第二十九話、決着の付け方
第二十九話です
よろしくお願いします
俺はここまで、遠慮と配慮を重ねできる限りのことをしてきたと思っている。あくまで自分の範囲でだが。
面倒な事態に巻き込まれても逃げることなくその解決に尽力していたのは、それが解決できる手段と段取りが揃っていたからだ。そうでなければこんな荒唐無稽なことに自分から関わる気など更々ないのだ。そんなものはもう十分過ぎるほど経験して食あたりでも起こしそうな程のだから。
だが、甘かった。
これまでの生ぬるい対応でどうにかできるほど、こいつらが聞き分けがいいはずがなかったのだ。
「というか、全然ダメだな俺」
「いや、いいのか? もう立ち直ってこっちに来よるぞ」
自分の甘さ、迂闊さを思い返しながらいると注意が飛ぶ。どうやら動じた精神を立て直し果敢にもまた仕掛けてくるようだ。
「---仕返しよっ!」
先ほどまでと同じような横振りの一撃が迫ってくるが、もうまともに対応するほどのものでは無くなっている。
「もう見飽きてるんで」
潜り抜けるような形で雑に避けても問題ない。すでにその速度には目が慣れてしまっている。あれだけ自由に振り回していたのだから覚えるのに然程苦労しなかった。
「そい!」
「ぐぅ・・・!?」
ガードの薄い腹に向けて掌底をぶち当てる。九の字に体を曲げて苦悶の声をあげる委員長。まだ終わらんぞ。
衝撃で浮いた体に滑り込むようにして接敵し、今度は着地の瞬間を狙い足を払った。踏ん張りが効かずに倒れそうになるのを無理矢理に支えようとしているが、許さんよそんなこと。
支えにしようとしていた手、足、杖、すべてを邪魔してやり体を地面に叩きつける。反動で跳ねたその脇腹目掛けて思いきり蹴りを入れるが、ギリギリで防がれた。
「っふぐ!」
それでも衝撃を殺しきれるわけではなく、かわりに受けた両腕も跳ね上げられながら距離が離れる。すかさず追撃を仕掛けるも手放していなかった魔剣を使われ、回避のために攻撃の手を一旦止めたがまたもや彼女の雰囲気がおかしくなるのを感じまたか、と呆れてしまう。こうも精神状態がころころと変わるとは、面倒な相手だ。
「---・・・どうしてよ・・・・・・」
「あん?」
なにをするのかと思いきや、そんな言葉が聞こえてきたことに今更感しかない。というかなんのことだ?
体勢を立て直したみたいがまだ杖に体を預けるようにしており戦えるような状態ではないように見える。しかし、伏せた顔に影が差しその表情が見えない。それがなんとも言えない暗さを感じる。
「どうして私のいうことを聞いてくれないの・・・あの子達も・・・あなたも・・・・・・どうして私ばかり!!」
こちらの様子を気にした風もなく、今度は頭を抱えて叫びだす。どうしてもこうしても、俺に関していうならあんたらの尻拭いとやっちまったことに対する責任感からやっているに過ぎない。
あの二人に常識がないのは知らん。
「毎日毎日同じようなことで周りに謝って! どれだけ言い聞かせても全く改善なんてしないくせに! こっちがやれば『いけないことだ』ですって笑わすんじゃないわよ!! あなたたちがやっていることがどれだけ周りに迷惑を掛けているのか理解しようともしていないくせして善人ぶるんじゃない!!!」
口を挟むことじゃないので好きにさせているけど、それは俺じゃなくて本人たちに言ってもらえないですかね。
「いつもそう! 小さい頃からいつだってそうだった! なんで私があんな子たちの面倒を見なくちゃいけないのよ!? なんで私のせいにされなきゃいけないのよ!? 悪いのはあいつらじゃない!!」
よっぽど貯まってたんだろうな。鬱憤が出るわ出るわ。折角やる気に満ちていたのにこの状態の相手に襲いかかるのってどうなんだろうって思ってしまう。
「なあ委員長」
でも、これは問題解決の糸口だ。委員長のこの負の感情をどうにか発散させてしまえば一応の納得を持ってこの騒動に決着をつけられる可能性がある。
なにより、こっちを窺ってるあの野郎がうぜぇ。
「そういうの本人に言ってくんない?」
途中で気づいたが、もう意識が戻っているくせにこちらに出てこようとしてこない神田橋。もう勇者だとかは関係なく情けないと思わんのかね。
指し示した方向でうつ伏せになりながらこちらの様子を除き見ていた野郎に気がついたのか、委員長は感情の猛りを押さえることなく恐ろしい形相で睨み付ける。
視線が向いていることに気づいたのか、途端に逃げ出そうとするやつ。まあ、逃がすわけはないので。
「よう」
「ひぃ!?」
ちょっと本気を出していきなり目の前に登場してやれば、あまりの驚きにちょっとお見せできないくらいに顔がぐちゃぐちゃだ。
後ずさりまでして逃げようとするので首根っこ掴んで引きずってでも連れていってやる。
さあ、清算しようや。
抵抗とは言えないような抵抗を受けたが特に問題はなかったのでそのまま引きずり移動して、ご対面といったところか。
二人は対照的な態度で相対した。
「た、妙ねぇ・・・・・・」
視線を向けては逸らすことを何度も行い、まともに相手を見られない神田橋。
「正道君・・・・・・」
真っ直ぐに神田橋を見つめている委員長は、先ほどまでの荒れようが嘘かと思うほどの真剣な面持ちで対峙している。
この二人の関係がここまでいらんことさしたのはもう頭に来るほどわかっているので、もうここでその因縁を解消してもらおう。
「委員長」
「・・・・・・なに?」
俺の言葉に反応しても、視線はそのままでいる彼女。そのまま会話を続ける。
「散々あんたの行動に付き合って、まあまだ暴れたりんというなら俺もまだやるつもりでいる。だけど、その原因が解決しない限りあんたの鬱憤は完璧には晴れないというならだ。ここで解決してもらいたい」
「な、なにをいって」
「黙ってろダボが」
口を挟むなド三品が。てめぇのせいでここまでなっている時点で同情なんざ欠片も存在しないんだよ。
俺は低い声を出し脅すような感じでこのバカの発言を絶つ。
それにまた怯えるような表情と声を出す神田橋。あの自信に満ちた姿からは想像できないほど怯えようだ。
「こいつを差し出す。条件付きでな」
「はぁあああ! なにを」
「黙れ」
俺のこの発言に委員長は大きな反応を返すことはない。それでも静かに返答を返してくる。
「どういうことかしら」
まあ、説明はしますよ。
「俺の目標としてはこれ以上、こんなことを続けることをしたくないわけよ。最初の段階であんたがこの戦いの勝者であることは明確だ。そこをどうこうして変えるわけにはいかないと思ってる。そこでだ、仕切り直しというわけじゃないがこの負け犬野郎にきちんとケリつけて終わりにしようというわけだ」
その提案に対しまた騒ぐが睨みを効かせて黙らせ、委員長からの返答を待つ。
提案した内容について思案しているのか、少し考え込む仕草をしている。どう出るだろうか。
「・・・条件があるといったわね」
「ああ、俺だって鬼じゃない。別にこいつがどうなろうと知ったことじゃないが殺しまでさせるほどでもないと思う。
だから一撃。
殺しはなしの一撃だけで、どうにか気を収めてはくれないか」
今までの彼女の生活で、どれほどの思いをしてきたかは俺に分かるものではない。それでもこれでそれが晴れるなら、最善手ではないかと考えている。
後はそれを受け入れてくれるかだが、どうなるかね。
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