第十話、非日常との出会い
予約投稿の設定を間違っていました
申し訳ありません
第十話です
よろしくお願いします
目の前の存在を確認したとき、まずそのスケールがおかしいことに気がついた。
外の街灯に辛うじて浮き上がるシルエット、明らかに小さいながらも人のようなパーツの構成をしている。まるでおとぎ話に出てくるような『妖精』と呼ばれるものに似ているような気がした。
そんな考えが頭をよぎっていくが、もっと驚くことが起こった。
空中からこちらを見ていたその存在は何事かを呟いたようだった。その瞬間、散々なことになっている壊滅した俺の部屋を巻き込むような形の光がそれを中心に放たれた。
その眩しさは目を手で覆うほどで、収まったのは数秒たってからだった。
「・・・--、おいおい・・・・・・、マジか・・・?」
手をどけて目の前の光景を認識した時、あまりのことにそれを認めることができなかった。
グチャグチャになっていた部屋は何もなかったかのように元に戻っていたのだ。今起こったことを現実での事だとは思いたくなかったが、身体に感じる苦しさが確かに本当のことだと訴えていた。
ただただ呆然としていると、修復された窓から光を放った妖精がどこかに飛んでいくのが見えた。
「--っまず!?」
予想外だ。
はっきり言って全くの予想外。
あんなよくわからない存在がいることなんて、いったい誰が予測できるんだ。
それが、それが何だ? あいつが家を壊したのか? 何で?
疑問は湧いてくる。でも今、あいつを見失うわけにはいかない。
痛む身体をなんとか動かし、玄関から倉庫の方へ駆け出した。
そこには普段あまり使わない自転車がしまってあった。急いで担ぎ出し一気に加速させた。
幸いなことにあの存在は自らも光を放っているようで、遠目に視認できた明らかに不審な青白い光が向かう先を教えていてくれている。
俺はそれに向かってがむしゃらに自転車を漕ぐ。この時俺は侵入者の正体なんてまるで気にしていなかった。ただ目の前で起こったことの真実だけを知りたかったんだ。
◾
「マジふざけんなこん畜生ぉぉお!!!」
一人夜道を爆走しながら、俺は現状に対し罵声を上げていた。
走り出してからというもの、その行き先がブレにブレ、あっちこっちに進路を変える必要があった。元来た道を戻るいきなり逸れるは序の口で、フッと消えたかと思えば進行方向とは全く違う場所に出現したり狭い小道に入り込んでいっては危うく見失うところだった。
そもそもそのスピードがかなりのもので、全力を出してやっと距離を離されないくらいの速度が出ているのだ。
上空をいく姿を捉えるため視界を上のやっているので下への注意が散漫になり何度も転倒しかけ、全力を出し続けるために脚への負担が尋常ではなかった。ダメージを負っていたせいで呼吸もどんどん苦しくなっていった。
「・・・--まっ、まだ-・・・だ」
まだ夜は暖かいとはいえ噴き出す汗のせいで身体中がグショグショで気持ち悪い。
ハンドルを握る手が力を無くしていく。
尻が痛い。喉が乾いた。
とにかく苦しい。
「っも、--・・・もう、す・・・少し」
諦められなかった。
限界を訴える身体を、それでもと酷使した。
ただ、単純な感情で動いていた。
「-----っっっふっっざけやがってぇぇぇえぇえーーー!!!」
怒りだった。
もう、どうしようもないくらい頭の中がグルグルと、色々な感情や思いが混ざりあって、最後に残ったものが怒りだった。
この一週間の鬱憤、毎日のストレス、胸の中にあった不平不満。そういったいつも我慢してきたものがこの理不尽な状況のせいで大爆発を起こしていた。
「なんで・・・なんで俺ばっかこんな目に遭うんだ・・・・・・? 静かにしてたいだけじゃん! 迷惑とか掛けてないじゃん!! 俺なんもしてねぇじゃん!?」
一度燃え上がった怒りの感情をもはや抑えることはできなかった。たとえ八つ当たりだろうがなんだろうがとにかく何かにぶつけたかった。
「だいたいなんなわけ!? 他人に迷惑掛けといて謝りも無しか!? こっちが火消しでどんだけ苦労してると思ってんだ!! お祭り騒ぎもいい加減にしろよ!!」
支離滅裂な内容の言葉が勝手に口から飛んでいく。その熱量に当てられて疲弊していた身体にも僅かづつ力が戻ってくる。
「もういい!! もういいよ! お前らがその気なら俺だってもう遠慮なんてしてやるもんか!! 全力でやってやんよ!!!」
速度が上がる。ほんの少し距離が縮まる。
光は予測のできない動きをやめ、真っ直ぐと飛んでいる。そしてある場所で急速に遅くなりそこへと降りていくようだった。
荒い呼吸をなんとか続け、その場所に繋がる坂道を意地で登り上げた。
そこで発見したのはまた、こちらの思ってもいなかった光景だった。
「---っはぁ、はぁ・・・・・・。なんだあいつら・・・・・・?」
そこにいたのはよく見ると言えばよく見る、そんな格好をした、
---勇者のようなやつと、魔王みたいなやつだった。
◾
「ごめんまっていみわかんない」
完全に思考が停止していた。
そういやここうちの学校じゃーん、と特にどうでもいい現実逃避をしながらフェンス越しに二人を見ている。
あれー、俺が追って来たのはちっこい妖精でこんなファンタジーの看板背負ってるやつらじゃないはずて妖精もファンタジーやーん。
などと思わずセルフツッコミを入れてしまったがそのくらい頭が空回りしている。
一応両者の特徴を遠目でわかる範囲で上げていくと、
明らかに『勇者』っぽい格好しているやつは金色の西洋鎧を見に纏い、マントをたなびかせている。
手には両刃の剣を持ち、身体の前に構えている。
次にいかにも『魔王』っぽい格好をしているのは、見間違いじゃなければおそらくは女性だろう。
黒を基調としたドレスのようなものに紫色の装飾が施されている。顔を仮面のようなもので隠しているが身体のラインからその性別がわかった。
こちらは右手に黒い長杖を持ち、左手を『勇者』に向けている。
いくらか距離を空けて対峙するような形でお互いを見合っている二人。今のところ動きらしい動きはしていないが、その異様な様子にだんだんと冗談ではないような気がしてきた。
「うん、帰ろう」
なにか起こってからでは遅い。とっととこの場を離れなければ。
すっかり冷めきってしまった頭で迅速に行動に移ろうとしたが、このトンデモ空間はどうやら俺を逃してくれないらしい
踵を返して帰ろうとした俺の目前で、どこかで見たことがあるような青白い光が行く手を遮ったかと思えば、それは一瞬にして壁のようなものになった。
「おいおい、なんだよこれ?」
それはどんどんと範囲を広げ、ついには学校全体を覆うような形になり、ドームのように閉じてしまった。
そこら辺に落ちていた木の枝で壁をつついてみれば、固い感触のそれは波紋のようなものが浮かぶだけで全く壊れるような気配はなかった。
「ま、巻き込まれたぁーーー!!!」
つまり俺はあんな頭おかしいやつらがこれから闘いますよと言わんばかりのところにノコノコと入り込んでしまったわけである。
「戦いの舞台は整ったようだな、魔王」
「ふっ、お前一人で勝てるとでも?」
「僕は勝つ。正義のために!!」
「ならば来るがいい! 決着を着けてやろう!!」
「(イヤー!!! 始まってしまいそうなんですけど!?)」
開戦の合図を出したあいつらが明らかにそういうものなんですよねという感じの魔法的なサムシングを放とうしている。それがどれほどの被害を発生させるかわからん以上ここも安全ではない。
視線を四方へ振り撒き少しでも安全な場所はないか探していると、ふと、それが目に飛び込んできた。
それは追いかけていたはずの存在、妖精の姿だった。
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