見えてはいけないもの
俺は昔から霊感が強かった。
皆が見えてないものが見える。見えてはいけないものが見えるのだ。今はサラリーマンをやっているわけだが、仕事中も
「みえる亅ので、仕事に集中できない。
親に相談しても真面目に聞いてやくれない。
学生時代は、俺の霊感が気持ち悪いと周りの奴らにいじめられた。
ある日、出勤するために電車に乗っていた。
少し寝坊した。いつものより1本遅い電車だ。かなり急いでしたくしたから、忘れ物があるかもと持ち物を確認しながら電車に乗った。
その日も、俺は見えてしまった。
俺の前に座ってる老婆に憑依している霊。
つり革にぶら下がっている霊。
窓際で踊っている霊。
おいおい、今日もめっちゃいるな、などと頭の中で独り言をつぶやきながら、スマホをいじっていた時、顔を上げると目の前にいつのまにか霊がいた。
「うわぁっ!!亅
思わず変な声が出た。電車の利用者全員が俺を見た。
恥ずかしい。はたからみたらただのヤバいやつだ。
ペコペコとお辞儀をして再びスマホを見る。
お前のせいだ、と、目の前の霊を睨む。霊が見えるとか言っても信じてはくれないだろうしな。
もう車内の人間は俺を見ていないだろう。と、周りを見渡してみた。すると、一人の少年だけが俺を見ていた。
(なんだあのガキ、俺を見てんのか?)
その少年は隣に座っている母親にこう呟いた。
「ママ、ぼく、みちゃいけないもの、みちゃった…亅
「え?何言ってるの亮ちゃん?亅
驚いた。この少年は、俺を見ていたのではなく俺の目の前の
「見てはいけないもの亅が、見えているのだ。
俺以外に霊が見えるヤツがいるとは、正直驚いた。
少年の母が問いかけた。
「亮ちゃん、何がみえてるの?」
「ごにょごにょ……」
おそらく少年は俺の目の前の霊のことを言ったのだろう。
だが、言ったところで母親はキョトンとなるだけで、
「なにいってるの?そんなもの、みえないわよ?」
と言われるのがオチだ。
っと思っていたのだが少年の母親は、俺の方を見た途端
「…………亮ちゃん、見ちゃダメ。」
と、目を背けた。
なんとこの親子二人とも霊が見えるのか、と驚いていた時、
なぜかその他の周りの人たちも俺の方を見始めた。
(な、なんだ、?)
みんな俺を見ている、っっっ!!まさか、全員「見えて」いるのか?俺の目の前の霊を。
これはどう考えてもおかしい。
周りの人たちの視線は、どこに集まっているのか改めて思考した。よーく見ると皆の視線は何故か自分の下半身に集まっていることがわかった。
(?、俺のズボンになにかついてるのか?……………っっっ!!!)
全てを理解した男は、顔を真っ赤にして下を向いた。
そして、「見えてはいけないもの」が、見えてしまっている
ズボンのファスナーを静かに閉めたのであった。