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(8)オリエンテーションを終えて(コーヒー番長)

 新入生オリエンテーション終了後、執行部と今日は部の練習がないという秋山さんが生徒自治会室へと入った。


 私が昨年選挙に当選して大村先輩と新執行部を組んだ時、メンバーでお金を出し合ってレギュラーコーヒーを淹れるための湯沸かし用電気ポットと保温ステンレスサーバー、コーヒー豆とペーパーフィルターを常備するようにした。さすがに豆は面倒が過ぎるので挽いてある安い物を買ってきているけどちゃんと淹れるコーヒーは美味しいしカフェや喫茶店で買うよりは安い。飲む人は1杯10円をコーヒー基金の貯金箱に入れてそのお金でコーヒー粉やペーパーフィルターを買うようにしていた。


 ここでまたジャンケン。実は私はジャンケンが嫌い。何故かというと……。


「じゃ、コーヒー番長はミフユちゃんでよろしくお願いします」


 ニコニコと小夜子ちゃんが言ってきた。最後の一騎打ちで私が負けたのだ。


「はい、はい」


 コーヒー番長ジャンケンは何気に一番負け込んでいるのが私だったりする。勝負事は私も得意な方だと思っているんだけど、何故かジャンケンだけはダメ。負けの方が多い。

幸いな事に何故かこの部屋には簡易台所があるので外に出ないで済むのはいいんだけどね。電気ポットに水を注ぎ、ステンレスサーバーの上にペーパーフィルターとホルダーを据えて粉をたっぷり入れてやる。最初にお湯を少し注いで蒸らしてからまんべんなく注いでやるのが秘訣。お母さんのやり方見ているから多分メンバーの中で一番上手いとは思う。


 準備しながらふと会議中に思った事を口にした。


「ねえ、秋山さん。どうして順番決定方法を決めるジャンケンの時の最後の勝負は降りたの?」


 椅子に座って寛いでいた秋山さんはさらりと答えた。


「あ、あれね。だって、本当に勝たなきゃいけない勝負って順番決定戦だよ。クジだろうがあいうえお順だろうが別にそれは受け入れるだけって思ってたけど、ジャンケンは話が別。勝ちたいなら『予選』段階で本気出しちゃダメかなって。バレーボールも勝負事だからね。験を担いだりなんて信じないけど自分が本気で勝負するテンションをどうやって引き出すかは真剣に考えてるから」

「でもジャンケンにならないって思わなかった?」

「平ちゃんも燃えていたから可能性としては低いって思った。絶対勝負事にしたがると思ったし」


 肇くんは面白がった。

「秋山さん、バレーボール部の部長兼女子チーム主将は伊達じゃないな」

「野球部と吹部は順番決定方法に拘りすぎでした。秋山先輩の判断は流石です。勉強になります」

なんて事を言ったのは2年生で副会長の加美洋子ちゃんだった。どれだけ真面目なのよ、この子はって思うけどもうみんな慣れていた。


「なんだか私にコーヒー番長がやたら当たるのは秋山さんの勝負運のせいかなって思えてきたなあ」


 そんな恨み言を言いながらマグカップにコーヒーを注いでみんなに渡していった。何故かこの時みんな、ニコリとして何も言わなかったので裏を疑った方が良い気がしてきた。


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