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10 大暴れしました

色々と忙しく、遅くなりました……

とりあえず2月が終わる前に更新しておきたかったので、内容は薄いですが投稿します。

あらすじ詐欺のいじめの話はそろそろ終わります。

次編からは、ちゃんとコメディーしますんで許してください……


最後に、ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

「はあ!? 誰に向かって口利いてんの!?

 アンタの家なんかパパに言えば簡単に潰せるのよ?

 そもそも、ワタクシがお婆ちゃんとかいう奴をいじめてたって証拠は――ひぃ!?」



 校舎裏に呼び出したモブキャラAが喚き立てて話にならないので、軽く正拳突き。私の拳はモブキャラAの髪を掠めて校舎の壁を抉った。

 たったそれだけの事で、目の前の女は恐怖で口をつぐむ。

 少しでもズレてたら断末魔の悲鳴すらなく御陀仏だしね。そりゃあ怖いよ。


 でも、私としては壁ドンしてるみたいで少しだけ恥ずかしかったり。

 ちなみに“モブキャラA”ってのは、相手の名前が分からないから。憶える必要なんかないし。



「証拠とかどうでもいいわよ。ただ私はお婆ちゃんに関わるなとお願い(・・・)しているだけ。オーケー?」

「わ、ワワワ、ワタクシに強迫して、たたたたただで済むとおおおおお思わないで!」



 おお、こいつは案外根性があるな。他の奴は大抵壁ドンだけでお願い(・・・)を快諾してくれるのに。

 ……いや、家が金持ちだから“自分は大丈夫”と根拠の無い思考回路をしているだけか。



「別に貴女が何をしようと関係無いけど……

 でも、ちょっとでも私の気分を害したら、こんな風に(・・・・・)なるからね?」



 これ見よがしに、石を眼前で握り潰す。

 その光景に自分の姿を重ねたのか、モブキャラAの顔から涙が零れた。


 ……マスカラで涙が真っ黒だ。



「ごごごごごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「うるさい。人が来たらどうすんのよ。

 ……私が聞きたいのは謝罪じゃないの。わかるでしょ?」



 だめ押しに、ゴリラ顔を歪めて爽やかスマイル。

 なぜか、これが一番相手のSAN値を下げるから不思議。


 …………うん、実に不思議。



「わわわわわわかります! もうおおおお婆ちゃんには、かかか関わりませんから!」



 その一言を聞き、満足しながら校舎裏を去る。

 視界の端でモブキャラAが腰砕けになっていたけど、風紀委員に見つかる前に移動してほしいものだ。スカートが少し濡れていたから、すぐにトイレに行くとは思うけど。




 * * *




 悪役令嬢になる決意から早一週間が過ぎた。

 あの日以来、波花志遊と的到田モブオは学校へ来ていない。流石にセキュリティ万全な家の中に居るのでは手を出しにくい。

 なので、この一週間は学校内の“お婆ちゃんならいじめて良い”なんて風潮を払拭するために動いた。

 まあ、やってる事は脅迫だけどね。


 そのせいか、最近では私を見ると全力で逃げ出す奴が急増中。

 風の噂では『ゴリラ顔の悪魔』と恐れられているらしい。悪魔というより悪役令嬢なんだけど、なんて野暮な訂正はしません。

 そして、脅迫やら校舎の破壊やらをしていたら風紀委員も私の事を危険人物として認識し、常にストーキングしてくるようになった。


 全て計画通り。悪い笑みがこぼれちゃう。グヘヘ。


 お婆ちゃんの骨折が治った後、学校でまたいじめられたら話にならないからね。今のうちに“お婆ちゃんのバックにはゴリラがついている”という認識を広めないとね。

 お婆ちゃんの友達も激減するだろうけど、いじめに加担する奴と仲良くするなんて私が(・・)許さない。



「…………嫌われるだろうなぁ」



 この行動の全ては、私の独断だ。お婆ちゃんの意思なんて一欠片も無い。

 そもそもあの日以来、お婆ちゃんとは会っていないし、会おうとも思わない。……会いたいけどね。


 でも、お婆ちゃんなら、私の行動を絶対に嫌悪するだろう。

 私の事を、嫌いになるだろう。


 だから、会いたいけど会わない。少しでも嫌われる日を先延ばしにする。

 ……我ながら超卑怯者だと思うわ。





「はぁ……」


「何溜め息なんて吐いちゃってんのぉ?

 アレかい? 拙者の美貌が溜め息出ちゃうくらい素敵って事ですかい?」


「ウザい」


「おいおいおいおい、授業サボって屋上で二人きりのシチュエーションで『ウザい』は無くない?

 思春期の男女が二人きりなんだから、もっとトキメこうよ。

 拙者ぁ、実はぁ、勝負パンティだったり?」


「なら、パンツ一丁で屋上から締め出してやろうか?」



 こちとらシリアスムードだってのに、ハゲは相変わらずウザい。

 あの日以来、激変した私の行動にも臆する事無く、変わらない態度で接してくれるのは正直嬉しかったりもするんだけどさ。でも、ウザいものはウザい。


 ウザいくらいに接触してくるものだから、最近では意識していたお嬢様言葉も使わなくなってきた。



「で、今日はなんで屋上に?

 なんか楽しそうだから追ってきたけど」



 お前、理由も知らずに追ってきたのかよ。

 それも毎日の恒例行事になりかけているから、わざわざツッコむ事はしないけどさ……



「……風紀委員に囲まれたから、逃げてきた」

「また脅迫したんですか。怖いわぁ……

 そんなんだから最近、風紀委員がロープやら警棒やらを武装し始めたのよ。どんどん風紀委員のキャラが立ってくじゃないの。いい迷惑だわぁ」



 お前こそ、いい加減キャラを定めろよ。

 イケメン、ハゲ、寺生まれ、ウザキャラ。選び放題じゃんか。



「それで、お婆ちゃんのいじめは解決出来そうかね、ゴリラ君。

 拙者としても、あんな美少女がいじめられているなんて心苦しいからね」

「なら、もっと協力してくれても良いじゃない」

「いじめっ子リストだけでは足りないと申すか。アレ書くのに三日も徹夜したんだよ?

 も~お肌とかチョーボロボロになってぇ。特に頭皮が」



 安心しろ。相変わらずツルツルだから。


 でも、このハゲから渡された“いじめっ子リスト”を重宝しているのも事実。そのおかげで、効率的に脅迫することが出来ているのだ。



「……ホント、どっから情報得てんのよ」

「うふふ~、ナ・イ・ショ★」

「ウザい」



 意外にこのハゲは口が固い。いつも、こんな感じではぐらかされる。

 本当はハゲ経由で私に情報を提供してくる奴を知りたいけど、今の協力関係をまだ壊したくないので強く出れない。



「で、いじめっ子はほとんど粛清しちゃったワケ?」

「……あと十数人でお願い(・・・)し終わるわよ」



 粛清だなんて人聞きの悪い。

 お願いと表現したまえ。



「早っ!?

 末端も入れたら四百はいたと思うんですけど」

「……演技ヘタすぎ。どうせ、どこかの誰かに進捗具合は聞いてるんでしょ?」

「えへへ~、ナ・イ・ショ――ォォォオオオイ!?

 痛い痛い痛い!!」



 あらやだ私ったら。ウザすぎて、思わずハゲ頭を鷲掴みしちゃった。

 涙目になってきたところで可哀想だから解放すると、ハゲ頭には指先の痕。



「…………一瞬、空から天使が降りてきたでござる」

「あんたん()、寺じゃん。仏教じゃん」



 それにしても、ハゲに情報を提供している奴は誰なのだろうか。

 ヤナメはそんな器用な事を出来るタイプじゃないし、やはり一番可能性が高いのはカイトだろう。でも、カイトはまだ帰国してないし……



「そういえば、カイトって無事にモケなんちゃらを発見できたの?」

「モケーレ・ムベンベな。

 昨日電話したら、今はチュパカブラを探してるみたいよ」

「……何やってんのよ、あいつ」

「自由人だからね~。

 さて、そろそろ休み時間になるし、拙者は行くでござる」

「うん」

「『うん』て、また授業サボんの?

 あんまりサボってると大変だぞ?」

「っ!?」



 …………まさか常識的な事をハゲに言われる日がくるなんて!

 でも、最近の私は正しく不良少女だしなぁ……

 アイマムヤンキーですよ。

 屋上を出ていくハゲに焼きそばパンでも買ってこさせようかしら。なんて考えたり。



「ああ、空が青い」



 荒んだ心には眩しすぎるわ。

 ここのところ無理をして動き回ってたからなぁ。

 そもそもお婆ちゃんのためとはいえ、脅迫とか性分に合わないし、疲れたよ。

 良い天気だし、今日くらいゆっくりと寝たい……


  ・

  ・

  ・




 ――テーン テーン テン テテテーン テテテーン♪




「誰だ! 私の眠りを妨げる奴は!」



 ウトウトしはじめたところで、不意にケータイが鳴った。

 最高にイライラしちゃうタイミングだ。

 ポケットから荒々しくケータイを取り出す。ハゲだったら、マジで焼きそばパンを買ってこさせよう。


 しかし、そこ表示されていたのは予想外の名前だった。



「……波花志遊?」

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