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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の参 覚 ( サトリ )

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30/35

覚(2)

(ヤバい……めちゃめちゃ緊張する)

(すげえみんな見てるじゃん!あんまこっち見んなって!)

(えっと……台詞なんだっけ……まず部活名を言って、それから……)


 体育館には今月入学したばかりの新入生が座り、壇上では運動部、文化部の順番で交互に各部活のPRが行われている。

 ユニフォーム姿で素振りをする部員の前で大会の成績を発表していく野球部や、演劇風に説明をしていく演劇部。新聞部に至っては壇上から降りて新入生にインタビューをしていた。

 しかし共通して言えるのは、みんな緊張しまくっているということだ。

 彼らの心の声が誰かに助けを求めるように聞こえてくる。


 どこを見て話せば良いのか分からずに生徒ではなく体育館の後方の扉を見つめながら話す者や、台詞が完全に飛んでしまって棒立ちになり、それに気付いた他の部員に耳打ちされる者。登場した全員がテンパってしまって、詳しい説明をしないままに「うちに来てください!」と叫んで終わる部活もあった。


 二年前に自分がこの八百万学園に入ってきた時も、先輩方は同じようにガチガチに緊張しながら話していた事を思い出して微笑ましい気持ちになる。


「ご、ご清聴、ありがとうございました!」


 最後に新聞部のスピーチが終わり、全ての部活動紹介が終了した。


「それではこれにて全部活の紹介を終わります。入学前に聞いているとは思いますが、当学園では必ずどこかの部活動に所属することが決まりとなっています。また、その部の了承があれば掛け持ちでの所属も可能ですので、皆さん、よく考えて選んでください。それではこれにて部活紹介を終了します」


 司会進行役だった僕は最後にそう言って閉会を告げた。




「ヤベえ!めっちゃ緊張した!大失敗だあ!!」


 教室に戻ると河上がそう言いながら机につっぷして倒れた。

 彼はサッカー部の部長として壇上でリフティングをしながら説明を行っていたのだが、途中でコントロールを誤り、強めに蹴ってしまったボールが強面の教頭先生に直撃するというハプニングを起こしていた。

 あれが全体を通して一番新入生たちが盛り上がった場面だ。


「かなり緊張していたみたいだね」

「かなりとかってレベルじゃねーよ……。あの人数に見られるのがこんなに緊張するもんだとは思ってなかったわ。お前よく生徒会長なんてやってられるよな……。しょっちゅう壇上でいろいろ喋ってるじゃん」

「まあ、最初は緊張したけどね。今は慣れたのかな?」

「無理だわあ……俺は慣れる前に心が死んじゃうって……。あ!なあ神代!教頭にぶつけたからって今期のサッカー部の予算削られるとか無いよな!?」

「どうかな?もしかしたら予算ゼロって事も……」

「嘘だろ!?お前の生徒会長パワーで何とかしてくれよ!!」

「冗談だよ。教頭先生も笑ってたし、そんな事にはならないって」

「本当か!?絶対に!?」


(痛たたた……急にボールが飛んできてびっくりしました……まあ、生徒たちが盛り上がっているならピエロになるのも良いでしょう。彼も悪気があったわけじゃないのは、あの今にも泣きだしそうな顔を見れば分かりますからね)


 痛そうにしてたけど、途中からはわざと大袈裟に痛がっていたみたいだし。


「うん。絶対に大丈夫。教頭先生は見た目は厳ついけど、生徒想いの良い先生だからね」

「そうか……お前がそう言うなら大丈夫だな……」


(こいつが人の評価を間違う事なんて無いだろうし)


「……うん。大丈夫だよ」


 心の声が聞こえたからとは言えない。

 僕は彼の信用を裏切っているような気分になって少し気分が落ち込んだ。




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