第二十七話、双方吹っ切れ
第二十七話です
展開に悩んだ結果このような時間の投稿になりました
申し訳ありません
戦闘再開を一方的に宣言し、魔杖をまた剣の形状に変え切りかかってくる委員長。おそらく魔力の残量を気にしてのことだろう。魔弾を放つようなことはせず、直接的な攻撃を仕掛けてきた。魔神モーンはその動きに反応してかすでに消えている。
「気になってたことがまだあるんだけど。あなたのその動き、やっぱりなにかやってるんでしょ?」
杖の先に刃が付いているため、リーチはあちらの方が長く殺傷力もまた高い。遠心力を上手く使った一振りは風を切り裂いてこちらに迫る。
「ちょっと棒振りが得意なだけだよ」
結合させた警棒を使い、逸らすようにして軌道を変える。回復がしっかり効いているのか先程まであった身体の不調も緩和している。これならなんとかなりそうだ。
「あら、まだ誤魔化すの? 別に減るもんじゃないんだし話してくれていいじゃない」
「手の内見せていいことあるか?」
「そういう人の秘密って暴きたくなるわよね」
振り斬りに突きが混じりだした。脅しのつもりなのかね。まあ対処は簡単だけど。
魔王の補助があっても所詮は素人。攻撃の繋ぎが甘く分かりやすい。フェイントも拙く、これでは意味がない。
「ズルいわ日駆君。あんなに私のこと話したのに・・・ねえ聞かせてよあなたのこと」
魔王の装束で戦う委員長の姿はいつもと比べて目に毒レベルだ。そんな姿で媚びるような視線を浴びせられて正直やりずらい。戦意を削がれる。そのくせ殺気はビンビンに飛ばして来やがる。うぜぇ。
「じゃあこの危ないもんしまってくれない?」
「い・や♥」
勘弁してくれ。
「本当に聞く気あんのか?」
「本気よぅ。あなたのこと、もっと知りたいの」
そういいながらも首に向けての刺突が繰り出される。軽く交わしてみせるが、どうにもチグハグな行動が気に障る。
「ミゼル。あれってなんかの影響なのか?」
「いや。そのようなものではなくおそらく理性のたがが壊れておるのじゃろう」
「なんで?」
「はっちゃけたいんじゃないのかの?」
迷惑千万でしかないですけど。
暴力の快感に酔っぱらってやることがこれですかい。
「・・・なあ委員長」
「あら、話す気になった?」
ぐだぐだやりあっても埒があかない。なら、さっさと本気になってもらったほうがいい。
そうじゃないと、こっちもやりにくい。
「はっきりいって、あんたじゃ俺を倒せんと思うわけだ」
「・・・根拠があるのかしら」
お互いに手を止め、距離を取りながら話を続ける。
「だってよぉ・・・ここまで俺に攻撃当たってないじゃん」
身体のダメージって自滅と拘束されたときくらいのもので、さっきから全く刃が届いていないのだ。この状態では正直いくらでも捌けるのだが、そんな時間を掛けるつもりはさらさらない。
「だからさ、本気で来いよ」
「・・・一応本気でやってるつもりなんですけど」
「冗談だろ」
わかってないのなら理解させてやるさ。
それじゃあ、俺がそう思った根拠を説明していこう。
「まず・・・あんたが冷静じゃないってことを言わせていただこう」
「それがどうかしたのかしら」
「ブレブレなんだよ、行動がよ」
話をしたかと思えば戦いだしたり、かと思えばとてもではないが戦う態度ではなかったり。
「とどのつまり真剣さがないわけよ」
聞きたいもんだなぁ、その内心を。
「あんたが本当にやる気ならもっと行動に一貫性があるはずだ。言っておくがそんなあんたじゃ俺だってやる気になりゃしない」
こいよ。本気で。
「・・・言ってくれるわね」
こちらの説明に顔を伏せるようにして視線を見せないようにしている委員長。
「こっちが遠慮して優しく倒してあげようと思ってたのに、それを無下にするんだったら・・・」
おお、怖。向けてくる視線のその殺気のよ。今までの比ではないほどの冷たさだ。
「いいわ。本当に本当の本気でやってあげる。容赦も何もなく傷つけてあげる!」
そういうや否や、地面を滑るような跳躍を行いこちらに襲いかかってくる。魔剣の軌道も一歩踏み込んできていて確実に殺すことができるだろう。
「そうこなくちゃ」
このくらいの殺意をぶつけてくれなくちゃ、やっぱり戦ってるって感じがしないもんだ。対勇者戦はお遊戯みたいなもんだ。
試しに受け流すことなく諸に警棒をぶつけてみれば、こちらが若干打ち負けるほどの威力。手に伝わる衝撃が懐かしい。
「そうそうそんな感じだ! もっとこいよ!!」
「っなめるな!!」
余裕を示すこちらの態度にさらに怒りのボルテージを上げていく委員長。苛烈になっていく攻撃に付き合うようにどんどんと速度を増してぶつかり合う。
「足りねぇな! もっとだっていってんだろうが!!」
「・・・っ馬鹿にしてぇぇええ!!!」
咆哮に比例するようにさらに威力があがった一撃。こちらも渾身の力を込めて鉄棒を振るうが僅かな抵抗ができたばかりで吹き飛ばされてしまう。
なんとか足の方から落ちることができたが、それからさらに後ろにズリさがってしまう。それでやっと停止することができた。
「っはぁ・・・はぁっ・・・どうよっ!」
大口叩いた俺を後退させたことがよほど嬉しいのだろう。どや顔でこちらを見てはいるが息がかなり荒れている。
まあ、ここまで意識を集中させれば他のことを気にする余裕はないだろう。俺のことを気にしなくなってもらうこともできたわけだ。
「おいおい意気ってんじゃねぇぜ? まだまだ余裕なんだよ」
でもこれなら別にいいだろう。ここまでできる相手になら、隠すこともないだろ。
俺は初めて構えをとった。それは今まで誰にも見せたことがないものだ。
「だが今の一撃は素晴らしかった。素直に褒めたい気分だ」
「え、あっそんな」
「だから」
なんだか慌てたような態度をとる彼女だが、次の俺の発言と顔を見て、一気にその表情を固まらせた。
おそらく彼女に見えている俺の顔は、いつもの俺ではないだろう。爺にも言われたが本気で戦うと決めたときの俺の顔は見れたもんじゃなくなるらしい。自分では見たことがなかったし、爺以外にも見せたことはないためどうなるかと思ったが、そうかそういう反応されるぐらいの顔をしてんのか。
「俺も本気でいくよ。そっちが言った通り経験があるもんでどう判断するべきか悩んだが、このくらいの実力を示してくれたんなら構わないだろうしな」
最初はあの対戦を見てあまりやる気はなかったが、もういいだろう。正直いってうだうだと、ここまで穏便にできるように動いてきたつもりだが横やりが入りそれが崩れ、やり過ぎをとめようとして振り出しに戻り。
確かに仕事をできなかった俺の責任もあるだろう。でもな、だからっていつまでも付き合ってられるほど心が広い訳でもなければ時間があるわけでもない。
日常を取り戻すために容赦をしないことを決めたときのことを思い返しながら、戦意を高ぶらせていく。
「我流なもんでな。手加減はしないつもりなんでよろしく」
ずっと爺とど突き合うだけの鍛練だったからな。他の相手にどこまでやっていいかも懸念していたところなんだが、この人頑丈そうだし大丈夫だろ。
「あの・・・私もう十分かなって」
「楽しんでいってくれよ」
これが俺の暴力だ。とくと見ていって体験してくれ。
今更ながらにビビり出した委員長に向かって、俺は躍りかかった。
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