表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/31

第二十二話、いろんな意味で選手交代

第二十二話です

よろしくお願いします

 

 勝敗が着いた。

 

 

 遠目から見てもそういえるほど、決定的な構図を描いている二人。

 地面に身を投げ出している勇者に、魔王がその杖を突きつけ身動きをさせないようにしている。少しでも動こうものなら追撃を食らわせることを言外に語っているようだ。

 

「終わったか」

「そうじゃな」

 

 あとは俺たちが戦いの終了を告げて、勝利者である魔王と交渉して元の世界に帰っていただくことが出来れば俺の望みは叶えられるわけだ。

 

 そう、思ってたんだが。

 

「---正道!!」

 

 声が聞こえた時にはその存在が魔王の近くにいるのに気づいたと同時で。いったいいつの間に? なんて疑問が浮かんではいたが、勝敗には関わらないという油断が、起こってはならないことを起こしてしまった。

 

 その光景が目の前の現実だということを認めるのに思考を使っていて、瞬く間に変わった魔王の雰囲気に反応できなかった。

 

 

 蛍川のまさかの行動。

 神田橋の方に行くかと思いきや、魔王に抱きつき。

 振りほどいた魔王の意識が逸れた瞬間、神田橋はまだ近くに落ちていた聖剣を拾い上げ、彼女の腹部を下から切り裂いた。

 

 

「---は?」

 

 ようやくそれを現実だと認識し、それでも混乱してしまう。

 

 『魔王の体からなんで血が出ているのか?』

 

 そりゃ戦えば傷ぐらい負うだろうし、むしろほとんど無傷で終わったことが奇跡みたいなもので力量に差がありすぎた結果だろう。

 でも終わりを告げる前に邪魔が入って。

 勝った方が傷ついて。

 それで---

 

 

「---い。しっかりせんか!!」

「っ!?」

  

 深みに嵌まっていくような感覚から、ミゼルの声で帰還する。

 

「しっかりせい!! まずいことになったのじゃ!!」

 

 その声に問題発生の現場に目を向け、手遅れになってもせめて被害を減少させなければとその場に駆け出す。

 短く語るように口を動かした魔王の姿に嫌な予感を感じ、脚に込めた力を使って一気に距離を詰める。考えるまでもなく一番危険な蛍川を退かすために駆け寄れば、もう少しで手が届くといったところまで来たと思った時、それは衝撃を伴って解放された。

 

 

「---いいだろう。最早容赦せん」 

 

 

 宣言するかのような言葉と共に、今までの比ではないほどの威力の暴風が巻き散らかされる。

 神田橋、蛍川を含む俺たちは、それぞれ踏ん張ることなんて出来ずに遥か後方に吹き飛ばされる。

 横っ腹にくる一撃に怯みそうになりながらも、同じく放物線を描いている蛍川を助けるために足掻く。

 

「・・・このっ!!」

 

 投げ出された空中でなんとか姿勢を制御し、彼女が落ちる方向へ先に行くため備えていた警棒を思いきり振り下ろすことで自分の軌道を変えることに成功した。

 ギリギリ蛍川が地面にダイブする前にその体を抱き抱えることが出来たが、速度を殺すことがこのままでは不可能だ。

 

「ちくしょうがっ!!」

 

 背中から落ちることで速度は落ちたが滅茶苦茶に痛い!! あのスピードで二人分の体重を叩きつけられたのだからそれはもう想像できなかったぐらいの痛みである。

 だがそうも言っていられない。

 ある程度威力が弱まったとはいえ収まった訳ではない。二度三度と打ち付けられるのは目に見えている。もちろん歓迎できないことだ。

 

「ふんっ・・・!! ぬぉおおお!!!」

 

 全身に感じる痛みを気合いで我慢し、反動を利用してなんとか上体を上に、脚を地面に触れることができるぐらいに立て直す。

 足先が着けば煙を挙げるようにして急減速を行う。何度か地面に弾かれるが、両足でしっかりと大地を踏みしめ止まることに成功した。引きずられた跡が列車の線路のようになり、砂埃を盛大に巻き上げている。

 腕の中の蛍川を見れば気を失っているようで、体を支えられずぐでっとしていた。

 気づけばかなり端の方まで飛ばされたらしく植木のところに来ていたので、丁度いいのでその木の影になるようなところに彼女を横たえた。

 

「・・・ふぅ。とりあえず怪我はねぇ・・・・・・」

 

 ざっと見た限りどこにも傷は負っていないようなので一先ずは安心だ。俺は彼女から目を離し、暴風の発生源に顔を向けた。

 

 

 そこにいた魔王の姿は辛うじて人の形をしていたが、どうにもその頭身はおかしくなっており、まるで四足の獣のような四つん這いの姿勢をとっている。


 そしてなによりデカイ。

 

 建物の二階から三階はありそうな四肢で体を支え、丸太なんかよりも太いそれに鋭い爪が付き地面を噛み締めている。

 体の方への繋がりも逞しい肢体をしている。

 背後からしか見えていないので前がどうなっているかわからないが、言いたいことは一つだ。

 

「・・・・・・冗談きついぜプリケツじゃねぇか!」

「アホ言うとる場合か!?」

 

 委員長あんなケツしてんのかよやったぜ!! などと内心を暴露していたが速攻で突っ込まれた。どこにいっていたのか心配してたぜ。

 

「おいミゼルあれなんだ?」

「こっち向けよ」

 

 一瞬たりともあの美尻から目を逸らさずに問いかける。おお、動けば躍動感でさらにグッドだ。今までの疲労も痛みも気にならなくなるくらいだしもう俺このまま観戦を続けますわ。

 

「あれあいつんとこ向かってるよな」

「聞けよおい」

 

 まあふざけんのもここまでとしとこう。惜しいという思いを封じて相方と向き合う。

 

「ヤバイんだよな?」

「おぬしの頭と同じぐらいにな」

 

 そいつはマジでヤバめですわ。

 肩にミゼルを乗せて俺は神田橋が飛ばされたであろう方へ進む異形型魔王に向けて走る。間に合うかなー。

 

 

 

 

 残念なことに間に合ってしまった。一発殴られるぐらいしてくれればよかったのにと思わんこともないのだが。

 フェンスにぶつかってめり込んでいる神田橋。いつものウザさがまるで感じられないくらいズタボロだ。いいぞもっとやれ。

 

 対するは魔王委員長だが、こちらが目の前に立つとその進行を止めてくれた。どうやら意識はあるようでところ構わず暴れる、という事態にはならないようで幸いだ。しかしやべーぞここ。

 

「アングル最高」


 その存在はもはや逆向きの山脈。

 体勢ゆえの余力無し。

 夢のような光景だ。

 

「でけー・・・・・・乳」

 

 すげーよやべーよファンタジー最高だなおい。ここまでの爆乳現実じゃ無理だぜおい。

 危険は危険でもこれまったく別の危険があるよね? 健全な少年には毒でしかないよ? この系統でしかそういう感情を抱けなくなる確信があるね。

 

「着やせしてたんだなー委員長」

「訴えられるぞ」

『我もそう思うぞ』

 

 失敬な。こんなもん見せられて興奮しない男がいるもんかよ。ていうかその状態で受け答えできるんすね。

 なぜか二対一の構図になって冷たい目で見られているが、まあいいや眼福だし。それより魔王様のこの状態を解いてもらわないと。

 

「とりあえず頭身戻してもらっていい?」 

『断る』

「ですよねー」

 

 そりゃ吹き飛ばすだけならこんな姿になりませんわな。でもそれだと確実に神田橋死ぬしな。気は進まないけど止めなあかんのですよ。

 

「再戦で手を打たない?」

『こいつとはここでケリを着ける。害でしかない』

 

 強固な決意ですこと。マジで死んだなこいつ。

 

「させないっつたら?」

『お前ごと潰すだけよ』

 

 紫の目を光らせ殺意の視線を向けてくる魔王に、改めて恐怖に近い感情が胸を突く。逃げ出したいという思考が頭に満ちる。身体の震えを止められない。

 

 

 それでも

 なかったわけじゃないんだよ。こんな思いをするのはな。

 

 

「じゃ、やりますか」

 

 なけなしの武装を構え、目の前の脅威に対峙する。

 たしかに神田橋は対応を誤ったが、ここで殺されてしまえばそれを改めたり謝ったりできなくなる。蛍川を止められなかった俺にも責任はあるんだ。

 殺して解決じゃ俺の後味最悪なんでね。

 こちらのやる気を感じて、魔王も戦意を高めていく。ミゼルはすでに紋様に戻ってこちらのサポートにまわっている。

 

 こうして、不本意な戦いが始まる。第二ラウンドだ。

読了ありがとうございました

感想、批判等お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ