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第二十三話、場違いな配役

第二十三話です

ようやく主人公が戦います

ここまで長かった



 魔王様の最初の攻撃は、その大きな身体を支えるそれまた大きな四肢をダイナミックに使ったものだった。

 

 簡単に言えば踏みつけ(ストンピング)である。

 

「普通に勘弁!!」

 

 頭上から迫るその攻撃とも言えないただの歩行が、恐ろしいほどの脅威となって近づいてくる。強化された脚力を駆使して全速力でその範囲から逃走する。

 

「お前邪魔!!」

 

 構えたはいいが出しどころを間違えた警棒は腕の装具に納め、フェンスにめり込んでいる勇者神田橋を回収し、避難した先で思いっきりぶん投げてやる。さあお行き。

 直後に魔王のおみ足が叩きつけられ、その衝撃に煽られた結果想定以上の飛距離を見せる弾丸男神田橋。あいつこの短い間にだいぶ異名がついたな。

 

「飛ばされるのじゃーーー!!」

「捕まってろ!!」

 

 もちろん俺達にもその衝撃、暴風は叩きつけられるわけで、どえらい勢いで身体を押しやられる。

 改めて出した警棒を勢いよく地面に突き刺し、なんとか支えにすることで流されるのに抗うがさすがに持っていかれそうになる。

 

「ぐっ・・・!」

 

 いくら強化されていようがきついものはきつい。腕の震えがヤバイ感じだ。首筋にすがり付くミゼルがいい感じに血管を締め付けているのも嬉しくないぜ。

 

 ほどなくして風が収まりこの苦しみから解放される。もちろんこの程度魔王閣下からしたら準備運動ですらなく、早速次の脚が繰り出される。

 

「小規模展開」


 そんなことに付き合う気はないので、取り込んだ自転車の車輪を小型化させたものを脚の装具から展開し、全力で駆動させる。

 地面を若干削るようにしてその場から退避し、魔王の側面に移動する。

 

「あれってどういう状態なんだ?」

「暴走ではないがちと不味いの」

 

 移動しながら対処の仕方を探るため、ミゼルから情報を聞き出そうとするがなにやら不穏な感じの返答をいただく。

 距離を広げようとするが一歩がでかい魔王との位置関係は縮まるほうが早いだろう。もうこっち向いてやがる。

 

「あの巨体については魔力で編まれたものじゃ。じゃがその魔力を契約者から無理に絞り出して賄っておる」

「ああそういうこと」

 

 そいつはえらいこった。

 

「詳しく」

「最悪死ぬ」

「了解」

 

 どうすんだよ。あんなデカ物ぶっ飛ばせるわけないじゃんか。こんなところで自滅っぽいことしなくたっていいじゃんよ。

 さらにあちらさん、どうにもさっきの戦いで撃っていたような魔弾をいくつも展開してやがる。倍プッシュですかこの野郎。

 

「弱点とかないのかよ?」

「契約の紋様をどうにかするしか・・・」

「頭吹っ飛ばせってか」

 

 無理(確信)。

 

「傷つけるくらいでよい。あの交差する中央のところじゃ」

 

 おう難易度下がったな。

 でもだからってできるかどうかってわけじゃないと思うんだわ。

 あの高い位置にある顔までどう飛ぶのか、おそらくもう来るであろう魔弾の群れをどうするのか。そこらへんの問題があるわけだよ。

 

「来るぞ、行けい」

「ブッコむぜー」

 

 でも相方が容赦ないので僕は行きます。こいつのほうが魔王やんけ。俺は体勢を低くしてできる限り的を小さくしながら魔王に突撃する。

 

『愚かな』

 

 それに対し魔王は出現させていた無数の魔弾を次々と撃ち出してくる。ああもうやめろよな結構複雑に軌道曲げやがって避けにくいだろうが。

 

「ぬおっ!?このっ!?」

「どんどん来るぞ!」

 

 わかってんだよ集中させてお願いだから。縦横無尽に迫る魔弾の嵐を左に右に、時には減速したりしてギリギリのところで交わし、魔王との距離を詰める。はっきりとその額に刻まれた紋様を視界に入れながら、そこに行くための方法に思考を巡らせる。

 

 問題は高さだ。

 

 魔弾をどうにかしたってあそこまで攻撃を届かせなきゃ意味がないのだ。現状あの高さまで届くような攻撃手段はこちらにはない。じゃあどうする。俺はこうする。

 

「加速」

『なに!?』 

 

 目標までほぼ一直線の位置取り、周りにはまだ魔弾があるが目の前を遮るものはない。相手の虚を突くような形で前に突進することで邪魔な魔弾を置いてけぼりにする。

 さらに俺は両手の警棒を一つの長い鉄棒に結合する。元は別物でも今は素材を同じくするファンタジックな物体。自在に形を変えることは簡単なんだよ。

 

 そしてこれを---

 

「---どっせい!!」

 

 目の前の地面に突き刺し勢いを変化させる。前から上方向に。

 

『なんだと!?』

 

 この動きには魔王も驚いたのか、反応が遅れ俺の接近を許す。そりゃ特に対策無さそうな奴が特効かましたら驚きますわ。

 で、だ。

 

「距離足らんぞこれ」

 

 こっちも焦った部分がありこのままでは失速して手前で落ちる。長打に調度いいくらいの高さになるだろう。相手もその事に気づいたのか、迎撃の姿勢を取っている。

 

『落ちろカトンボ!』


 光線を出します感に溢れる口内の光。あれで俺たちを消し飛ばすつもりらしい。あの感じから言って十分過ぎるくらいにオーバーキルだ。しかし、全く困ったもんだ。お母さんに習わなかったのか?

 

「手ぇ使えや」

 

 鉄砲で虫を殺すヤツはいねぇんだよ。

 

 俺はその光線が発射されるタイミングで手に持った鉄棒を変形させ、パラソルのような大きな傘にする。それによって減速するとともに、光線の打点から外れ通りすぎるそれの風圧を使ってさらに前に進んだ。

 これによって懸念していた飛距離の問題は解決され、俺は無事に魔王の頭部にたどり着いた。

 

「よっこいせっとぉ!!」

「よくやった!!」

 

 硬質的な感触の毛髪に飛び込んで落下の衝撃を転がっていなし、すぐさま額の方に跳ぶ。鉄棒の展開していた部分をもとに戻し、移動の邪魔にならないように装具に収納する。

 さすがの魔王もこの位置では手を出せず頭を振り回してこちらを落とそうとしてくるが、そう簡単にいくもんですかってんだ。絶対に落ちてはやらんね!

 

「往生せいや!」

『ええい離れよ!!!』

 

 ブンブンと風を切る音がしてよほどの速度で振り回されているのが分かる。それでも髪の毛をガッチリ掴んで少しづつ前に進んでいく。

 

『これでどうだ!!』

 

 後少しで額のところまで届くといった距離まで行けたと思えば、今度はその髪が動き出し、こちらの身体を縛り上げていく。支えがそれしかないこっちには致命的な対応だ。

 

「やばいやばいやばいやばい!!!」

「お、おい!? どうするのじゃ!?」

 

 いや本当にどうすんだこれ!? 全身ガチガチに固められて全く動けねぇ! 力で解決できる算段がこれっぽっちも思い浮かばん!

 

『手こずらせたなミゼルの契約者。だがこれで終わりだ!』

 

 それを合図にさらに拘束の力を増加させる。このまま俺を縛り殺すつもりなんだろう。

 

「・・・う・・・おぉ・・・お・・・・・・!?」

「これ、しっかりせんか!?」

 

 精一杯の力を全身に込め拘束する力に抵抗するが、相手はさらに拘束の手を増やしこちらだ潰れるのは時間の問題になっている。

 

「(どうする? あの人ならこの状況どうする!?)」

 

 脳裏によぎるのは俺をこんな性格にした人生の大先輩。俺の夢に出てきたあの爺さんだ。こんな事態になってもほとんど揺るがない精神はあの人のせいで培われたものだ。

 その経験から考えろ。あの爺はなんて言ってた・・・・・・。

 こういう時は・・・こういう時は・・・・・・---

 

 

「---相手の・・・予想を越えること!!」

 

 

 拘束されても動かせる場所がまだある!

 

「両腕同時展開! 全力でタービン廻せぇええ!!!」

「こ、これか!?」

 

 身体は動かなくても装具への縛りは甘い! 警戒したのか分からんがここに活路がある!

 取り込んでいた機材のなかにはさっきのパラソルみたいに単純な金属じゃないものもある。物性を獲得するという特性上、魔力を補給するということでなければ別になんだって取り込める。

 というのであれば。

 

 

「科学なめんなよこらぁあああああ!!!」

 

 

 手回し発電機の機構を取り込み、それを再現することだって可能! 都合四つの小型発電機を自動で回し、人力のそれで大量の電気を起こすことだって可能!

 充電式電磁警棒の蓄電機能は『忌鋼』の特性上全体で行うことも可能!!

 

 ぎゅるぎゅると回転音を響かせて電気を作り出す腕部からは、電流が溢れるようにして光を放つ。その異様な雰囲気を感じた魔王は今度こそ装具に髪を伸ばす。

 

「遅いわ馬鹿め!!!」

 

 ミゼルから合図がありフル充電が完了したことがわかった。さあ見せてやろう、文明の光と言うものを!

 

「食らえや!!!!」

 

 

 ---『雷業らいごう』---

 

 

 その瞬間。

 俺の脚部、腕部から暴れるような勢いで電光が辺りを包み、音が消えた。

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