參話〜偶然と必然〜
「えっと、紅羽正文です。趣味は………」
さて、困った。趣味なんて無いのにな。適当に言っておけば良いかな。
「読書です。よろしく。」
読書。本なんか滅多に読まないけど、まあいいや。別に何も困ることは起きないだろう。
さて、次は後ろの女子だな。
「岩蕗聖」
え!? なにかとてつもなくなく冷淡で、無駄の無い音が聞こえた………のかな?
「………趣味は読書。」え!? 思わぬところで、趣味が一致してしまった。
「………年齢は15歳。」
えっと、そりゃそうだろうな。皆タメなのに歳言ってもね(笑)
そういえば、まだ俺は岩蕗さんの顔を見てない事に気付いた。なんか硬直してたみたいだ。恐る恐る後ろを見てみると……………あれ? なんか、綺麗な顔立ちの、少女がちょこん、と座っている。って、いつの間に座ったんだ! そんな物音が聞こえなかったのは、俺に原因があるのか、それとも………。
「………どんな本が好きなの?」
「うぇっ?」
驚きのあまり、裏返りに裏返りを重ねたような、とても文面には著せなさそうな音が、俺の喉から発せられた。気付けば俺は、岩蕗さんのことを、見つめていたようだ。
やばい。なんて答えよう。分からない。誰か有名な人の名前で凌ぐか。出てこい、出てこい。
そして1番初めに、俺の脳から出た名前は………。
「芥川龍之介かな。」これだった。確か中学の現代文でやったような気がする。
「芥川龍之介は私も好き。」