第十二話、成り行きを聞こう
第十二話です
よろしくお願いします
「じゃあ、聞こうか?」
「は、はい!」
類い稀なる落下土下座を目の前の存在が繰り出した学校から場所を移し、今は自分の部屋で面と向かって話を切り出していた。
若干ビクビクと体を震わしているが逃げる様子はない。今もなお正座の体勢で床に座っているが、どうにも涙目でこちらを見ているため上目使いになった視線を受け、少しばかりの罪悪感が胸によぎる。
椅子の座りを直すそぶりをしながら居心地の悪さを誤魔化しつつ、質問を繰り出した。
「まずは名前からだ」
「わ、わかった。わしの名は『見定めし祭壇』ミゼルという。大魔導師カイエン・モーゼスによって創られし魔神である」
「・・・・・・少し待て」
ちょっと名前を聞いただけでファンタジーなワードで溢れている。一応これまでのトンデモ現象のおかげでそれなりに予想はしていたが、さすがにここまであからさまだと消化するのに困る。
「な、なにかあったかの?」
「あー、いやなんでもない。ミゼルだったか? とりあえずお前のことについて一通り教えてもらっていいか?」
「わ、わかったぞい」
とにかく詳しいことを聞いていこう。それからじゃないとどうにも整理ができそうにない。俺は机から手帳を取りだしメモを取る準備をしだした。
そして、自分を魔神だと語る小さな存在、ミゼルは紡ぎだす。幻想とテンプレに溢れた話を。
◾
「理解しておるかわからんが、わしや先ほどの二人。あやつらは同じ、此処とは違う世界より来た者なのじゃ。」
「実際にはわしと同じ魔神がこの世界の人間に力を貸した状態があやつらなのじゃが、まあ同じもんじゃろ」
「わしらが居った世界というのはこの世界でいう魔法のようなものが発達した世界でな、超常の存在というのもようおった」
「そのため個人が大きな力を持ち、それによって国家単位で被害が出ることが多々あった」
「これを何とかしようとしたのが、わしを創り出した大魔導師カイエン・モーゼス様と二人の御弟子様じゃ」
「多発する被害に対し、荒療治であっても解決を目指し、その力を集中させ制御するための旗印を作る。それが我らが創られた目的である」
「二人の対象に力を授け、対立を促すことでそれぞれに戦力を集めさせる。その上で戦い合わせ、だんだんとその数を減らさしていこうという計画だったのじゃ」
「そのために創られたのが『勇者』と『魔王』。二人の御弟子様によって創造された『魔神』である」
「わしらは本に宿る仮想人格であり、この姿も意思疏通をしやすくするためのものよ」
「持ち主に力を授けることから『教本』と呼ばれることもある」
「そうやって二つの陣営に別れ戦力を潰しあっておったのだがな。ここで一つ問題が起こったのだ」
「一応どちらかを勝者とすることになっていたのだが、どちらもどうにも負けず嫌いでな」
「人を次々と変えていっては戦い続けてな。今度はこやつらが問題になってしまったわけよ」
「各地でボコボコと大穴を空けるものだからかなりの被害が出ての。これは不味いとカイエン様がわしを創り出したということよ」
「あやつらを追い回しながら被害地の修復をしておったのだが、あやつら何を考えたのか、御弟子様たちに取り付いて暴れだしたのじゃ」
「カイエン様と共になんとかそれを抑えたはいいが、開発段階であった異界渡りの秘術を発動され、こうしてこの世界へ来たというわけよ」
「あやつらは相も変わらず争いあっておるが、宿主のおかげか大きな被害にはなっておらんでな。わしの能力でその辺りを補っておるわけよ」
「それがわしがここに居る理由というわけじゃな」
◾
「・・・・・・なるほどね」
なんとも大袈裟な話であった。もっといい方法があったのではないかという考えはあるがすでにこうして起こってしまっていることである。異世界の存在もこいつを見ていれば疑うようなこともない。まあ、あるんだろうなという程度の感想ではあったが。
「お前の能力ってのが、あの光なのか?」
「そうじゃな。あれはわしの魔力が関係しておる。わしらの世界ではそれぞれに固有の魔力光を持っておる。わしら魔神は創造主の魔力光を引き継いでおるがの」
「直したり、壁を作ったりも?」
「そうじゃ」
そういうとまたあの光がミゼルの体から溢れ、目の前で凝縮したかと思うと一冊の本が出てきた。
「これがわしの本体であり力の源よ。ここに記されし魔導を行使し、わしはあの者たちの決着を見定める。それこそがわしの存在理由よ」
その本に腰掛けながら語るその言葉と表情に、たしかな覚悟を見せる。彼女にとってそれほどのことなんだろう。
「・・・・・・成り行きはわかった。そんで本題だが、なんで俺んちはお前のお世話になってんだ?」
「うぐっ。そ、それはのう・・・・・・」
こちらの質問にあからさまに焦るミゼル。視線も逸らしなんとも言いづらそうだ。わかってはいるがはっきりさせとかないとな。
「お前の話を聞いて、何となくだが予想はできる。だが俺はお前の口から聞きたい。しっかりと、確実な証言が欲しいからだ」
「わ、わかっておる。じゃが・・・・・・」
理由はわからないが言うのを戸惑うなにかがあるようだった。無理矢理吐かせるのもありだがあまりやりたくない。ここは自分から譲歩するべきか。
「OKわかった。なら、こっちの予想を言っていこう。それにはいかいいえで答えてくれ。それなら答えてくれるだろ?」
「そ、それなら・・・・・・」
了解はとれた。なら、ちょいと語りますかね。
「うちが壊されたのは知っての通り。勇者か魔王のせいだろう。さっきお前が言った能力とやらで直してくれた。まあ、感謝してる」
「う、うむ」
「でもよ、そこまでだったら別に言い淀む必要はねぇ。何か理由があるんだろうさ」
「そ、そうじゃな」
「ところでよう、俺は最近ちょっとしたことがあってよ。こいつがおかしなことにいつの間にか部屋の外で寝ちまってるんだ」
「ほ、ほう」
「まあ目覚めは快適で身体の調子もいいくらいなんだけどよ。ちょっと不気味だよなあ。なんたって俺には眠りに入る時の記憶が無いんだからよ」
「そ、そうか。不思議じゃな」
「それが起こり始めたのが一週間前。そんときは驚いたよ。月を見てたはずなのにいつの間にか部屋の外だ。そんなんがずっと続いたんだよ」
「・・・・・・」
「なんとも恐ろしくてね。どうにかできないかと構えていたら今回のことだ」
「・・・・・・あ、あの」
「お前さん言ったよな。いくらか他の術が使えるって。それってよ、もしかして記憶をどうこうなんてことが出来たりすんの?」
「そ、それは・・・・・・」
「こう考えると無理がないんだよなあ。例えばよ、この一週間のことが全てお前らのせいで、家を破壊される度に俺も吹っ飛ばせれていて、その度記憶を消されていたとするんなら、侵入者どうこうなんて考えよりもよっぽど納得がいく話になりはしないか、ということなんだが・・・・・・」
「・・・・・・」
「返答を、聞こうか」
「・・・・・・」
腰を掛けていた本の端から体を動かし、もう一度正座の体勢になる。両の手を揃えるようにして目の前に置くと、ゆっくりと頭を下げ始める。そして手と同じぐらいの高さにまでなったとき、
「も、申し訳ありませんでしたあーーー!!!」
烈拍の気勢と共に放たれた謝罪をもってして完成した。
見よ。完全にして完璧、究極の土下座がここにある。これほどまでの土下座をどうやって習得したのか。天性のものであるならこれほど恐ろしいことはあるまい。この姿を見ればたとえ仏でも四度目の顔を見せるだろう。
「だが許さん」
でも俺は仏ではないので怒ります。
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