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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の弐 河童(カッパ)

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20/26

河童(6)

 S県警捜査一課は捜査本部の指示に従い、付近住民への聞き込み調査にあたっていた。

 豊峰はこれまでに何度か尋ねたことのある家の聞き込みを終え、自動販売機で買った缶コーヒーを開けると、それを一息で飲み干した。


 この周辺の家を聞き込みで回るのは、ここ半年の間で三度目。

 最初は希が行方不明になった後すぐ。どうしても事故だと信じられなかった豊峰は、個人的に希の目撃情報を求めて訪れていた。

 本当は誰かによって連れ去られてしまったのではないか?

 今もどこかで自分の助けを待っているのではないか?

 そう思い込むことで、自分の心の安寧を求めていたのかもしれない。

 そうして非番の日にはこの周辺の家々を訪ね歩いていた。

 もちろんその事が上に知られてしまうとマズイことは豊峰も重々理解はしていたが、それでも何も行動を起こさずにいることは出来なかった。


 結果的に収穫が全く無かったわけでもなかった。

 しかし、それは希が川で溺れたことを裏付けるものでしかなく、豊峰は知りえた情報によって更に苦しむこととなった。


 そんな中、先月の児童行方不明事件が発生する。

 最終的には事故として処理され、豊峰のところにお鉢(担当)が回ってくることはなかったが、発生前は希について、発生後は西村祐輔の件についても独自で聞き込みを続けていた。


「こんにちは」


 空き缶をゴミ箱に入れていると、ふいに背後から声をかけられる。

 どこかで聞き覚えのある声だと思いながら振り向くと、そこには制服姿の男子が高校生が立っていた。


「ああ、君か。今日は明るい場所で会ったね」


 数日前に亀水川の河原で出会った少年。

 あの時と同じ夏の制服姿の少年は、切れ長で少し吊り上がった鋭い目つきに落ち着いた話し方の低い声。豊峰よりも身長が高いこともあってか、明るい場所で見ると余計に高校生とは思えないような貫禄を感じた。


「ええ。今日は期末テスト前の短縮授業でしたから」

「もうそんな時期なんだね。テストって聞くと学生時代を思い出して憂鬱な気分になるよ」

「そうですか?刑事さんなんですから、学校の成績は良かったんじゃないですか?」

「いやいや、私はずっと柔道をやっていてね。その関係で大学までいかせてもらったんだ。それでそこの恩師の勧めで警察官になった。コネみたいなもんさ」

「警察官とはコネでなれたりするもんなんですか?」

「さあ?実際にどうだったかは知らんよ。でも、俺の頭で試験に受かったことが不思議だって今でも思っている。……私は何を話してるんだろうね」

「あ、すいません。余計な事を話させてしまって」

「いや、私が勝手に喋ったんだから気にすることはない」


 そう言った豊峰だったが、仕事柄相手に話させることは慣れているが、自分からこんなにも話してしまったことに違和感を感じていた。


「君の落ち着いた雰囲気のせいかな。つい余計な事を喋ってしまった」

「よく話しやすいと言われますよ」


 一見すると近寄りがたい雰囲気に見えそうだと豊峰は思ったが、その少年は顔色一つ変えることなくそう言った。


「じゃあ、私は仕事があるんで失礼するよ。君もテスト頑張って」


 そう言うと豊峰は軽く少年に手で挨拶をして歩き出した。


「ありがとうございます。刑事さんもお仕事頑張ってください。でも――あまりあの川には近づかないことをお勧めしますよ」


 少年の言葉に一瞬足を止めた豊峰だったが、その忠告が先日のことを指しているのだと考え、そのまま振り向くことなく次の家へと向かった。




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