまりがあったりする。といっても自由席ではなくなんらかの形で割り振られている。だから不自然なところで席が空いており、いつも休みがいるような気分になる。そんな学校なのだ。うちは。
「じゃあ……ここで」
そういうと彼女は最後尾窓際。つまりは俺の右隣の席を指名した。
「ああ、別に構わない。周りのやつも白河が上手く生活できるようにサポートしてやってくれ」
じゃあ俺は…と素早く教室を離れる山下先生。特に今日は事務連絡もないようだ。
「よろしくお願いしますみなさん」
白河は周囲の人に挨拶をした。
「よろしく!どこから来たの〜? !」
「お、俺橋本! よろしくな白河さん!」
「ええ、お願いします」
クラスメイトに囲まれ一斉に話しかれられる白河さん。男子も女子もドギマギしながら彼女に質問を浴びせたり、自己紹介をしている。もちろんその輪の中には俺はいない。
しかし、近くに人がいてもビビられない経験は滅多になくてイレギュラーな事態ではあるが少し嬉しかった。
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家に帰ると、すでに人影が見えた。靴が乱雑に置かれている。全く…三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。
「みくる〜 靴ぐらい揃えろよ〜」
「うい〜」
いつものように気の抜けた返事が帰ってくる。彼女は茶石未来。俺の親も彼女の親も片親で近所であったため家でも学校でも一緒に行動していた。血縁関係は無いものの未来は俺を兄として慕ってくれているし、俺も実の妹のようにかわいがっている。
リビングに帰ると、ゲームのコントローラーと一緒に体を揺らしながらマリ○カートをしている茶髪の美少女……未来がいた。
茶髪のショートヘアで、頭上には白いチープなカチューシャをしている。パチリとしたかわいらしい瞳をぱちぱちとはためかせ、潤んだ唇をへの字に曲げ、背中に人でも乗れそうな緑色のキャラクターがゴーカートに乗っている様子を射抜かんばかりに見つめている。学校帰りであるため、セーラー服のスカートがアグラ座りの中からチラチラ見えそうで……目に毒だ。
「っかぁー!なによ!少し前まで3位だったじゃない!またレートが下がっちゃうわ!」
人の家でなんとも楽しそうである。
「……ただいま」
「おかえり おにい ジャ〇プは?」
帰ってくるなり週間漫画雑誌を要求する未来。薄情である。
「買ってきてあるから、靴直したら渡すよ」
「ええっ おにい直してきてくれなかったの?」
「自分のなんだから自分で直せ」
「別にやってくれたっていいじゃない!」
「とか言ってるけど、お前のものを勝手に触ると怒るじゃないか」
「それも…そうね」
かわいいかわいい妹分ではあるのだが、少し反抗期に入ってしまったらしい。その一環か、今年から俺と同じ高校に入学するも、俺と一緒に歩くのが嫌らしく別々で学校に向かっている。しょうがないことかもしれないが少し凹む。昔はとても素直でいい子だったのだが…。
ゲーム機の電源を切ろうとしている未来に俺は静止をかける。
「未来様が下げに下げた俺のマ〇カレートを元に戻すからそのままでいいぞ」
「ふっ おにいには無理だよ」
「まあ見とけって」
そして靴を整えたあと、未来は漫画を俺はゲームをして時間を過ごした。未来のツンケンした態度はたまにキズだが、なんだかんだ仲はいい。
ちなみにレートはどんどん下がっていった。未来も俺もゲームを好んでやるのだが、得意ではないのだ。
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白河さんが転校して数週間がたった。はじめ彼女はクラスの雰囲気を掴めていないのか、授業中でもキョロキョロして周囲を伺っていた。
といっても今は5月の半ば。このクラスだって出来てから1ヶ月ちょいしかたっていない。彼女がこの場に馴染むのも時間の問題だろう。
実際、日も経ってくると周りを伺うようなキョロキョロはしなくなっていた。
そのかわり……
ーー俺の方をチラチラと見るようになった。
目が合うとニッコリと笑いかけてくる。何をしていても視線を感じる。自意識過剰かもしれないが、見張られているような感じがする。
実に不可解だ。
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今日は金曜日。放課後になってクラス全体が土日で浮き足立っている。俺とて例外ではなく、明日に控えた休日を楽しみにしていた。
ふと、隣を見ると白河さんがまたもやこちらを覗いていた。
夕焼けの光と彼女はとてもマッチしている。部活をしているやつらはそそくさとクラスを離れるが、俺みたいな帰宅部のやつらはのんびりと帰り支度を進めている。そんなとき、俺は彼女に尋ねた。
「…白河さん」
「はい?」
「俺に、なんかようですか? 視線を感じる時があるんですが」
これまで隣の席にいたが、彼女と会話したのはこれがはじめてだった。
とても緊張する。ただでさえ人と話すのに勇気がいるのに、異性の同級生なんてなおさらだ。
でも、好奇心が勝った。
「用がなければ、見つめちゃダメなんですか?」
「……?」
「白河さん?なんでそんなこと言うんだ?」
「それは……」
伏し目がちに一節おき、言葉を紡ごうとする。
「あなたのことが好きだからで「ちょっと待ったァ!」
とっさに言葉がでていた。こんな人が残っている場所で聞かれたらまずい。真っ白な彼女の細い腕を掴み、人気のない校舎裏まで連れていく。
ははっ、なにやってんだ。人とコミュニケーションをとれないとここまでおかしくなるのか。いきなり女子を引っ張ってここまで連れていくとは誰が予想しただろうか。
だが、人気のない場所で彼女とは話し合う必要があるというのは間違えていなかったと思う。
「どういうことだ?」
「どうか、私とお付き合いして頂けませんか?」
「は?」
誰もが認める美少女、白河麗香は上目遣いで俺をみつめながら、こんなことをしてきた。ただ俺は素直に受け入れ喜ぶことが出来なかった。
「……何が目的だ」
どう考えても不審だろう。俺と白河さんは1度も話したことがない。それなのに告白とは急展開すぎる。
「乙女の告白を無下に扱うんですか?」
言葉とは裏腹にひょうひょうとしている白河さん。
「ああ、そうだ」
しばらく静寂が訪れた。そしてしまいには彼女は観念したように両手を手を広げた。
「浅黄くん。私ってすごく美しいじゃない?」
「まあ…それもそうだな」
「だから男の子にモテるのよ」
「はぁ」
「転校してから3週間で21回も告白されたわ」
……とんでもない数だ。1日1回ペースで告られてるじゃねーか。
「そういった男の子も私に彼氏が出来れば落ち着くでしょ?」
「そうだろうな」
ただ、それはおかしい。
「だったら告白してきたやつと付き合えばいいじゃないか」
わざわざ俺を選ぶ意味がわからない。
「あんな下心丸出しの人達なんかと付き合えるわけないじゃない」
たしかに出会って3週間で人なりが分かるわけもない。あなたの容姿が目的と言っているようなものだろう。
「そしてあなたからは全く下心を感じなかった。だから、私と付き合って。別に週末を拘束したりはしない。行き帰りだけ一緒に登校してくれればいいのよ」
そういうものか。つまり彼女に興味無い俺と付き合うことで安全に男避けをしたいわけだ。
だが、そんなことに俺を巻き込むのはやめてもらいたい。ただでさえ友達がいないのに、悪目立ちしてしまう。
「事情は分かった。だが、他の人を当たってくれ」
「ふーん……断っちゃうんだ。それなら、後悔することになるかもね」
というと、彼女はおもむろにスマホを取り出した。
「であれば。このダークパラディンチャンネルをクラスメイトに広めるしかないわね」
「っっ!?」
ダークパラディンチャンネル、俺が小学生のときハマっていたアニメ、【バルハラの勇者】に出てくる敵キャラホワイトパラディンをもじった名前のチャンネル。投稿者は…俺だ。
小学校のときに若気の至りで動画投稿をしていた時期がある。特に考えなしに人の動画のパクリしかあげてない。幸か不幸かあまりチャンネルは伸びず、インターネット社会でおもちゃにされることもなかった。
すっかり忘れていた。
〈はいちゃーすどうも!ホワイトパラデーンです!〉
「や、やめ」
「メントスを牛乳で食べてみたwwなんて再生回数24回しかないけど、顔見知りがやってたと思うと笑えてくるわ」
「ウィダーインゼリーをさばいてみたwwも何がしたいのか……」「やめろ!」
「ちなみに、今データを非公開にしても動画は全部私のスマホの中にあるし、バックアップもとってあるからね? 」
「悪魔かよ……お前は」
ははっ、と嘲笑う白河。すんげえ腹立つ。
「それで、私と付き合う気にはなったかしら?」
背に腹はかえられぬ……
「分かった。付き合ってやる。お前と付き合えば変なことはしないんだな?」
「付き合ってやる?」
「いや、付き合ってください」
「よろしい。ええ、大事な弱みだもの。安売りはしないわ。それと、あなたはしないだろうけど……」
一拍あけて冷めた目を向ける白河。
「付き合ったからって変な気を起こしても、どうなるかわからないわ。慎重にね?」
「分かった……」
まさか白河さんがこんな性格だなんて…。人の弱みを握って言いなりにさせるとはいい性格してるぜ。
そんなこんなで俺と白河さんは付き合い始めたのであった。
…あと、ダークパラディンチャンネルの動画は全て非公開にした。二次災害は絶対に起こさない。