第三十話、どうにかしました
第三十話です
よろしくおねがいします
こちらからの提案に、委員長はややあってから返答してくれた。
「・・・・・・いいわ。それで終わりにしましょう」
「そいつは良かった」
喜ばしいことにこれで手打ちにしてくれるようだ。
「ミゼル、これで問題ないな」
「まあ、そうじゃな。そもそも勝敗は決まっておったのじゃし」
そうしてさあ締めにしようか、というところで邪魔が入る。言わずもがなこの戦いの発端にして彼女の頭の痛い原因、神田橋である。
頭上で飛び交う自分を無視した会話のやりとりにさすがに我慢ならなくなったみたいだ。
「ふざけるな! どうして僕がそんなことをされなくちゃいけないんだ!!」
現状をきちんと把握できていないいかにもこいつらしい発言だ。首を掴む手を離そうとして暴れるので容赦なく電撃を食らわせてやる。まだ、というか発電は密かに継続中だったので蓄電は問題なくできている。
「黙れっていっただろうが」
「ぐっ!? だ、だからなんで」
行動を制限する程度の電流を流したから会話をするのに支障はないが、相変わらず何もわかっちゃいないな。まだそんな口を利けるなんてどういう思考回路してたらできるのか、理解しかねるね。
「いいか馬鹿野郎。お前は負けたんだよ。敗者の責任を果たしてもらおうってだけでそこまで騒ぐなよ」
「ぼ、僕は・・・」
「負けてないとは言わせないぜ?」
認められない現実とやらを突きつけてやるために、俺はこいつの所業を語ってやることに決めた。
「おたくがどんな思いで戦ったか、そんなことを慮るつもりは一切ない。ただ事実だけを言っていこう」
こいつがその称号に相応しくないクズなやつだということを理解させるには、どうしたってそれしかないだろうしな。
「まずはよう・・・」
どうせだ、近くでしっかりと聞いてもらおう。
首元を絞める力を緩めることなく、地面に座り込むこいつの目線に合わせて俺もしゃがみこむ。
「どうしたってあれはねえよな」
「なんのこと」
「不意打ち、したよな?」
覗き込むようにしてその怯える瞳を見つめる。こいつにはさぞ冷たい表情の俺の顔が映っていることだろう。
「あ、あれは」
「ビビっちまったんだろ? 一方的にやられて、もしかしてと思ってしまったんだろ? そこに丁度よく助けが来て・・・思わず」
「違う! ぼ、僕は・・・」
揺れてる揺れてる。こんな簡単に動揺してていいのかよ。別にこれで終わりじゃないんだぜ。
「じゃあそれを委員長に向けて言えるか? あの一撃はそんな意図はなかったとそう言えるのか? 俺にはとてもではないがそうは見えなかったがね」
その言葉に神田橋は委員長の方に顔を向ける。覚束ない視線はそれでも彼女の方を見ている。
そこには斬られた腹を撫でながらまた寒々しい顔になっている委員長が。それを見た神田橋は体をさらに震わしてしまう。
「・・・・・・痛かったのよ、ねぇ?」
「ぼ、僕は・・・僕は・・・・・・」
切羽詰まってしまったのだろう。そこまで追い詰めたつもりはなかったのだが精神的に余り強くないようなこいつにこの状況は厳しかったのだろう。今度はこいつがその胸の内をさらけ出すようにして喚きだした。
「ぼ、僕は悪くない! 僕は勇者なんだ! 世界を守るためにはしかたなかったんだ!」
「・・・・・・呆れた。そんなことができるなんて本気で思っていたの?」
「レイは言ってくれたんだ! 僕こそが勇者に相応しいって! 絹恵だって、僕の力になりたいって、がんばってって・・・だから僕は!!」
しょうもないな、こいつ。ここまできて戦う理由を他人任せにするのか。
「あなたのそういうところが前々から嫌だったのよ」
「僕は正しいことをしているだけだ!」
「そう思っているのはあなただけよ」
「違う!」
「・・・わからない子ね」
頼むわね、と委員長に視線で促されたのでもう一度語りかける。
「じゃあ神田橋。お前がしたことはなんなんだ? あれは正しいことなのか? 庇おうとした蛍川を助けることをしなかったのは何故なんだ? お前が勇者なら、まずは彼女を助けるいじゃないのか? 相手を傷つける必要がどこにある?」
「だって・・・だってあの時は」
「お前の行動はとてもじゃないが勇者とか、正しいとかのものじゃない。あの時お前は確実に負けていた、勝敗は着いていたんだ。そのことを認められないとは言わせないぜ?」
そう耳元で聞かせてやれば、目に見えて震えが増すのだからわかっていない訳ではないのだろうが、こんなやつにもなにかしら認めざるものがあるんだろうか。どうにも認める気配はない。
「ふざけてんじゃねぇぞ」
「な、なんだ脅す気か!?」
「こっちはな、もう勘弁してほしいのよ。このトンでもな事態に巻き込まれて散々なんだ、俺の生活。折角こうして終わってくれると思ってもこれだ。
もうな、終わってんだよ。決着は着いてんの。
それなのにまだやるとかもうさ、ふざけてんじゃねぇぞとしか言えないんだよ」
だからもう、関係ないんだよお前の意思は。
「ここで終わらせてくれよ。そんで帰ってもらおうぜ、魔神の方々によ」
さあ立てや。抵抗なんざするんじゃねぇ。
俺は一発のためのお膳立の役割としておそらく最後であろう、こいつを立たせることで殴り易くすることにした。
「そんじゃ頼んます」
「・・・そうね、もういいわ」
「待ってくれ! こんなことする必要なんてないじゃないか!」
うるせぇ。ここにお前のことを庇ってくれるやつもいないし、止めるような要素は存在しねぇ。いいから黙って殴られとけ。
「正道君」
「た、妙ねぇ・・・よしてくれそんなこと!!」
「今まで私言わなかったことがあるんだけど」
ビビりまくる神田橋に向ける委員長の顔は、これまで見たことがないくらいの満面の笑顔になっていたが、穏やかな印象などまるでなくその内心の感情が透けて見えるようである。
とどのつまりだ。
「いい機会だしここで言わしてもらうわね」
「な、なにを」
「嫌いだったの」
「・・・え?」
そのことがわからないでいたのか、自分のことしか考えていないのだろうことがこうもありありと出せるのがこう、何て言うんだろう。クソみたいだわ。
「いつもいつもあなたのことを、それでも幼馴染みだからと助けてきたわ。でもあなたってそういう私の行いに見向きもしなかったわ」
「でも!」
「でもも何もないわよ! 何が正義の味方ですか! そんなことは高校生になった男が素面でいえるような理想じゃないのよ! そもそもやっていることが厄介事に首を突っ込んで余計なことをして被害を広げているだけじゃない!!」
言い合いとも言えないようなものを繰り広げながらさらにヒートアップしていく委員長の剣幕が恐ろしいものになってしまった。数秒前のあの笑顔がすでに懐かしいぐらいだ。いいからさっさとやってほしいのだがまだ続くのだろうか。
「挙げ句の果てにはこんな・・・・・・こんな大事に関わっているくせにやることがあんな卑怯なことだなんて・・・・・・」
ぐっと言葉を溜めてから、渾身の力を込めていい放つ。
「あなたみたいなやつのことを! 本当の意味で卑怯者と言うのでしょうね!」
その言葉と共に、一気に拳を振り抜いて神田橋の顔面を殴り飛ばした。
神田橋は言葉を呻き声すらあげることなく、再び意識を飛ばされて地面に倒れる。手から離れたそいつのことを見下ろしながら、こうしてこの騒動も終わったのだと思えるのだった。
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