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悪役令嬢転生物語~魅了能力なんて呪いはいりません!~  作者: 緑乃
第四章 15歳 クラース領編
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42/シナリオへの反抗


 お説教の後、改めて席に座り直した私達は、話し合いを再開した。


 具体的に言うと、彼女が何をどこまで掴んだを聞くために。

 尋ねると、彼女は自室から小さな箱を大事そうに持ってきた。


「私が手に入れたのはこれよ」


 箱の中身には貝殻が入っている。

 いわゆる巻き貝っぽいタイプの形の貝で、これは音を記録し保存する魔法道具らしい。


「再生してもいい?」

「え、えぇ……。でも、ミーナさんは聞かないほうが……」

「何聞かされても別に驚かないわよ」


 許可を得て、再生させると音が響き始めた。

 複数人の男性が話しているようでうち一人はクソ親父だろう。


(内容は……あの誘拐事件についてかな)


 誘拐の流れについて色々と指示を出し、見返りを告げるクソ親父。

 それに応じるように、低姿勢の一人の男。見てもいないのにそりゃもう頭を下げまくってるのが分かる。

 しかし、この声には覚えがあるような。


(誰だったかなー……最近聞いた声の気がするけれど……)


 私が首を傾げていると、横からシルヴィアが「王都の新警備責任者よ」と教えてくれた。

 そういえばパーティで見かけた気がする。


(しかしまぁ、大体私の想像通りの展開だったわね……)


 あの誘拐事件は、やはりクソ親父が黒幕であり、自分の駒を警備責任者に配置するために、私とアンディを生贄にした事件だったようだ。


 ついでに「娘はどうせなら、周囲が同情するくらいボロボロにして殺せ」とか言ってた。

 シルヴィアが私に聞かせたくない気持ちは分からないでもない。


 だが、こちらはそんな事よりもっと確認しなければならないことがある。


「……ねぇ、シルヴィア」

「ショックよね……」

「いや、それはどうでも良いから、これどうやって手に入れたの?」

「ど、どうでも良くはないと思うのだけれど……」


 私の問いに、若干引きながらも彼女は答えてくれる。


 シルヴィア曰く、兄貴の部屋で手に入れたとの事。


 私室に招かれた時に、王子誘拐事件について話題になった事があり、その時に兄貴の視線がほんの少しだけ動いたのが気になったとか。

 そして、視線の先にあったのが――棚に飾られた貝殻の置物。


 それが音楽を奏でる魔法道具だと知っていたシルヴィアは直感的に”何か”があると感じたらしい。


「兄貴の部屋からかっぱらってきたの!?」


 なんて命知らずなんだこの人……っ!!


 恐れ慄いていると、彼女は不思議そうに言う。


「そんな事をしたら流石にバレるでしょ。音声の複製を取っただけよ。

 現物を持ち逃げなんてしないわ」


(いや、不思議なのはこっちだよ。

 兄貴のスペック知ってるのに、どうしてそれがバレてないと思うの?)


 むしろ、これは誘導されたと言ったほうが正しいんじゃなかろうか。


(あの人何考えてんの……?)


 こんなものをシルヴィアに渡してしまえば、我が家の悪事を外に流すことになる。

 結果、我が家が潰れる可能性だって一応あるのだ。


(……兄貴の考えが読めない……)


 この音声データは、国に内乱を起こさせる事が可能な程の危険物。

 王家からすれば、信用出来なくとも我が家を罰する理由に足る。


 そして、そのまま素直に罰せられるようなクソ親父じゃない。

 どう考えても、それくらいなら内乱を――


(――起こさないね)


 クソ親父には内乱を起こす前に情報源を潰すか、これは陰謀だと周囲に納得させられるだけの政治手腕と力がある。

 その結果”なかった事”にされ、原因であるシルヴィアはその後、不慮の事故にでも遭うのだろう。


(……でも、それはそれで変よね)


 一応兄貴はシルヴィアを気に入っていた。

 そしてあの人に、私が想像する流れを想像できないはずがない。


 なら、シルヴィアが死ぬような状況を用意するのも変な話。

 何か他に目的があるのだろうか。


(うーん……。まあ、あの人のことは後にしよう)


 頭を切り替えて、今必要なことを考える。


「ねぇ、この魔法道具を他の人に聞かせた?」

「……貴女が初めてよ。

 正直、私の手には負えないから、お父様に相談しようと考えてたんだけれど、お父様は領地に居るからまだ話せてなくて……」

「なるほど」


 これは貴重な機会ではないだろうか。


 クソ親父を止めるためには、私一人が頑張っても無理だ。


 でも、クラース侯爵家ならば。


 落ち目とはいえ、侯爵家。

 私なんかよりよっぽど、人脈と権力があるはず。


 仲間になってもらい、行動を起こすための力になってもらえるかもしれない。

 私にはエリクくらいしか、一緒に戦ってくれそうな人がいないのだ。


「――それなら直接出向きましょう! すぐにでも!」



* * *



 シルヴィアに提案してから、即座に帰宅し、ダイアンとレナに急な遠出を告げた。

 出来ることなら、安全のために二人共連れて行きたかったけれど、流石に怪しまれるかもしれない。


 ……断腸の思いで、レナだけを供に連れて行く事を決める。


 突然の遠出に使用人の皆は大変驚いた。

 驚いたけれど――困った顔しながら、甲斐甲斐しく準備を進めてくれてる。


(……ここの屋敷の皆も守らないきゃ……)


 私が胸で決意を固めていると、兄貴がひょこっと顔を出して来た。


「慌ただしいね」


(あんたがシルヴィアと私をけしかけたからだよ!!)


 いつも通りの穏やかな笑顔で、何を考えてるか分かりゃしない。

 だが、何かしら考えているのだけは確かだ。――それも、私が望まないような事を。


「シルヴィアに、うちの領地に遊びにこないかと誘われました!

 だから行ってきます!!」


 ギロリと睨んで、私は兄貴へ怒鳴りつけるように言った。



 ミーナ は 兄貴 に 威嚇した!

 レオンハルト は とても 微笑ましそうに 見ている!


* * *


 お読みいただきありがとうございます。

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