表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/27

小人の黄鍵


 女神の騎士【覇】は、俺達の動きを見て反応したかのように、移動速度低下のバッドステータスを解消する。これで健全な状態へと、黄金の騎士は戻った。次の瞬間にはこちらに向かって駆け抜けてくるだろう。


 そうなる前に、俺は視界のはしに手を伸ばし、固有スキル、ウェポンチェンジを発動する。黒曜石の宝石鎚から変更する武器、それはかつての戦国武将、立花道雪が雷に打たれた際に、これを切ったとされる刀だ。


 元の名を千鳥といい。この後に名を変えたとされる刃。その日本刀は、まさに雷を切った剣、雷切という名を冠している。稲妻を纏う鋭利な刀身が、柄と鍔から伸びる刀の装備武器、それを虚空から具現化させると、俺はほとばしる雷に向けて一閃を見舞う。


 瞬間、広範囲に放出されていた雷の一切が消滅する。雷切は、たしかに雷を切り払った。


「突っ込めッ!」


 すぐさま、第二の放電が開始されるが、それも雷切の一太刀により、掻き消える。そのまま雪崩れ込むようにして雷を切り払いながら突き進み。そして俺達は到達する、女神の騎士【覇】の懐まで。


 剣先で弧を描くようにして、横一閃に振るわれた大剣を、俺はその場で屈むことで回避し。そしてその大剣は直後、巨大な音を鳴らして停止する。同等の大きさを誇る戦斧によって、その進行を妨害されたからだ。


 鈴音が獣人の筋力をもって、黄金の騎士の攻撃を止めた。


 振り返ることもなくそう確信して、俺は更にその場から踏み込み、がら空きの胴を目がけて斬りかかる。薙いだ刃は黄金の鎧と接触し、そして弾かれることなく切り進み。鎧を断ち、肉を裂いて切り抜けた。


 さらに加えて第二撃、十六夜による剣技スキルが同じく黄金の鎧を断つ。やはり、その攻撃は弾かれず、完璧な一撃となった。推測は当たっていた。今現在において磁力は発生しておらず、攻撃が弾かれることはない。


 攻撃を加えたあと、背中側に抜けた俺と十六夜は、方向転換をして女神の騎士【覇】を視界に納める。その時、すでに攻撃モーションに入っている姿が見えたのだが、それが最後まで続行されることはなく。


「防御力低下!」


 黄金の騎士は、暗色のエフェクトにかかると同時に大きく怯む。鈴音が背後から戦斧を振るい、妨害魔法のスキルを発動したからだ。


 この機を逃すわけにはいかない。再び放出される雷を切り裂いて、俺達はまた懐に飛び込んだ。一閃、二閃、三閃と、位置を変え、角度を変え、攻撃を変え、幾度となく攻撃を浴びせ。反撃を貰うことがあっても、即座に誰かがアイテムを仕様し、体力は常に全快に保つ。


 その末に、炎の剣が黄金の鎧に突き刺さる。魔法耐性低下のバッドステータスにより、威力を増した十六夜の魔法スキルがダメージを負わせ。女神の騎士【覇】の体力は緑色から黄色へと変わり、残り二割を切る。


「両手は貰っていくぞッ」


 払うように薙いだ雷切が、黄金の騎士の両腕を切断する。宙へと跳ねる二つの腕と、巨大な大剣。これでこいつは攻撃手段を失った。欠損ダメージも入り、残り体力は一割未満となる。


 だが、ここではまだ終わらない。俺がその両腕を切断した直ぐあと、十六夜と鈴音が武器を振りかぶり、俺を飛び越して行ったからだ。剣に乗せた剣技スキルが唸りを上げ、巨大な戦斧の強烈な一撃が猛威を振るう。


 その二撃をまともに喰らった女神の騎士【覇】の体力ゲージは、黄色から赤色へと変わり、ついにはゼロとなる。斬り裂かれ、打ち砕かれた鎧の破片が飛び散り、騎士はその身を霞へと変えていった。


「み……ごと……なり」


 ふと、そんな声が聞こえたような気がした。


 この場にいる人間の声ではないそれは、女神の騎士から発せられたように思える。その真偽を確かめる術は、残念ながらもう無い。クエストクリアの文字の背景で、騎士の姿はすでに消滅していたのだから。


「終わった……ふぅー、一時はどうなるかと思ったぞ」

「勝てたのは、鈴音さんのお陰ね」

「いやいや、はじめやゆうなが居なかったら倒せて無かったよ」

「謙遜するなよ」

「ほんとだってー!」


 俺と十六夜にとっては二度目、鈴音にとっては初めてになる神出モンスターとの戦闘は、これにて終了した。何はともあれ、無事で良かった。今回、誰か一人でも居なければ、クリア出来なかっただろう。本当に運が良かった。


「……でも、これで終わりじゃあないのよね。女神の試練は」

「くぁー! そうだよ、神出モンスターを倒したからって、女神装備が手に入る訳じゃあないんだ。報酬次第で、また黒いのと戦わなくちゃあならないのか」

「んー……たぶんだけれど、その心配はしなくても良いんじゃあないかな?」

「どうして、そう思うのかしら?」

「なんとなく、いまピンと来たからかな」


 そこで各々の会話は途切れる。クエストクリアの文字が消えて、報酬画面が表示されたからだ。どうか女神装備があってくれますように。そう願い、懇願しながら、俺達はアイテムの一覧に目を通していく。


「ダメだ。俺のほうには出なかった」

「私のほうも全然。やはり、五回程度では出ないわね、レアなんて」


 何度も何度も挑戦し、運や確率の末に勝ち取るのがレアアイテムというものだ。五回程度の挑戦ではまだ足りない。もっともっとチャレンジしなくてはならない。と、そう分かっていても、気を落とさずにはいられない。


 悲壮感を抱くには、もう少し時間がかかりそうだな。


「ふっふっふー」

 がっくりと肩を落としていると、鈴音がいきなり不敵な笑みを浮かべ始める。

「なーに笑ってんだ?」

「なにって。やっぱりあたしがピンと来たときは良いことが起こるなって、そう思ったんだよ」

「良いこと? 良い事って……まさかっ」

「そう、そのまさかだよ。あたしの報酬画面にきっちり出たもんね、女神装備!」


 あんぐりと、開いた口が塞がらなかった。たぶん、十六夜も驚いて絶句しているのだろう。この寂れた廃工場のなかで、鈴音の声だけが木霊している。


「そう言えば、鈴音って昔からリアルラックが凄かったっけ」

「運が良いってこと? それはキャラのステータスではなくて」

「鈴音本人がって意味だよ。滅茶苦茶、運が良いらしいんだ、昔から。思い返してみれば、たしかにレア目当てでクエスト攻略に行くと、決まって最初に引き当てるのが鈴音だった。……思い返してみれば、俺が結婚するハメになったのも、それが原因だったかも」

「相当ね、その運の強さは。カジノに行けば大もうけ出来るんじゃない?」


 十六夜は冗談っぽく行っているけれど。たぶん、鈴音が本気を出せば、カジノ側が泣きを見るはめになると思う。今度一切、鈴音に賭け事の類いを薦めちゃあダメだな。確実に人生を悪い方向に歪めてしまう。


「ゆうなっ、あとでトレードしようね!」

「えぇ、ありがとう。鈴音さん」


 そんな会話もあって、報酬画面の操作は喜びと安心の中で終わりを迎えた。


 そして、次が出て来る。本来ならばそこで終わっている筈の報酬画面が、もう一度。今度は、神出モンスター討伐報酬という名前に変わって。


「これが二人が行ってた奴だね。報酬アイテムは……ドワーフの鍵?」

「また鍵か」

「ふむ、これはまた傾向の違うものが出て来たわね」


 神出モンスター討伐報酬として受け取れるアイテムは、全員分あるようだ。


 ゴブリンの鍵を手に入れた時と同じく、今度はドワーフの鍵というアイテムが、この場にいる全員に報酬として出ている。ということは、上限人数一杯までなら、鍵のアイテムを増やせるってことか。


「ドワーフってたしか、なにかの妖精だったよな?」

「えーっと、たしか、小人みたいな奴だったと思う。ちっちゃいの」

「まるで関係性がないわね。女神の騎士と」


 ゴブリンジェネラルを倒して得た報酬が、ゴブリンの鍵だった。けれど、今回、女神の騎士を倒して得た報酬は、ドワーフの鍵だ。たしかに傾向が違っている。


 神出モンスターの討伐報酬は、なにも討伐したモンスターと関連づけられた物に限られる訳じゃあないのか? もしくは何かを見落としているだけで、本当は繋がりや関連性があるのかも知れない。


「でもまぁ、それは後で考えるか。ようやく装備が揃ったんだ。今は報酬画面とボーナス画面を終わらせて、はやく女神装備一式のお披露目会にしよう」


 鍵のことは一先ず後回し、問題の先送りだ。


 俺達はドワーフの鍵を手持ちのアイテム欄に移したあと。報酬画面を閉じて、次に出て来るボーナス画面で、プライスレスボーナスを振り分ける。そうして、クエスト関連の操作をすべて終わらせると、待ちに待った女神装備のお披露目会だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ