ユウタのクリスマスツリー (童話25)
――さむそうだなあ。
ユウタは庭の木を見て思いました。
それは葉っぱをみんな落とし、小枝が風にふるえていたのでした。
――そうだ!
いいことを思いつきました。
もうすぐクリスマス。この木を飾って、クリスマスツリーにしようと考えたのです。
ユウタはさっそく飾り作りにとりかかりました。
まず厚紙に、大好きなミカンを黄色のクレヨンでいっぱい描きました。それからひとつひとつハサミで切りぬいてゆき、最後に長い糸でつなぎました。
できたばかりの紙のミカンを手に、ユウタは葉っぱのない木の前に立ちました。
――お母さん、びっくりするかな?
高い所は背伸びをしながら、小枝の先にミカンのついた糸をかけていきます。
やがて……。
はだかんぼうだった木がミカンのクリスマスツリーになりました。
「まあ、じょうずにできたわね」
お母さんは笑顔でほめてくれました。
その日の夕方。
――おやっ?
仕事から帰ったお父さんは、ミカンのクリスマスツリーに気がつきました。そしてそのとき、ふとあることを思いついたのでした。
――ユウタ、おどろくだろうな。
お父さんはわざわざスーパーまで行って、ミカンをたくさん買ってきました。それから糸についた紙のミカンをはずし、かわりに本物のミカンをつるしてゆきました。
こうして紙のミカンは、食べられる本物のミカンに変わったのでした。
次の日の朝。
ユウタはミカンのクリスマスツリーを見てびっくりです。
すぐにお母さんにたずねました。
「ねえ、どうしてなの?」
「ユウタ、ミカンが大好きでしょ。だから、お願いがサンタさんに届いたのよ」
お母さんが教えてくれました。
――だったら自動車の絵にすればよかったな。
ユウタはとても残念そうです。
今年のクリスマスプレゼントは車のオモチャがほしかったのです。
その夜。
お父さんはつい笑ってしまいました。
ミカンのクリスマスツリーに、なんと自動車の絵がぶら下がっていたのです。
家に入ると、さっそくユウタに教えました。
「木には、車はならないぞ」
「どうして?」
「だって、車は木の実じゃないだろ」
「そうなんだ……」
ユウタはがっかりでした。
翌朝のこと。
お父さんが車に乗ると、ハンドルに自動車の絵がぶら下がっていました。
ユウタはこれで、お願いがサンタに届くと思っているようです。
――ユウタのヤツ……。
お父さんはおもわずニッコリしました。
その日の仕事帰り。
お父さんは自動車のオモチャを買いました。
ユウタへのクリスマスプレゼントです。
明日はクリスマスイブ。
町にはジングルベルの歌が流れていました。