第二十八話、かくも自在なりけり
第二十八話です
よろしくお願いします
遠慮なくぶっ飛ばせる相手が見つかり、今までしてきた手加減をやめて思いっきり彼女に襲いかかる。
「おっらぁあぁああ!!!」
「ちょ、ちょっとまっ!?」
思わずといった感じで制止を呼び掛けてくるが、そんなものが今さら効くはずもなく無意味とばかりに切り捨てられる。
立場が逆転したように、俺が攻め彼女が守るといった形に戦況が変わる。
「あ、あなたこんなに強かったの!?」
「しゃあぁおらぁあああ!!!」
上下左右からどんどんと攻撃を繰り出し、相手に反撃の隙を与えない。爺とやりあうなかで学んだ制圧方法の一つだ。
「っこの!」
それでも対応してくるのが早く、弾いた魔剣の軌道を無理矢理変えて足を払ってくる。
「甘いわ!」
それに対応するように、こちらは棒高跳びをするように彼女の頭上を飛び越える。
我流、自在天。
名前ほど自由にという訳ではないが、相手の意表を突いたり単純に回避したりとなかなか使える技だ。
ついでに頭に一撃食らわそうとしたが上手く交わされてしまう。さすがに無理か。
反対方向に着地して、今度は刺突を繰り出す。線から点の攻撃の対処に、彼女も応じるのが難しそうだ。
「っせいや!」
「!?っくう!」
上中下、と高速三段突きを放つが掠り当たり程度で有効打とはならない。反応速度がいいんだろう。明らかに見てから動いているふしがある。
「防戦一方じゃないの! さっきまでの威勢はどうした!!」
「言わせておけば!」
こちらの挑発に簡単に反応し、勢いに任せた横振りの一撃が放たれる。カウンターをしてくれと言っているようなその一振りに、少し遊んでやることにした。
「あらよっと」
「っうそ!?」
首裏を通し肩に担ぐようにした棒を両手に持つようにして構え、大道芸みたく大袈裟に交わしてやる。さらにそこから身体を回転させながら相手の間合いを無遠慮に詰めていく。
我流、虜囚乱歩。
カンフー映画を見ながら会得したこの技は、自由度で言えば著しく落ちるが、かわりにすごく対応しずらい。棒の間合いが一気に縮まり、徒手空拳のような位置から放たれる攻撃は普通の棒術とはまた違ったリズムを刻むのだ。正直蹴ったほうが早いが、だからこそ無意味に訳が分からん事態になるのだ。
そのまま回転を加速させ、この中途半端な距離から攻めるのをやめない構えである。
「ああもう!!」
鬱陶しかったのであろう。苛立たしげな声をあげ、仕切り直すように大きく距離をあけるため、後方に飛んだ。
こちらも構えを解き、遠くにいった彼女に視線を向ける。
「いやぁ楽しいねぇ」
「いや、正直ドン引きするような戦い方なんじゃが」
どうやら相方はお気に召さないようだが、それはそうだ。身に付けたとはいえ別に見映えを意識したことなどないに等しい。正直これみたいに実用性が低い技だっていくらでもあるのだ。
「どこでこんなもん習ったんじゃ?」
「習った訳じゃなくてだな。爺とやりあってるなかで自然とこうなったんだよ」
あの懐かしい過去に思いを馳せしばし思考をそれの集中させた。そう、あれは俺が小学生の時にまで遡る。
◾
俺の両親は仕事の都合上、いろいろな土地を転々とする生活をしていたのだ。
そうなれば必然的に人間関係を再構築するのに疲れ、孤立し、そして虐めの対象になるのに時間は掛からなかった。当時はまだまだひ弱はガキだった俺は集団で囲んでくる悪ガキどもに抵抗するなんてできず、暗い少年時代を送っていたものだ。
そんな生活を送るなか沈んでいく気持ちを紛らわせるため、悪ガキどもが出現しない地域に散策に出ていくことがなかば趣味となっていた。
そこで出会ったのが、俺の人生を全くよくないほうにねじ曲げた人物。
爺である。
名前はけして明かさずただ爺とだけ呼ばせ、身の上話をした結果地獄の乱取りがなんの脈絡もなく始まったのだ。
おびただしい傷が刻まれたのだが、加減が上手いのかギリギリ動けるくらいに調整された状態にされること数日。この経験を積んだ俺にはもう悪ガキは脅威ではなくなり、数で囲まれても鼻で笑えるくらいにはなれた。
そうしたらあいつら、なにを考えたのか自分達の兄やその仲間の中学生やらを呼んできたのだ。
さすがにこれには手を出さざるを得ず、辺り一帯に屍の群れを量産する事態になってしまった。当時はここまでの力を身に付けたことに対する興奮しかなかったが、さらに事態は大きくなっていく。
やつらはさらに仲間を呼び、ついに高校生が出張ることになってしまったのだ。
後で知ったことだが、この土地は治安が悪いほうらしく不良となるような人間の巣窟となるほど腐ったやつらのオンパレードであったらしいのだ。
そんな中に現れた明らかな異物である俺は格好の獲物であり、それが反逆してきたものだから彼らのおよそ理解不可能なプライドとやらがズタズタにされたというわけである。
そこから始まる血で血を洗うような戦争が巻き起こったのである。
激化する襲撃に抵抗するため、爺から技術を盗み、時に編み出しては叩き潰され、さらに上手く使われ、それを盗んでを繰り返し不良相手に練習がてら撃退をする日々。
相手もただではやられず、幹部と思われるやつらが来襲しては死闘を繰り広げる。子供相手にどこまで本気なんだと言いたくなるくらいガチで襲いかかってくるが、爺と比べて脅威度は低くなってしまうのでなんとか対処はできる。
そうやって騒ぎが起これば当然その渦中の俺に注目が集まるのは必然というべきか、さらに面倒な事態に発展したのである。
一年という長い闘争の結果、俺は不良連合との不可侵条約を結ぶことができたのだが、今度は俺の噂を聞き付けた別の勢力が来てしまったのだ。
始まりは見かけない連中が町で悪さをしているのを目の前で見てしまい、突っかかってこられ、それがまあなんとも胸くそ悪いことだったので適度にボコしたら、どうやらそいつらは俺を探してきたといううではないか。
事情を詳しく聞けばこいつらも不良の一種であり、格闘技系の団体に所属しているらしい。ワルのつてで情報が伝わり、この町の不良が倒せなかった相手をシメて名をあげてやろうという魂胆らしかった。
そして始まる第二次不良大戦。
今度の敵は数段上の相手である。爺のしごきも苛烈さを極め、どのような繋がりか、別口の老人まで参加してボコられることに。
そのお陰か刃物にも耐性が付き、ナイフなどでは怯えなくなるほどの胆力を得ることになった。
一つの団体をぶっ飛ばせばまた別の団体が現れ、さらにぶっ飛ばせばまた別のといった無限とも言えるような戦いの中、それでも勝利を重ね、実に二年の歳月を掛け、俺は平穏な暮らしを手にいれたのだった。
この経験から、あまり力をひけらかすのは面倒しか起きないことを学び、騒ぎと騒音が大の苦手になった。
その平穏も長くは続かず、またもや両親の仕事の都合でその町を去ることになり、すでに中学生になっていた俺は友達なんていない土地の生活で完全に萎え果てていたのだった。
それから今の高校に進学し、このような事態に巻き込まれているのであった。
◾
「---最早呪いとしか思えん」
「なんのことじゃ?」
俺の人生だよバカ野郎。
どうしてこう争い事が絶えないんだ。あれか、負の連鎖ってやつか? こっちは頼んだ覚えなんてないんだよふざけんじゃねぇ!
「絶対に解決してくれるわ!」
「おぬしこの短い間になにがあったというんじゃ」
ミゼルの言葉は耳に入らず、俺は視線の先の委員長が体勢を整えこちらに駆けてくるのを視認して迎撃の構えをとった。
さあ、現実と戦おう。
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