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2.母親と言う強敵とサバ

 これ引きこもりと違うぅぅぅぅと叫んでみた今日この頃。

 

 母親と言うのは生みの親、自身の腹を痛めてなお新たな生命のために頑張り、時に厳しく、時に優しいかけがえのない存在であろう。

 そんな母親が現在リビングのテーブルを挟んで対立している。

 母さんは何処か忘れたけど会社のお偉いさん。昼食は基本的にいつも家。

 晩飯をよく部屋の前にお金が置かれていた。

「……取りあえず、私は今の現状を理解できてないから色々と説明してくれる凛久」

 現在僕こと、天城凛久は非常にピンチな状況に陥っている。

「その前に昼食とってもいい?」

 そう、昼食が覚めてしまうことだ。

 豚肉と言うのは割を早く冷めてしまう。ご飯の上に置けば割と暖かくおいしい状態で食べられるのだが。

「はぁ、とりあえず私もご飯食べたいから私が作ってるうちに考えなさい」

 お言葉に甘えご飯を食べ始めた。

 我ながらうまく作れたものだ。1年間は伊達じゃない。

 自分が半分食べ終わる頃には母さんは自分の分の料理をテーブルに置き、

「さあ、話してもらおうかしら。取りあえず、バイトのことと、そのご飯のクオリティーの高さ」

「バイトは隣町の喫茶店とか、ガテン系のバイトとか、その他色々。ご飯はふと興味が沸いたから自分で作り始めた。いろいろ作りたいと思ったけど、勝手に冷蔵庫の中身使ったら悪いから自分でバイトした金で作って食ってる」

 ガテン系の仕事でオッチャンとかにはいろいろ世話になったな~。最近の若者にも根性ある奴もいつじゃねえかとほめられたこともあったし。

 今のバイトはバイトとは言い難いけど。

「……本当に凛久?」

「たぶん息子の凛久。成績はいつも後ろから2,3番目、キングオブ能無し。義次よしつぐ兄さんとは頭のレベルの違う叔母の脛齧って高2になった凛久くんですよ」

「その言い回しは確実に凛久だわ、いつの間にそんなに身長伸びたの?去年の今頃は今より15センチは小さかったはずよ」

「毎日20キロ走ってたら伸びた」

「………はぁぁぁぁっ?!20キロ?あの運動音痴の凛久が?ありえない。ありえない」

「信じるか信じないかはどうでもいいけど。ごちそう様。勉強が中途半端だから自分の部屋もどる。小枝子叔母さんに言っといて春休み終わったら学校行くって」

 ぽかんとした顔の母を置いて自分の部屋へ向かった。




 勉強をひと段落終えたころには2時になっており、ちょうどいい時間帯になったので着替えてバイトに向かった。

 兄の義次に頼んで許可をもらいバイクの免許を取ったので近くの駐輪場に止めてあるバイクで少し遠い所にある撮影現場に向かった。バイクは兄さんに去年の誕生日にくれた。

 何故撮影現場なんかにいるのかと言うと、居酒屋でバイトしてる時になんか知らないけどに声と顔がぴったりだとか言われてドラマの監督さんに捕まり、ドラマのヒロインの兄と言うポジションの役をすることになった。今日がそのドラマの最終回の撮影。結構視聴率のいい番組で自分が出ていることに少し申し訳なさを感じてしまう。

 現場に入って監督さんに挨拶をし、少しメイクを受けてウイッグをかぶり、なんちゃって役者の出来上がり。

 役柄がタラシの変態シスコンでやるときにはやるというなんかよくあるポジション。

「どうもこんにちは、リクトさん」

 再び現場に入ると、役柄上妹に当たる人気若手女優の美鈴飛鳥さんが挨拶をしてくれる。現在17歳の現役高校生である。高校は芸能学校だそうだ。ちなみに所属事務所は兄さんの会社。

 灰葉リクト…完全に偽名のフリーの役者である。ちなみに監督さんが即興で考え付いた設定である。年齢もサバを読んで20歳と言うことになっている。

 それに疑問を持たれない僕は多分老けているのだろう。

 それと有名な監督さんがやるドラマだから役者として朝のニュース番組にも何回か出ている。司会者の人には普段の状態とドラマ上の役とまるであってないとか言われるけど。

「こんにちは、美鈴さん。今日で最終回最後のシーンの撮影だから気合を入れて行こう」

 声をかけあい、ドラマに望む。


 このドラマのあらすじは、

 教師の木戸きどが普段は物静かで目立ったところがない女子生徒の霧島とのいけない関係を描く話で、二人が結ばれるもその二人の関係を認めない霧島の兄と木戸の同僚で女史の人を巻き込んだラブコメディーである。


 で、その霧島兄こと霧島陸人を演じるのが僕である。

 監督さんにその見た目に『僕』は似合わないから『俺』にしろと注意を受けてそれがだんだん慣れてきている。と言うか俺の方がしっくりくる。成長したってことか。

 そしてこの作品の最後には結婚式でキスをする直前で終わるシーンがあり、今俺はロケ地の教会の最前列にいる。

 エスコートも俺だった。

「カァァァァァァット!!」

 監督さんの大きな機嫌のいい大きな声で撮影が終わった。

 現在ドラマが放送されているのが9話で全12話となっている。

 原作は小説なんだがそれもすでに完結していてこれと同じように終わったので2期はない。

 これで終了である。結構いい収入になった。引きこもり学生の稼ぐ金額じゃねえよな。

 時刻はだいたい夜の9時近く。

 夜の教会で結婚式。結構ロマンがあった。協会の天窓がちょうど月が出てくるタイミングもあったからかな?

「灰葉、打ち上げに行こうって話になってだが行くだろ?」

「ええ、行きますよ南さん」

 教師、木戸役を演じた南孝也さん。年齢は21。俳優歴4年。高校生の時にデビューしたそう。なんな人に声をかけられる。

「最後の最後まで敬語だったな、そうでしょ監督」

 俺をここにひっぱて来た張本人の監督。

 40代の白いひげがかっこいい監督である。

「そりゃ仕方ねえだろ4つも年離れてるんだからよ」

「……灰葉って20歳じゃなかったすか?」

「いんや、俺がサバ読ませただけだぜ、それだけ老け顔ってこった。はははっは」

「灰葉、マジでか?」

 心底驚いた顔でこちらを見る南さん。

「どうせ俺は老け顔っすよ。ホスト役なのにドラマの中のワインとかグレープジュースですよ、その上まったく煙草も箱をポッケに入れてるだけで電子タバコでしたし。最近の奴ってよくできてるんですね」

「監督、てっきり騙されたんですが」

「ああん?何のことかわかんねえな」

 明後日も方向を見ながら口笛を吹く。あ、ドラマの主題歌だ。

「あ~もいいや、とりあえず灰葉ケータイもってるか」

「ああ、この頭のおかしいバカントクを救急車で運ぶんですね」

「ちげえよ」

 自分の手元で119番にかけようとしたスマホを奪われ、2分ほどたった後返される。

 家族しかはいってねえのかよ、と言われなんとなく予想がつく。

「ほれ、俺のアドレス入れといたから人生の先輩に困ったら何か聞けよ」

 狩野孝也と携帯に表示される。

「これ、本名じゃないっすか?」

「いいんだよ、その代り変な奴に教えんなよ」

「ありがとうございます?」

「なんで疑問形なん。素直に喜んどけ」

 頭を軽くぶたれながら、打ち上げに行った。

 その後監督と美鈴さんのアドレスもケータイに追加された。


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