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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の参 覚 ( サトリ )

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覚(11)

 何が起こったのか全く理解出来なかった。

 今まで僕は自分の部屋で父と話をしていた。

 そして父の口から信じられない言葉が飛び出し、その事にショックを受ける間もなくこの暗闇の中に立っている。


「ここは……夢の中?また僕は意識を失ったの?」


 そう独り言ちるも誰からの返事もない。


 上も下も、右も左も分からない闇の中。

 目は開けているのに閉じているような真っ暗な視界。

 僅かに足の裏には地面を踏んでいる感覚があるけど、ここから一歩でも動けばどうなるのか分からない。

 それに夢にしては妙にリアルだ。

 意識もはっきりとしているように感じるし、全身の感覚もしっかりとある。

 何も聞こえないけど、それはこの世界に音が無いというだけなんだろう。


(力を無くしたお前に何の価値があると言うのだ!!)


 さっきの父言葉が頭の中に蘇る。

 あれが父の本心だったんだろうか?だからこそこれまで僕を育ててくれていたの?

 父だけは特別だと思っていた。

 僕の力に怯えることはなかったし、どんな時も味方でいてくれた。

 唯一本心を確認出来なかったけど、それでも僕は何の不安も感じる事はなかった。純粋に父の言葉を受け入れていたから。


 でも違ったのかもしれない……。

 父は最初から僕の力を利用する為に……。

 そこまで考えて僕は頭を振る。

 いや!そんなはずないじゃないか!


(会長って本当に気が利くよね)


 ふいに女の子の声が聞こえた。

 誰だろう?聞き覚えがある声のような気がする。


(本当。こっちが言う前から全部分かってるみたいに先読みして行動する感じ)


 ああ、これはクラスの女子だ。

 あまり話した事は無いけど……。


(でもあれって他の人にも同じような感じでしょ?何か心を読まれてるみたいで気味悪くない?)


(ああ、それ分かる!めっちゃ優秀なんだけど、優秀過ぎて変な力でもあるんじゃないかって思っちゃうよね!)


 ――!?


(他の子もそんな事言ってたよ。会長は気味が悪いって)


 そんな……僕はみんなの事を思って……。

 いや、違う。これは彼女たちが言っているんじゃない。僕が勝手に見ている夢なんだ。


(神代、最近調子悪そうだな。ずっと顔色悪いし)


 これは河上の声か?


(まあ、あいつがいないと俺は気分が良いけどな)


 え……。


(席が近いから話しかけたりするけど、どうもあいつと話してると心の中を覗かれてるみたいで気持ち悪いだよな)


 河上……お前まで……。


(このまま学園辞めちゃってくれねえかなあ)


 落ち着け……これは夢だ。

 僕の被害妄想が生み出した悪夢なんだ。


(ああ、河上君もそう思ってた?私もずっと思ってたんだ)


 川上に話しかけているのは千堂さんか。


(最初は私も神代君て頭も良いし、顔もそこそこだし、将来有望そうなんで気になってたんだけど、毎朝話する度に気味悪く感じるようになっちゃって。出来れば早く席替えしたいって思ってたのよ)


 だって挨拶をしてきてくれてたのは千堂さんの方じゃ……。


(でも今度は近くの席になるとか嫌だから、それなら神代君が学園を辞めてくれないかなあ?ってずっと思ってたんだ。もう同じ教室の空気を吸っているのも嫌なの)


 そこまで僕が嫌だったの?

 そんな声は聞こえてこなかった……どうして……。


さとる。これが真実だ」


 その声にビクッとして振り返ると、そこには父が立っていた。


「お前がこれまで意識して聞かないようにしてきた者たちの本心。お前に向けられる悪意を、お前は無意識の内に聞かないようにしてきていた」

「……そんな事」

「現実から目を背けるな!真に知らなければいけないのは人の悪意!それを手に入れる事が出来れば、その相手を自由に操れる傀儡にすることが出来るのだ!!そうすればこの国を手に入れることすら可能なのだぞ!!」

「嫌だ!!そんな事知りたくないし、したくもないよ!!」

「甘えた事を言うな!お前の力はその為にあるのだ!そして全ては私の為に!!さあ全てを受け入れろ!そうすればお前の力は真の覚醒を迎えることになるだろう!!人の善意も、悪意も、全てはお前が支配することが出来るのだ!!あはははははははっ!!!」


 そう言うと、父はまるで何かに憑かれたかのように笑い出した。




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