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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の弐 河童(カッパ)

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19/26

河童(5)

 七月の強い日差しが照り付ける中、袴田は連日にわたる住民への聞き込みを続けていた。

 森一翔が最後に防犯カメラに写っていた周辺から徐々に範囲を広げながら、袴田を含む多くの捜査員が一翔の目撃情報や、付近で不審な人物を見かけなかったかなどの聞き込みを行っている。

 数日前から公開捜査となり、一翔の名前や顔写真が一般に公開されたが、今のところ有力な情報は何一つとして寄せられていない。


 子供一人が忽然と消えたにも関わらず、不審な人物、不審な車などの目撃情報が全くない。現在推測されている行方が分からなくなった時間が、まだ陽も落ちていない明るい時間帯だったのにだ。

 当然、防犯カメラにもそれらしきものは映っていない。

 袴田は亀水川の堤防から眼下に流れる川を睨むように見る。


 今日も河川の捜索は行われているはずだが、捜索場所が異なるのか、捜索に関わる人員が縮小されたせいなのか、袴田から見える範囲に人影の様なものはなかった。


 先月も同じような事件が起こっていた。

 今回行方不明になった一翔と同じ学校に通う児童が、やはりこの付近で見かけられたのを最後に行方不明となっている。

 その時も大規模な亀水川周辺の捜索が行われたが、発見されたのは児童のものと思われるランドセルだけだった。

 上の判断としては、一人で河原で遊んでいる最中に誤って川に流された事故ということになり、その件の捜査が自分たちのところへ回ってくることは無かった。しかし、それが一か月が経った今になって掘り起こされ、今回の件と合わせた連続児童誘拐事件という形で再捜査も含めた大事になるとは、袴田を含め、捜査一課の誰も思いもよらないことであった。


(もしあの子も誘拐されたのだとしたら……)


 先月の件も含め、今のところ犯人から金品を要求する連絡などは入っていない。

 となると、誘拐の中でも児童にとって危険性がかなり高いものであるといえる。

 身代金を目的としない誘拐だとしたら、犯人が子供を無事に返すということはあまり考えられることではなかった。今頃は――


 袴田の中に胸糞の悪い想像が浮かび上がり、それを頭を振って打ち消そうとする。 

 まだ誘拐かもしれないという予想でしかない。

 結局は事故かもしれないし、誘拐された先で無事かもしれない。

 自分に出来ることは、一翔を見つける手がかりを探し出すこと。

 僅かな希望かもしれないが、刑事の自分が絶望を抱くには早すぎる。

 その希望の根源が、誘拐である事の方が生存している確率が僅かばかり高いというというものだとしても。


 袴田は額の汗をハンカチで拭き取ると、次の担当場所へと歩き出した。


 川に流されて溺れるのと、犯人に誘拐されて殺されること。

 どっちの方がより不幸なことなのだろう。

 そんな胸糞悪い袴田の想像は、決して簡単に打ち消されるようなものでは無く、汗の流れ落ちる頭の隅にこびりついていた。



『S県H市で、小学2年生の西村祐輔(ゆうすけ)くん(8)が行方不明となっている事件で、警察は25日午後、捜索活動を行っていた付近の河原で祐輔くんのものと思われるランドセルが発見されたと発表しました。

 祐輔くんは誤って川に転落し流されたものとみられ、警察は明日以降も亀水川周辺流域の捜索を続ける模様です。


 亀水川では、昨年末にも小学生の児童が誤って川に流されるという痛ましい事故が発生しており、H市は河川周辺の安全対策についての対策協議を行っている最中でした』



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