5月[ミサンガと記憶] 3.夢の中で その3
男の子 「おねえちゃん、僕とあそんでよ」
若葉 「・・・え?」
若葉は不思議な表情をしていた。
若葉 「ごめんね。お姉ちゃん、あんまり目が見えないから遊んであげられないよ。」
ふと、男の子がこっちをむいて顔が見えた。どこかで見たような顔だ・・・
男の子 「いいよー。お話とか聞かせてよー」
若葉 「え?そんなのじゃつまらなくない?」
男の子 「つまらなくなんかないよ!たくさん聞かせて?」
若葉 「わかったよ。君の名前は?」
男の子 「名前?・・・・・・・わからない。」
わからない?本当にこの夢はなんなんだ?妙にリアルだ。そこに見えているのは確かにあの時一緒に過ごした若葉だ。
若葉 「クスッ・・・面白い子」
男の子 「はやくー」
若葉 「うん。じゃあまずは私の小さい時の話をしてあげる。ちょうど、君ぐらいの年の頃の話だよ?」
・・・ピッ・・・ビシッ―。
あ・・・景色が・・・歪んで・・・・
音も何も聞こえなく・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
??? 「叶汰あああああッ!」
誰だ?何でそんな大声でおれの名前を?
目をあけると、そこには・・・・
俺 「っ!」
男泣きをされている豪さんがおりました。
豪 「良かったっ!俺のボールが当たって死んだかと思った!ごめんよ〜!ゥゥゥ・・・」
俺 「いや、別にいいけどさ・・・人の顔の上で泣かないでくれ・・・」
ああ、もう・・・
結局その日は、保健室の先生に言われて自宅に帰ることになった。
俺は、自室のベットの上でゴロゴロしながら、今日の夢をもう一度思い出してみた。あの夢が、現実に起こっていることだとしたら?・・・いったい若葉は?あの男の子は?
考えるだけで頭が痛かったので、今日はもう寝ることにした。
次の日――。
いつものように登校して、教室に入ったとたん真琴が話しかけてきた。
真琴 「叶汰!おはよっ!大丈夫だった?」
俺 「うん、まぁ、一応」
真琴 「なんか・・・元気なくない?」
俺 「えっ?そ、そんなことないって・・・」
流石は真琴・・・するどい。でも、真琴ならなんかわかってくれそうな気がする。
俺 「・・・実は―・・・信じられないかもしれないけど」
キーンコーンカーンコーン♪
俺が話そうと思った瞬間にチャイムが鳴った。
俺 「わりぃ。2時間目の長い休み時間に!」
真琴 「う、うん。わかった!屋上でいいかな?」
そして、長い長い国語の時間が終わり・・
俺は屋上に到着した。ちなみに、ここは、俺と真琴・・・いや、俺達と真琴がはじめて会話を交わした場所だった。
真琴 「で、なんなの?話そうとしてたことって・・・」
俺 「うん。実は―」
俺は修学旅行から今までのことを事細かに話した。真琴はしばらく考え込むような顔をして
真琴 「ありえない話じゃ・・・無い・・・よね?」
俺 「何が?」
真琴 「そのー・・・叶汰の夢が現実だったってこと。私たちの修学旅行が終わって土日の間に怪我して入院したってことも考えられるしさ」
俺 「確かに。でも―。」
目が見えないと言ってたような気がする。俺は言おうと思ったがこれ以上真琴に考えさせるのも悪いと思って言葉を飲み込んだ。
真琴 「でも?」
俺 「いや、そんなことが本当にあるのかな?と思ってさ。夢で現実世界のことを見るなんて」
真琴 「あるさっ♪不思議なことってのは僕たちの年代にはつきものだよ!」
ニコニコしながら言われたからか、妙に納得してしまった。
俺 「だな!がんばって手掛かりとか探してみるよっ!」
真琴 「うん。頑張って。・・そのー・・・いつでも相談してね。力になれることがあればできる限りでやるから。」
俺 「ああ。ありがと」
そんな感じで、真琴への相談は終了した。そして、今の相談をきっかけにして、俺は夢の手がかりを探してみることにした。




