表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の弐 河童(カッパ)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/28

河童(10)

「なんだよ。どうしてもおれたちとあそびたいのかよ」

「……うん」

「ええー。だってのぞむはどんくさいからなー」

「だよなー。いっしょにあそんでもつまんねーよ。ことねもそうおもうよなー」

「え?わたしは……」

「じゃあさ、このかわのむこうまでわたれたらいっしょにあそんでやるよ」

「え……」

「だなー。ここをわたれるゆうきがあるやつじゃなきゃいっしょにはあそべないなー」

「ふたりともやめなよ……。むりだよ……」

「……やる」

「だめだよ……。のぞむくんもやめときなよ……」

「よーし、じゃあおれたちが《《みとどけにん》》な」

「がんばれよー」



「…………」

「どうしたんだよー。はやくわたれよー」

「…………」

「はやくしないとかえっちゃうぞー」

「……こわい」

「なんだ、やっぱりのぞむはどんくさいな。そんなやつとはいっしょにあそべないよな」

「のぞむくん、もういいよ……。あぶないよ……やめようよ……」

「じゃあおれたちがてつだってやるよ」

「え?……ぼくのランドセル」

「えいっ!」

「ああー!!」

「ほら、はやくとりにいかないとながれていっちゃうぞー」

「ランドセル!ランドセル!!――わあっ!!」

「のぞむくん!!」

「おい!!」

「たすけっ!!あぶっ!あしがっ!――ぶふぁっ!」

「ねえ!はやくのぞむくんをたすけないと!!」

「え!?いや!むりだよ!おれおよげないもん!」

「お、おれも……。そ、それに、このさきはあさいからだいじょうぶだって!ほらっ!なつはいつもかわのなかであそんでるじゃん!」

「そうだけど……」

「お、おれかえる!」

「あ、おれも!」

「ねえ!まってよ!ねえって!」




「まさか……今の話は……」

「三人とも最初に聞き込みした時には、希のことは知らない。見ていないと言っていた。それが急に揃って証言を変えた。本人たちが言うには、希が流されたのを見ていたのに助けなかったことを怒られるのではないかと思ったかららしい。でもおかしいだろ?あの子らはどこから希が流されていくのを見たんだ?あの堤防の上からか?あの場所から、この長い草が生い茂っている河原にいた希を見つけることが出来るのか?俺は自分が希の父親だということを伏せて、西村祐輔に本当の事を話すように説得した。希の事は事故だから、自分たちが何をやっていたとしても何の罪もない。ただ、警察の仕事として、本当の事をまとめないといけないんだ、と言ってな。そしたら簡単に話してくれたよ。自分たちが河原で遊んでいる時に希がやってきたことも、そして仲間に入れて欲しいと言った希に対して何をやったかもな」


 豊峰の言っていることが真実なのかどうか、それは袴田には判断がつかなかった。

 しかし、おそらくはすでに二人の子供を手にかけているだろう豊峰である。そんな凶行に彼を走らせた理由があるのだとしたら、彼の言っている事も本当なのかもしれないと思えた。


「もし、その話が本当のことだとしても、自分の父親がそんな復讐をして希くんが喜ぶとは思えません」

「復讐?ああ、そう思われてもおかしくはないか。でも別に復讐するつもりなんてない」


 豊峰は一瞬不思議そうな表情を浮かべたが、すぐに合点がいったという顔をした。


「……違うんですか?」

「西村祐輔に聞いたんだ。どうして希と遊んでやらなかったのかって」

「……え?」

「そしたら何て言ったと思う?希は別に「いらなかった」んだとよ」


 顔色一つ変えることなく淡々とそう話す豊峰。

 そこには一切の怒りの感情など感じ取れなかった。


「それは俺にとっても同じこと。俺にとってこの子らは「いらない」子だ。必要なのは希一人。どんな姿になっていても良い。希が、希だけが帰って来てくれればそれで良いんだ」

「それなら……どうして……。そんなことをしても希くんは……」


 川に流された希。

 同じ川で行方不明となった二人の児童。

 復讐ではない。


 いらない……。


 いらなかった……。


 必要なのは希だけ。


 どんな姿になっていても……。


 袴田の頭の中に一つの考えが浮かび上がる。

 しかしそれは口にするのがはばかられるような悍ましい考え。

 それでも、答えはそれしかないのではないかと。



「警部……あんたまさか……希くんの遺体を捜す為だけに……」



「なあ袴田。同じ場所から同じような体格の子供を流せば、今も見つかっていない希がいる場所に辿りつくとは思わないか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ