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6. 憧れのマイホーム



 無言のまま二人は指定された家に着いた。

 サラリーマンがローンを組んでやっとの思いで買うことのできた家、そんな感じの立派な家立った。

 あれだな、なんだかそんなことを考えていると第二子が出来て資格が2級から1級になったみたいな感じだな。

 …意味わからんな。

「じゃ、入りますか」

「そうしましょう」

 とにかく家の前で固まっていても仕方かないのでおとなしく部屋に入った。

 自分の部屋を確認すると、

「あ、ありえん」

 まったく同じ位置に同じものが置いてあるのである。

 ベットと勉強机とクローゼットと読書用の本棚、筋トレ用品、冷蔵庫がまるで同じ位置にある。

 あれ?机の上に通帳がある。昨日振り込んであるのが……3万。え?

 叔母さん……お金の使い方、間違ってる。

 着替えようと思ったのだが、女性と一緒に生活するのだ。ジャージはどうかと思うだろう。と言っても彼女がジャージだったら……似合わないな。

 取りあえず一周してジャージにした。

 下のリビングに行くと、

 ジャージにエプロン姿で鴻が料理をしていた。

 ジャージと言っても紺色でオレンジのラインが入ったものでなかなか綺麗だ。髪をまとめているので白いうなじがセクシーである。

「あ、天城くん降りてきたんですね、ってジャージですか」

 鴻に対して俺はよくありそうなブルーのジャージ。白のラインが入っている。

「なんとなくジャージです」

「なんとなく…ですか。嗚呼、気づいたと思いますが母がお詫びに、と言うことで3万月々で振り込んでくれるそうです。生活費は別で私に預けられているのでエッチな本は生活費では買えません」

 ……なんかお堅いイメージがあった子の発言だと信じられない。

「…天城君。私のことを堅苦しいとか、真面目すぎる人なのに……とか思わなかった?」

「はい。思いました」

「はぁ、素直は良いけどそこは嘘でもいいえと言ってほしかった。私もそんなお年頃ってことだよ」

「わかりました。ではもうちょっとフレンドリーに名前で呼んでください」

 だ、だってこんなかわいい子に綺麗な声で呼んでもらいたいだろ?「天城」って。

 ましてや引きこもり歴1年の俺は名前で呼ばれたりなんかしたらビクビクするだろうから。小動物のごとく。

「り、凛久君、それとも凛久。どっちがいい」

「ぐはっ」

 元ヒッキ―、そんな美少女に呼ばれても平気な抵抗はついておりませぬ。

 仰向けに倒れる。

「だ、大丈夫か?」

 料理をしていた手をいったん止めてこちらに小走りで寄ってくる。

 なんて心優しいんだろう。

 なんか泣きそう。

「わ、私に名前を呼ばれるの嫌だったりします?で、でもフレンドリーにと――」

「ストップ。オイオイ詳しいことは晩飯食べてる際に言うが、鴻さんみたいな美少女に名前を呼ばれて嬉しくないわけない訳ないじゃないですか」

「なっ!り、凛久には生の食材しかテーブルに並べてあげないからな!」

 地味に酷い。でも別に困らない。

 元ヒッキ―は料理くらいできる。

 あ、なんか小説のタイトルにありそう。

 なんて考えながら4人掛けのテーブルに腰を掛けていると。

「ど、どうぞ」

「本当に生だ」

 キャベツ、豚肉、卵、……etcすべて生である。まあ大丈夫だ。

 鴻が自分で作ったのはお好み焼き。何故お好み焼きをチョイス?

 幸い材料があるのでテキパキと料理をする。

 35分後、普通にできだ。 

 上にトッピングで揚げ玉とか紅ショウガもいいな。

「……なんでこんなに料理が上手いんだ?」

「これもオイオイですね。食べましょうか」

 律儀にも食べないで待ていてくれた鴻。

「では、いただきます」

「いただきます」

 再び無言になり、半分ぐらい食べ終わった後、

「凛久はなんで敬語を使っているんだ?」

「嗚呼、それはですね、あって最初に言いましたが引きこもり歴1年。鴻学園に合格してから高校1年は部屋にこもりっぱなしで不登校になってたんです。唯一会話してもネットの文字越し、普通でも次元の離れてる人間ばかりで会話能力が低いのでなんとなく敬語を使ってるんです」

 唯一交わしたのがネット越しでの友人、『ユー』あいつとは半年ぐらいやり取りしてないな。文面からでも真面目さがにじみ出てくるような奴だったから、今頃うまくやっているだろう。男子バレー部だったらしいし。とふと思う。

 一応、バイトで色々な人と話をしているが全員俺の年上かタメだけど、各上。よって敬語。

「……私と会話するときは敬語はナシにしてください。ダメですか?」

「…それでいいのでしたら」

「敬語」

「…わかった。これでいいのか?」

「はい」

 たぶんこの人も知らず知らずのうちに小枝子さんの悪影響を受けている気がする。

「よかった。私にため口をしてくれる人なんて1年の頃からいなかったからな」

 そりゃ美人でクールな美少女にタメ口なんてまずいないだようからな。

「何とゆうか近寄りがたいオーラがあるな」

「私はそんなに怖いのか?目つきが悪いのに自覚はあるが」

「お前は大きな間違いをしている」

「え?」

「お前が美人で綺麗な美少女。多分だが成績も良いだろ?自分から声をかけるなんて難しいだろ?鴻から声をかけてもらっただけで緊張して返事がしにくいとかだと思うぞ俺は」

 あ、やっぱりマヨネーズはカロリー半分じゃないほうがおいしいな。

 そういや誰かがカロリーの高いものはだいたい美味しいとか言ってたな。

「なななななななな、なんてことをさらっと言うんだ君は!私が美人?眼科に行った方がいい!」

 重傷だ。自覚なしの美人タイプ。

「お前モテモテだろ?下駄箱にラブレターとか、屋上に呼び出されるとか」

「……何回かある」

「とりあえず言っておくが小枝子叔母さんがお前を可愛いとか綺麗とか言ってるのは間違えなく本心だ。知ってるだろ?あの人自分の興味あるもの以外は割とテキトーって事」

「嗚呼」

「だから自信を持て、鴻」

 思わず持っている箸の先を向けてしまう。

 行儀悪いな俺。

「ありがとう、凛久」

 一回軽く俯いてから俺に向かって笑顔で言った。

 ぐはっ、なんだこの破壊力。ありえん。

「なぁ、凛久。鴻じゃなくて名前で呼んでくれると嬉しい」

 …生まれて来てよかった。

「…凛久?嫌なのか?」

「違う、むしろうれしい。よろしくな要」

「よろしく!」




 赤面症の少女とジゴロの話が始まろうとしている。



やっとプロローグ終了みたいなノリです。


お気に入り登録70件突破。ビックリでした。

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