プロローグ
初めて書かしていただきます。アゲインともうします。まずは第一章の完結までゆっくりとがんばっていきたいです。よろしくお願いします。
人間性というやつは、よほどの事がない限りまわりの影響で構築されていってしまうもんだと思っている。
プラスマイナスはあれど、影響を受けない人間はいない。親に、祖父母に、教師に、友達に、世間に、社会に。
流れは作られレールに沿わされ規格化させられ、そこから反れた奴は不良品扱いでふるいに掛けられ落ちていく。
そうならないよう外面作って自分偽って周りに合わせて薄ら笑いで下に下にと他人を押し込める。
大切なのは自分のことだけ。親友は呪いの言葉。陰口だけが本音。噂話で権力争い。
そんな現実を真面目に生きろと、そういうやつらは胡散臭くて。
まともに付き合う必要無しと、我を行くあなたに憧れた。
結局、そう結局のところ、他人を気にして縮こまっているだけの俺だった。というだけのことで。
それに気づけばもう、一人でいることに焦りはなくて、支えがなくても立っていられる。
強くなったんじゃない、弱くなったんじゃない、ただ自分に素直になってみれば、隣に誰も居なくても平気だっただけだった。
◾
深い夜が街を包み囲んでいる。陽のある時間のあの五月蝿さがピタリとなくなり、影から小さく、微かなようでしっかりとした主張をする音。それに耳を澄ませながら眠るのが俺の少ない趣味の一つだった。 その日もつまらん学生生活をこなし、そろそろ眠るか、というところだった。
「ーーー!?っ」
いきなり轟音したと思ったら、衝撃を受け吹き飛ばされた。月を見てから寝ようと窓際に居たのが悪かったんだろう。反対側の扉を突き破って通路の壁にぶち当たる。衝撃による全身の痛み、特に背中を強く打った。一回転して二度、床と壁に打ち据えるのは流石に堪えた。
「ーーーっか、はっ!?」
頭も打ったらしい。視界が真っ暗になったり真っ白になったりと、大忙しだ。
ここまでひどい状態はいつ以来だったか。あれはそうーーー、
「ーーーおい、だれぞおるか?」
それが自分に掛けられた言葉かはわからなかった。頭の混乱と、まるで鈴のようなその声で、大好きな夜が来たのだと錯覚したからだ。
「ほう、そこにおったか」
ゆっくりと、声と共に近付いてくる存在感。
それを感じとって、なんとか視線を前へと向ける。
歪む視界は変わらず、痛む身体は震え、理解なんて全くできていなかったけれど、
自然と、身体が動いてた。
「さいなんだったな、おぬし」
月を背負った、それより綺麗な女が、こっちを見ていた。
ぐちゃぐちゃだった映像が冴え、身体の震えも別のものに変わった。呼吸が一瞬停まって、そこから心臓がもっとずっと暴れだした。
「・・・・・・っぁ、ーーーぉぐっ・・・!」
「よい、しゃべるな」
気配が近づく。夜の輝きそのもののような、清らかな声。大きくはないのに澄み渡るようなこの音が、俺に向かって響いている。
涙が出そうな感動が、胸に溢れていた。
「ゆえあってはなせぬ。ゆるせよ」
俺は。
俺は、感謝していた。
あらゆる疑問、異常。
それらすべてを脇にどかして、それを伝えたかった。
でも、どうやらそれは出来ないらしい。
「すまぬな」
こんなに近くじゃ、言葉が出せねぇ。
すっ、と軽く触れるだけ。
そんだけの、たぶん、キスだった。
それだけの感覚を残して、意識がクラリと遠くなる。
なにもかもが曖昧になって、次第に眠気が来やがった。どこにも力が入らなくなっていく。
せめて最後にもう一目、ずり落ちる身体を何とかしようとするも、制御ができずコテンと転がる。
悔しさを覚えながら、ほとんど閉じている両目が捉えた。
夜風にたなびく、スカートのその下を。
俺の非日常は、そんな感じで、始まろうとしていた。
読了ありがとうございました。感想、批判等お待ちしております。