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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の弐 河童(カッパ)

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河童(8)

 希の事故のことが書かれた写しをパラパラとめくっていくと、事故発生当時からの捜査内容が日付ごとに記されていた。

 その中に、事故当日、希らしき児童が一人で堤防付近を歩いていたのを見たとする証言が数件あり、その服装や時間的にも希本人で間違いないだろうとのコメントがされてある。

 おそらくはこのすぐ後に、希は何らかの理由で河原へと下り、そして普段よりも水嵩の増していた川に誤って流されたのだと思われた。


 そしてその後は亀水川周辺の捜索状況についての記述が続く。

 捜索二日目にして希のものと思われるランドセルが川下で発見されたという記述があり、それ以降の捜索では何の手がかりも見つかっていなかった。


 そして徐々に捜索に導入されている人数が少なくなっていき、捜索開始から十日後に、希は単独で誤って川に流された事故であったとの結論が出されていた。


「――え?」


 その結論に至った理由が書かれている箇所を見て袴田は一瞬息を飲んだ。


 そこには、捜索から一週間が経った頃、希が一人で河原で遊んでいて、川に流された瞬間を見た目撃者が複数名見つかり、その証言内容が真実であると判断されたからだとあった。

 周辺の聞き込みに関しても当初から多くの捜査員を導入して行われていた。それなのに、一週間経った頃に突然現れた目撃者。しかも複数名。ありえないことでは無いが、やはり不自然であると思わざるを得ない。

 しかし袴田が驚いたのはその点ではなかった。


(これは……偶然なのか?)


 目撃者として記載されていたのは三名。

 その名前を見て、袴田の心がざわついていた。


「お、まだ残ってたのか」


 部屋の扉が突然開き、袴田の姿を見た伊関が驚いたように声をかけてきたが、本当に驚いたのは声をかけられた側の袴田である。


「あ、ええ、さっき戻ってきたところで……。伊関さんこそまだ残っていたんですか?」


 部屋の時計はすでに19時を回っており、袴田は他の皆はすでに帰宅していると考えていた。


「いや、結構前に戻って来てたんだけどな……。トイレに行った時に太田さんに掴まって、今までずっと本部長への愚痴の相手をさせられてたんだ……」

「それは……ご苦労様でした……」

「本当にご苦労だったよ……。捜査より疲れたわ」

「あの、警部はすでに帰られてますよね?」

「おん?いや、先に帰るんだったら太田さんに連絡入れるんじゃないか?俺が帰ってきた時にはまだ戻って来てなくて、太田さんが俺といる間はそんな連絡は無かったから、まだ戻ってないんじゃないのか?……だとしたら遅すぎるな。この時間まであの人が連絡も入れないなんて何かあったんじゃないだろうな……」


 伊関は豊峰のデスクの方を見つめながら心配そうにそう言った。


 その時、伊関の携帯電話が鳴りだす。


「ん?太田さんからだ……」


 袴田を嫌な予感が襲う。


「はい伊関です。……はい。ええ、まだ戻っていなくて、今も袴田とその話を――え?はい…………はい…………。分かりました。まず俺たちは警部と連絡が取れないか確認します。……はい。……失礼します」


 太田からの電話を受けていた伊関の顔は真剣というよりも何か深刻なトラブルが起こったという表情に見えた。


「……課長も警部を探してるんですか?」

「ああ……。太田さんが警部に連絡を取ろうとしてるんだが取れないらしい。どうやら携帯の電源が切られているみたいでな」

「電源が……切られている……」

「警部が自分で切るはずはないし、もしかしたら何か事件に巻き込まれているのかもしれん。それと――」

「まだ何かあるんですか?」

「ああ、太田さんが警部を捜してるのもその件でなんだけどな。今さっき太田さんのところへ――」



 伊関の口から語られた内容に、袴田の中にあった一つの疑念は、徐々にはっきりとした輪郭を浮かび上がらせていった。




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