第十三話、契約
また設定を忘れておりました
申し訳ありません
第十三話となっております
よろしくお願いします
「え、えぐっ、わしだって、わしだってがんばったんだもん! わし一人じゃ魔力だって減っていくばかりで、どうにかやりくりするためにって思ってもあやつらはどんどん壊すし、だいたいここに毎回来るのはあやつらじゃ、ぐす、わし知らんもん!!」
びえーーーん、という効果音がつきそうなほどに大泣きに泣いている超常の存在、魔神ミゼル。
その姿を見ればよもやそんな大それたやつだと思うまい。なんとも庇護欲を誘うやつだ。
「だけどそれってお前らが元の世界で止めてれば起こらなかったことだよね?」
でも俺は責めるね。それはもう責めるね。
八つ当たりの鬱憤ばらしじゃボケェ。この一週間の憤りをこの機会に晴らしておかないとここまで準備したこの、なんていうんだ、肩透かし感っていうのか、構えていたところにボールがこなくてバットを振り下ろせなかった感じというのか。
「俺さ、思ってたんだ。この一週間相手はいったい誰なんだって。頭のおかしい愉快犯がやってんだってことで色々仕込んでたらこれだよ。ファンタジー! ファンタジーナンデ!! この現代にそんなもんもってくんじゃねぇえ!!」
馬鹿みたいだ!!
こんな存在誰が予想できるってんだ!! こっちが真面目に思い悩んでいたのが滑稽でしかないじゃねえか!!
「ちくしょう!! なんだってこんなことに!?」
「わしだってそう思っておるわい!!」
「こんなやつらに俺の平穏が乱されていただと!?」
「わし守ってた! 守ってたよわし!!」
実際にことを起こしていたのはこの世界の力では到底太刀打ちできそうもない相手だった。こうなっては手を出すわけにはいかなくなる。どうしたらいいんだ。
「ええい、イライラする! こっちはとっとと決着つけていつも通りの日常に戻るつもりだったのにぃぃいーーー!!」
バリバリと頭を掻きむしる。問題はわかっているのに解決するための手段が俺にはない。手を出せば確実に大きなしっぺ返しをくらうだろう。
「くそっ、ちくしょう!! どうすれば、どうすれば・・・・・・」
どうにもならない現状に嫌気が差し、どんどん気持ちが萎えていく。そんな自分の姿を憐れんでか、ミゼルがなにやら話しかけてきた。
「な、なあおぬし。その、なんじゃ、ないわけでもないかもしれんぞ?」
「どうせそうやって期待だけさせるんだろ」
「いや、ほんとじゃて! 魔神嘘つかない!」
どうもかなり必死にアピールしてくる。これはもしかするのか?
ワンチャンやってやるくらいはいいかもしれん。
「じゃあお前に何ができるってんだ?」
「うむ、先程話したときにも言ったが、わしらは契約者に力を与えるが、それは契約することでわしらの機能が十全に使えるからなのじゃ。契約者から魔力を貰い、自分達だけでは行使できない術をも使えるようになる」
そういうやいなや乗っかっていた教本から降り、その表紙をめくった。見開きには明らかにこの世界の言語で書かれていない文字が並び、中央に楕円形の図形が描かれている。
「これが契約の項、この円に手を置き宣言すれば、その者はわしの契約者となる。どうじゃ、おぬしやらぬか?」
「・・・・・・おいおい、マジか」
耳を疑うような発言。こんなことをいう意図は明白だった。火中の栗が拾えないなら火掻き棒を使えばいい。そんなふうに、俺にもあいつらのような力を持てと言っていやがる。
「迷うことはあるまい。わしらの利害は一致しておる。わしもおぬしもあやつらに元の世界に戻って欲しい。そのための手段を、お互いに得ることができる。おぬしは力を、わしは魔力を」
こちらを見上げる顔には先程までの隙はなく、こちらを誘うように、言葉にはつい従ってしまいそうなほどの求心力が、全身から自信が満ちて見える。
「どちらにしろこの世界で一度は決着を着けさせねばならんのじゃ。それを口実にまた元の世界での再戦を持ち出すこともできよう。この一戦を確実にさせるための、いわば審判のようなものが本来のわしの役回りじゃ」
さあどうすると、強烈なまでに語りかけてくる目線がこっちを貫いてくる。さっきまでこちらが会話の主導権を握っていたはずだが今はもうあちらに持っていかれている。これまで通りとはいかないだろうことはわかりきっていたが、ここまで変わるのかよ。
知らず、一筋の汗が顔を滴った。
「・・・・・・理解は、そうだな理解はできる。確かに言ってることに筋が通っているようにも聞こえる。でもよ、その魔力だったか? そいつが俺にあるってことがいまいち納得できない。そっちの世界では当たり前のもんなんだろうが、あいにくこっちは科学で出来た世界だぜ?」
「その心配はない。素質の有る無しは多少あれど、生物、特に人間には必ず魔力はある。残念なことにおぬしは多いとは言えない程しかないが、一戦だけならば十分であろう」
こちらの当然の疑問にスルリと返していくミゼル。それで、とさらに促してくる。
「そもそも、なんで俺なんだ? 条件どうこうならもっといいやつがいるんじゃないのか?」
「・・・・・・いや、おぬし気付いておらんのか? おぬしは生身でありながら勇者や魔王の静止をかわしておったろ」
そういわれてその時のことを思い返すが、なにか背後から来ていたな、というぐらいのことしか思い出せなかった。え、あれそんなんだったの?
「あれってそうだったんだ・・・・・・」
「・・・・・・本当にわかっておらなんだのか。まあよい、おぬしを選んだのはその身のこなしも考慮してじゃ。あいにくおぬし程の動きができるような者を見つけることはできなんだのじゃ」
いくら審判役とはいえ身を守る必要はあるからの、などと軽く言ってくれるが、こちらからしたら重要なことだった。そこが一番の問題点とも言えるのだ。
「お前審判なんだよな? 戦えんの?」
「直接的な攻撃と言えるものはないといえば無い。わしの機能は契約者そのものの強化といえるようなものなのじゃ。特別にどうこうではないために基礎的な能力が高い者が望ましい。オーラを纏うとか魔法を放つとかは出来んぞ」
「それまじで言ってんの?」
こいつ自分がポンコツだって白状しやがったんですけど。こいつの言ってることが本当ならバンバンいろんなもんが飛び交ってるなかに体一貫でいろってことなんですけど。
「防壁みたいなものは?」
「(魔力が足りないので)ないです」
「安全は?」
「検討させていただきます」
「危険があからさまに危ないのだが?」
「気にしてはいけない、いいね?」
だめだ、トチ狂った質問にさえ平然と返してきやがる。完全にロックオンされてる。こちらがいくら言おうとイエスと答えるまで続けるぞ、こいつ。
話が存外長くなりすぎてしまったようで、もうだいぶ夜が更けてきていた。嫌でもここで結論を出さなくてはならない。
そういったところで選択肢は決まっている。ここで覚悟を決めなきゃまたあの毎日がやって来るのだ。そんなことは断じてごめんである。
もう一度、今度は撫で付けるように頭を掻いた。避けようと意識してきた争い事に自分から挑むことになんとも言えない気分になりついため息が出てしまった。
「・・・・・・はぁ、わかったよ。降参だ。やるよ、協力する」
ミゼルは俺のその言葉に笑みを浮かべ、促すように飛び上がる。俺もそれに倣うように教本の前に移動した。
「ではこれより契約を結ぶ。なに簡単だ、お互いの名を交換しわしの問いに答える。それでわしらははれて協力者になるわけじゃ」
改めて聞こう、おぬしのその名。
「わしの名は『見定めし祭壇』魔神ミゼル」
「日駆 蒼一。日の元に駆ける一族の子孫」
問おう汝を。
「力を望むは?」
「平穏のため」
「それを為すには?」
「その戦いの沙汰を下す」
「覚悟はあるか?」
「言うまでもなく」
「ならば手を翳せい! 契約は祝福を持ってなされよう!!」
「っ!!」
輝きを放つ円に向かって勢い良く右手を振りかぶった。そして触れた瞬間、身体を突き抜けるような衝撃がそこかしこで起こった。しかしそれは痛みを持たず、何かが目覚めていくような感覚を全身で感じていた。
「--・・・っと、お?」
光が弾け、身体を包んでいた感覚もだんだんと無くなっていく。置いていた右手に目をやれば、その甲に青白い紋様が浮かんでいた。
「ここに契約は成った。我ら共に立ち、共に為すであろう。この契約が、別れしときまで固きことを」
完了を示すように宣言するミゼルの声を聞きながら、その証である紋様を見つめた。
窓から差す太陽の光が部屋に照らし込んでくる。俺はまた、決意の朝を迎えたようだった。
読了ありがとうございました
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