第十一話、そっちの事情、こっちの事情
第十一話です
よろしくお願いします
対峙する両者のその先。
運動会などで旗を上げたりするポールなんかが建てられたコンクリートの台座の上で、そいつは微かに光を発しながら成り行きを見ているようだった。
あの青白い光の感じ、まさしくあれだ。
「・・・・・・見つけた」
その存在を目にした途端、逃げ出そうとしていた先ほどまでの気持ちが何処かへ飛んでいった。
ただひたすらに追い続けたその姿、シルエットだけだったとしても見間違うはずがなく、身体は思考するより速く動いていた。
目の前のフェンスを一息で登り、飛び降りる勢いそのままに真っ直ぐに走り出した。肉体的な疲労感など感じさせないほどキレのある動きをしている。
「--な・・・--、・・・れは・・・--」
「いっ・・・--ど-・・・って---」
なにか声が聞こえたような気がするが、そんなことに構っている場合ではないので当然無視した。
走り続ける中、迫る気配に身を屈め、さらに二三度上半身を左右に振るった。身を掠めていく何かを感じたが危ないとは思わなかったのでこれも無視。
「な、なんじゃこやつは!?」
あの妖精らしき存在の声が聞こえた気がする。まだ距離があるのによく通る声だ、あのサイズでよく出せる。
若干下らない感想を浮かべつつ、さらに近づいていく。
「---テメェそこ動くなコラァー!!」
「ひぃ!?」
思わず出た罵声に反応し浮き上がって逃げようとする妖精。焦っているのか動きが鈍い。胸の上暗いの高さを這うような動きで進んでおり、それはそれは遅い。
「動くなって---」
もちろん逃がすはずもなく、さらに脚を加速させ---
「---言ってんだろうが!!」
---ダンッ!! と思いきりそれに飛びかかった。
勢いを得た跳躍は容易く両者の距離を詰め、その軌道は思い描いた通りの線を狂うことなく辿っていた。
「なんじゃとぉーー!?」
数秒とない空中での交差。間近で見ればなお小さいその体躯が伸ばした手の中に納まる。驚愕に染まる表情が意外に可愛いなんて思いつつも、俺はがっしりと掴んだそれを逃さぬよう華麗な着地を決めた。
手の中にある妖精は、かなりプニぃ感触だった。
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「は、離さんかこの不躾者が!」
「ふっ、離すもんかよファンタジー。お前には聞きたいことが山ほどあるんだ」
「な、なぜ我がそのようなことけふぅ!? や、やめよ腹を押すなけふぅ!!」
ようやく手に入れたおもちゃ、もといこの妖精であるがなかなかいい声で鳴くものだからついついやってしまった。
銀髪ロングのストレート、瞳は金色小麦肌。小さな口から出てくる声は鈴のようで大変美しく、正直かなりストライクに近い。ただやはりサイズ差がなー、とクニクニしながら考えていた。
「わかった! わかったから頼む手をはなせ!」
「本音は?」
「逃げる気まんまいや嘘!? 嘘だから!」
こいつチョロいぞ、などと正直な妖精の一面を垣間見つつここから帰るためにあの壁をどうにかしてもらおうと声を掛けようとした。しかしそれは第三者により遮られてしまった。
「すまないがそこの君」
「黙ってろ変態」
「返しが酷すぎる!?」
あり得ないだろ、なんてほざくコスプレ野郎勇者(仮)が話しかけてきたが正直な話今こいつに欠片も興味がないので、そんなことより大事な妖精との交渉を続けようとしたがまたしても邪魔が入った。
「フハハ、確かにそうだ。的を射たことを言う」
「五月蝿いわ痴女が」
「なん--!?」
今度は魔王(痴女)が会話に混ざってきた。ちらっと横目にその姿を見たがなにも間違ってないので教えてやろうと思う。
「あのさあ、なに気取ってんのかわかんないけどその格好どうよ?」「これは私の戦闘用ドレスで--」
「ありえないわー。戦闘にドレスとかまず無いのにその上透けまくりじゃん。戦う気あんの?」
「魔法主体の--」
「スタイルどうこうじゃなくて意識の問題だよね。お前あれだろ? 戦う男の目線が自分のセクシャルな部分に当たるのが快感なんだろ?」
「そんな--」
「じゃなきゃなんでそんな前が開いたスカート履いてんのか説明付かないよね? わざわざそんなことするならスカートいらないよね? 見せパンだけで十分だよそれもどうかと思うけどー」
「ふ--」
「そんでもってさあ、胸元とへそが見えるデザインの服だけどなんでなの? デザインじゃないの? ただ小さいだけなら別のもの着ればいいよね。そうしないのはなんでなの仮にも戦闘用なんでしょ?」
「--」
「こういったことをあげていったけどこれってあんたが痴女の変態だってことなんだけど、別に気にすることじゃないよ。そういった格好が自分の考えた最高のものなんだろうからこれからもやっていけばいいと思うよ、俺の知らないところで」
「・・・---っぐす・・・」
「もういい!! もうやめてくれ!!!」
これでもかとばかりに言葉をぶつけてやった変態痴女は顔を覆って泣き出している。おそらく自らの性癖を認めることができないんだろう。可哀想に。「いや、違うと思うぞ」
先ほどまで争う気満々だった勇者(仮)が背中に庇うように魔王を隠している。こっちじゃなくてあっちと相対しろ、本来の相手だろうが。
「そっちはそっちでお好きにどうぞ? こっちはちょっと立て込んでんだよ」
「いや、そうもいかないというか」
「た、助けて勇者殿~!!」
「ほら、こうも言ってるし」
「聞く耳持ちませんなー」
「どうしよう話が通じない・・・!?」
外野のさえずりを聞き流しながら、さて次の行動をどうしようかと思案していると妖精を掴んでいた手の中でまたあの青白い光が輝きだした。
「離せと言うのが、わからんのかあ!!」
「うおっ!?」
光は妖精の身体に収束したかと思うと一気に弾け、その衝撃に拘束していた指が離れてしまい、彼女を自由にさせてしまった。
「はぁ、はぁ。・・・・・・まったく、ひどい目にあったぞ」
ずっとクニクニしていたせいかかなり疲労しているようだった。まあこの様子なら直ぐに逃げることはできまい。また捕まえることはやめてとうとう話をしよう。
「なあお前、聞きたいことがあるんだが?」
「まて。わかったからまって。ちゃんと話は聞いてやるから」
そういうと妖精は勇者たちのほうへ向き、
「今日はさすがに無しとしよう。また次回へと持ち越しじゃ」
「そうだね。こんな状態じゃ勝負にならない」
「おぬしも良いな?」
「・・・・・・・・・うん・・・・・・」
すっかり塞ぎ込んでしまった魔王も同意の意思を伝え、
「では、これにて今宵の沙汰を閉じることとする。以上」
終了の合図を告げるのであった。
それと同時に辺りを囲んでいた壁もその存在を薄ませていき、しばらくすれば消えてなくなっていった。二人の方もそれぞれの白や紫といった光で身を包み何処かへ飛んでいった。
「さてと。ではおぬしのほうの話とやらをしようかの」
「そりゃいいんだけどよ、俺んち帰りながらでいいか? さすがに家に帰らないとまずいわ」
こちらに向き直り対応してくれたはいいが、時間的な余裕はあまりない。明日、いやもう日は跨いでいるので今日になるのか。今日もまた学校に行かなくてはならない。準備がギリギリになってしまうだろう。
「ふむ、どこになるのじゃ?」
「お前が直した家」
「ん?」
「いやだから、お前が直した家だよ」
覚えてんだろ、と視線に乗せて妖精の顔を見る。思い当たったのか疑問気だった表情がどんどんと青ざめていく。
そして勢いよく地面に向かって落下したかと思えば、見たことのある体勢で。
「申し訳ありませんでした---!!」
それはもう、気持ちいいくらいの謝罪と土下座であった。
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