母亡き後に世界を守る為に
口の中に血の味が広がる。
振り返ると世界各国で名を馳せている兄弟達が倒れていた。
『兄貴、ちとヤバイな。ていうか大分ヤバイな。』
銀髪の青年が膝をつき、息を荒げながら言った。
『・・・ここまで強いなんてね、、、。正直お手上げだよ。』
そう言いながらレイアスは折れた剣を構えている。
『治癒呪文欲しいところだけど、、、ミルもぶっ倒れてるし、、あ、ヤバイ、身体強化呪文効果切れたわ』
レイアスも自身の体から力が抜けていくのを感じる。
『ぐっ、、!!』
ミシミシという音と共にレイアスは首を掴まれ体を持ち上げられた。
『ぐあっ、、、!!!』
力を込められて締め上げられる首。
飛びそうになる意識。
ああ、上には上がいるんだな。
ザリウス家の7人の子供達。これまでこの世界にはただ1人を除いて勝てない存在などなかった。
世界『準』最強の剣士、ランサー、闘士、アーチャー、ウィザード、ヒーラー、サモナー。
7人の兄弟が集えば勝てぬ者などいなかった。
1人1人の戦闘力はとてつもなく高く、国中の武力を集めても届かない極みに達している存在。
七柱の神とも称され、この世界の守護者と言われる存在。
そんな彼等の殆どが死の危機に瀕している。
『キサマラ、ホントウニセカイサイキョウナノカ?』
黒衣に身をまとい、2mはある巨躯から放たれている邪悪なオーラ。突如外界からやってきたその人の様な悪魔は瞬く間に国一つを火の海に変えた。
『タイクツダナ。キタイハズレダ。モウヨイ、シネ』
悪魔はそういう時手に力を込める。
『うああああああああああああああああ』
レイアスは死を覚悟した。
その刹那、レイアスの背後から血にまみれたローブを纏った女の杖から光が放たれる。
『・・・お兄ちゃん、、、間に合ったよ、、、。』
『ミ、ミリアム、、ぐっ』
ミリアムと呼ばれるサモナーは光り輝く杖を地面にコツンと叩いた。眩い光と共に展開される魔法陣。
『フン。マタリュウオウデモショウカンスルノカ?フタタビシカバネ二シテヤロウ』
『・・・屍にされるのはアンタだよ!!!!』
魔法陣から細身の女性、30代ぐらいだろうか。
妖艶な雰囲気を放つ、『エプロン』姿の女性が現れた。
『クハハハハ!!マリョクモソコヲツキトチクルッタカ?
ソンナブキモモタヌニンゲン二ナニガデキル』
首を締め上げられているレイアスが最後の力を振り絞って悪魔に唾を吐いた。
『・・・キメタ。モウスコシイタブルヨテイダッタガ、イマスグコロシテヤル』
悪魔は首を掴んでいる手と反対の手を振り上げ、レイアスの頭に振り下ろした。
血飛沫が辺り一面を赤く染め上げる。
その血を見て悪魔がニヤリと笑う。
だが悪魔の笑みは焦りへと変わっていた。
『ガアアアアアアアアア!!テガ!!テガアアアアア』
血飛沫はレイアスではなく悪魔の右手のものだった。
『キサマアアアア!ナニヲシタ!!!!』
悪魔が睨みつける先には、レイアスを抱きかかえたエプロン姿の女性がいた。
『・・・ヒール』
エプロン姿の女性がそう呟くとレイアスは身体中から痛みや疲れが無くなっていた。
先程まで瀕死だった兄弟達も起き上がっていた。
次の瞬間、エプロン姿の女性はレイアスを兄弟達の方へ放り投げた。
『うおっ!!!?』
レイアスは体制を崩し、地面に突っ伏した。
『ちょっ、何を、、!』
『正座しろっ!!!!!!』
エプロン姿の女性が叫ぶ。
叫び声に大気が大きく振動し、ビリビリと身体を締め付ける。
先程まで瀕死だった7人の兄弟達は青ざめた顔をしながら正座していた。
『ったく、、、お前らだらしない。だらしないね。
本当に!!!!』
悪魔を横目にエプロン姿の女性が正座する7人に告げる。
『今晩はメシ抜きだよっ!!!!!』
怒号に縮こまる英雄達を横目に悪魔が体から巨大な剣を腹部から取り出し、エプロン姿の女性に振りかざした。
『ナニモノカハシランガ、マルゴシテカテルトオモウノカ!!!!!』
振り下ろした剣が命を散らせようとした。
ガキンッと大きな音がした。
『武器ならあるよ。炒飯作ろうとしてたんだけどね。まあ新しいの買うか。』
その女性は腰から取り出したフライパンで悪魔の強靭を受け止めていた。
『!!!!』
悪魔は驚きを隠せない表情を浮かべた。
『さて、まだ餃子を焼かないといけないから、私は帰るよ。』
エプロン姿の女性はフライパンで悪魔を殴った。
突風が吹き荒れ、とてつもない地響きが起き、英雄達を苦しめた悪魔の身体は飛散した。
『母さん、、、俺達結構善戦したと、、』
『言い訳は聞きたくないね!!!!!!!』
ぴしゃりと言い捨て英雄達は背筋が伸びるのを感じた。
『準』では無く、紛れもなく世界最強。
母、アーシャの召喚時間は終わり光となってその姿は消え去った。